土蜘蛛伝説。その現場。
どうぞお楽しみくださいー!
重い。
軽おじて息は出来るようだ。
遠くから声が聞こえる。レスキューだろうか。
「姫様がじい様をお呼びになるとは珍しい。」「うむ。何事か起きる予兆を感じたのやもしれぬ。」
姫様?じい様?そういって何人かが側を通って行くのを感じる。
「痛っ」
僕の腕を誰かが踏んだ。
どよめきと共に「誰かが埋まっているぞ」と、土を退けられていく。体が軽くなり安堵の気持ちから再び気が遠くなる。節っぽい大きな手が僕の体を持ち上げようとするのがうっすらと見えた。。。
気がつくと薄暗い部屋で布団に寝かされて居た。どこだここは。と見回すと初老の男性と編笠を被った老人、朱色の染めのされた波模様の刺繍が美しい上着羽織った老婆が祭壇の横に座って居た。
「目が覚めたか。お主が磐座様に導かれやってくることは分かっていた。」
余りに唐突な老婆の言葉に僕は訳がわからず聞き返した。
「磐座様とは遺跡にあった巨石のことですね。蝦夷の民が信仰した御神体。」
「いかにも。蝦夷とは大和が我らを呼ぶ蔑称。我らは土隠暮の民。奴らが土雲と呼び恐れた民の末裔である。」
頭がついて来なかった。だがこの人達が冗談を言っている様にも見えなかったが、自分の脳がそんな訳ないと言っていた。
「助けて頂いて有難うございました。またお礼に伺います。」
と布団を抜け祭壇と反対に位置した扉に足早に向かう。「待て!」初老の男が叫んだが構わずドアを開けるとアメリカのギャグアニメよろしくドアの先の床がなく危うく落ちる所だった。
「だから、待てと言ったのだ。落ち着いて姫様の話を聞かんか。」
「ここは白竜の木のくぼみに我らの先祖が小屋を投げ入れ出来たとされる社じゃ。降りたければ梯子がかかっておろう。だがそれも我が話を聞きそれからでも遅くはなかろう。」
足元を見ると確かに梯子があった。その下には磐座様と呼ばれていた御神体が見えた。この御神木にも白竜の木という名前があったのか。下調べでは出てこなかった新事実だ。
そうだ。僕はここの発掘調査に来た途端土砂崩れにあい今に至っている。これまでの事は思い出せたが彼らは何者だろうか。
それに彼らの服装や儀式の様式。まさか。まさか本当に土蜘蛛伝説の蝦夷の集落にタイムスリップしているのか。そんなまさか。と頭の中でぐるぐると考えていると
「我が教えてやろう。お主がなぜこの地に、磐座様に導かれ来たのか。」姫様は祭壇から火鉢を下ろし箸で動物の骨を焚べこちらを柔らかい顔で見つめ、言った。
お主にこの森の神々を蘇らせて欲しいのじゃ。