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Killer's Blade   作者: 旗戦士
Chapter 7. Lucky Strike
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Act 62. Unite the team

<海兵隊野営地>


 夜。茫然自失した斎を連れたグレイは不敵な笑みを消して海兵隊の基地へと戻り、指令室に駆け込む。苦虫を噛み潰したような表情を浮かべたミカエラが二人へと振り向き、駆け寄ってきた。


「グレイさん、斎さん! 」

「ミカエラ、一体どうなってやがる? 」

「分かりません……。急にリュディの身体が光ったかと思うと、その場で倒れて……意識が……」

「……他の皆は? 」

「医務室で衛生兵の治療を受けています。……斎さん、大丈夫ですか? 」

「あ、あぁ……リュディや皆の様子を、見に行っても? 」


 おそるおそる斎がそう尋ねると、ミカエラは同じ部屋にいた軍服の初老男性に視線を配る。その男は眉一つ動かさずに首を縦に振り、斎は一人指令室を後にした。そんな彼の様子を背後から見守っていたグレイは、軍服姿の男性に背筋を伸ばし敬礼する。ハリー・カークス。本作戦の司令官に任命された海兵隊の大佐で、過去にグレイとも知り合っている仲だった。


「ご無沙汰しております、カークス司令」

「あぁ。元気そうで何よりだ、バレット少尉」

「俺はもう軍の人間ではありませんよ。気軽にグレイとでも」

「そうだったな。ところで早速、ミス・ウィルソンを入れて状況報告がしたい。今時間は? 」

「手短にどうぞ」


 では、とカークスが言葉を紡いだところで3人はアメリカ全土のホログラフィック地図を表示したデスクへと歩みを進めた。赤い点がワシントンD.C.の座標上で点滅しており、グレイたちの現在地点を表記している。


「さて……リカルド率いる支援者の連中と海兵隊の内通者を片付けたのが現状だ。そして彼らの雇い主はジェヌド・メスティカグループの頭取・眞田桐彦。だが彼らが何処に居るのは見当もつかん」

「八方塞がりというわけですか……。ミカエラ、何か打開策は? 」

「打開策とは言えるかどうかはわかりませんが、一つ気になる事が」

「何かね? 」

「リュディの通信履歴を解析してみたのですが、外部からのハッキングがありました。その出元は……他ならない今回の首謀者、眞田桐彦によるものかと」


 瞬間、ホログラフィック地図が赤く光り、その場にいた全員に何らかの警告を知らせた。その後司令室の大画面モニターに、革製のソファに腰掛ける眞田桐彦の姿が映る。通信傍受を行おうとその部屋にいた管制係が一斉に目の前のデバイスを操作しはじめ、ミカエラもそれに誘発されて自身のラップトップデバイスの画面に視線を落とした。


『やあ。お初にお目にかかるよ、ハリー・カークス大佐。それに、何人か見慣れた顔ぶれもあるようだ』

「一方的な通信……? リュディへのハッキングを足掛かりにしたんでありますね……! 」

『ご名答。さすがはあのバーナード・ウィルソンの一人娘だ。さて、時間もないし早速本題に入りたい』


 グレイとカークスは表情を変えずに画面を見つめ続ける。やがて映像が切り替わり、重苦しい研究室の様子がスクリーンに映し出された。部屋の中心にはそこら中から伸びているケーブルが接続された椅子に一人の男が腰掛けている。その隣には見覚えのある金髪の少女が横たわっており、グレイは思わず目を見張った。


「リュディ⁉ それに、あいつは……! 」

『僭越ながら君たちのオペレーターとして居たリュディヴィーヌ・ルコックをこちら側に引き抜かせてもらった。彼女の肉体はもとより私たちが作り上げたものだからね。それに、彼女は私の息子を完全な存在にするためには必要不可欠なものなんだ』

「何……? 」

『まあいい。さてカークス大佐、私は貴方がたに交渉を持ち掛けたい』

「聞こうか」

『今から3日後に大統領の身柄とこちらが制圧している国防省の管制システムを交換したい。取引場所はジェヌド・メスティカグループの東海岸支社。もし来ないようなら……この国防システムを海外に売り渡す』

「国防システムですって⁉ そんなものが中東や他の国にわたったら……! 」

「瞬く間に攻撃されてジ・エンド、って訳か……」


 グレイやミカエラが驚いた様子を見せているなか、カークスは表情一つ変えずに画面越しの眞田桐彦と視線を交わす。


「……分かった。その取引に応じる」

「カークス司令⁉ 」

「大佐! この取引がどういう事か分かっているんですか! 」

『話の理解が早くて助かる。時間は深夜0時。東海岸支社を調べて貰えばどこかは分かるはずだ』


 その言葉を最後に、眞田桐彦との通信は切断された。カークスは不信感を孕んだ視線を向けるグレイに顔を向け、口を開く。


「聞いていたな、グレイ。今のが君たちに渡す予定の次の任務だ」

「……へぇ、そういう事ですか。もちろん、そっちのサポートも出してくれるんでしょうね? 」

「あぁ、国家の存亡に関わる事だ。無論協力は惜しまない。ミス・ウィルソン、君たちの仲間を集めてはくれないか? 」

「それは出来ますが……」


 その時司令室の扉が勢いよく開き、先ほどの通信を聞いていたであろう斎やリン、アトラス達が続々と部屋に入ってくる。斎は困惑した表情を浮かべながらもグレイたちに歩み寄り、口を開いた。


「アンタは……」

「君が宗像斎だな。先ほどの戦いぶりは見させてもらった。その功績に準じて、君に頼みたい事がある」

「……すまない、全く話が呑み込めないのだが……」

「まとめて言えば、ジェヌド・メスティカグループの本拠地に乗り込む任務をこなしてほしいそうであります。そうでありましょう、カークス司令」


 ミカエラの言葉にカークスは頷き、被っていた黒い軍帽を脱ぐと斎に右手を差し出してくる。


「君を含めた6人を対サイバーテロ対策特別チーム・キラーズブレイドの入隊を認めたい」

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