表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双翼の精霊騎士王  作者: 星丸
冒険家になりました
9/40

勝負

体が痛い......


(そりゃそうだよー、床で寝たんだもん)


まあ仕方ないか。恥ずかしかったし。

毎日の朝練を終えた今、オレは集会場にてフェイさんから説明を受けている。

今回のケイトさんとの勝負はお互いに刃が潰された剣での勝負、勝敗はフェイさんが付けるらしい。

ちなみに、オレは剣一本でケイトさんは双剣だ。


「ところでエルシア、気になっていたんじゃが」


「なんですか?」


「お主、盾は使わんのか?アルが言っていたが、片手で持てる剣を使っているなら盾を持たないと意味がないそうじゃ」


「盾、ですか......」


(考えてもみなかったねー)


(そうだな)


確かに、エストールくらいのサイズなら盾を持って手堅く攻めるのが良いのかも知れない。

まあ、オレはそんなことができるほど器用ではないけれど。何より、値段がね。


(エルシアはスタミナがすぐ切れるからね〜)


(そうなんだよなぁ。短期決戦できるように頑張らないと。......あれ、お前のせいじゃね?)


(な、なんのことかな?)


絶対こいつだ。

だってエストール使うときは疲労が半端ないもん。

まあ


「盾はいいです。剣一本の方が、オレは色々とやりやすいので」


「そうか。よしわかった、試合はあと少しで始める。それまでに調子を上げておくんじゃぞ」


はい、と返すとフェイさんはドアを開けどこかへ行った。すると、入れ違いでケイトさんが入ってくる


「どうもエルシアくん。昨日は悪かったわね、取り乱したわ」


「いえ、なんか役得でした」


「......そう」


彼女はそう言い、オレの近くに座る。

今日はあの下着穿いてるのかなぁ〜......オラワクワクすっぞ!


「何かやましいことを考えてない?」


「イエ、ベツニソンナコトハ」


「そう......フェイから説明を受けていたの?」


「はい」


「ふぅん。ねえ、貴方はどういう剣術を使うの?」


アーサー流?それとも、ササキ流?あ、オキタ?と聞いてくる。

ちなみに、アーサー流とは今の騎士団の団長である、クワイット・アーサーの先祖が作ったと言われ、この地に長く根付いている流派だ。知らんけど。

ササキ流、オキタ流は共にこの国から離れた極東の地で生まれた流派であり、騎士団の幹部に作った人の子孫がいるとかなんとか。これも知らんけど。

そこで改めて考えたけれど、オレは道場に入ったこともないから何流なのだろうか


(んー、私が教えているのは騎士王くんの使ってた流派だし、やっぱり騎士王流とかー?)


(そんな単純名前かな......でも、あんまり変な名前つけると聞かれそうだから)


「いえ、何流でもありません。ただ闇雲に剣を振るっているだけですよ」


「ふーん。その割に、朝の鍛錬の時。凄く良い剣筋だったけどね」


「あはは、見てたんですね。ありがとうございます」


(この私が師匠だからね!むふふ、師匠と弟子の禁断の関係......きゃっ♪)


いや、本当に楽しそうだなこの聖剣は......そう思っていると、ケイトさんが再び話し始める


「私も我流なんだけどさ、やっぱり難しいわよね」


「?」


「いや、なんていうかこう、お手本がないとやりにくいのよ」


「確かにそれは思います。まあ、だからこそやりやすいのかも知れませんけど」


どうして?彼女はキョトンとし、こちらを向きそう聞いてくる。

綺麗だと思ってたけど、可愛い系もいけるなこの人。


「だって、自分で最適を見つけ出す。型がないからこそ、自分で考えて動ける。堅苦しくなくて良いじゃないですか」


「......そうね、そうかもしれないわ。うん、きっとそうよ」


ケイトさんは顔を伏せ、まるで考えごとをしているように呟く。

しばらくすると顔を上げてこう言った


「でも、今日は負けないわ」


そして握りこぶしを差し出す。

オレはそれに自分の握りこぶしをぶつけ、こう言った


「もちろん、オレも負けませんよ」



ーーーーー


部屋から出て、彼の言葉を思い出す


「だって、自分で最適を見つけ出す。型がないからこそ、自分で考えて動ける。堅苦しくなくて良いじゃないですか」


笑顔で自信満々にそう言い放った。

それは、私の中にあった固定概念を、いとも簡単に消し去った


「はあ......なんだか、流派を習うかどうか悩んでた自分がバカバカしいわ」


とにかく今は勝負のために集中する。

それだけよ


ーーーーー


「そろそろじゃ、エルシア」


「はい」


フェイさんの声を聞き、閉じていた目を開ける。

寝てた......わけじゃないよ?いや......まあ朝練してたし、少しだけね?


(んー、いよいよかー)


(ああ。でも、対人戦は慣れてる......まあ、双剣相手は初めてだけどさ)


やることは変わらない。

いつも通り、騎士団の試験と同じように、最初は相手の癖を見抜くだけ。

それから詰める。


「フェイさん、エストールを」


「ああ。しっかりと預かったぞ」


もしものことを考え、フェイさんにエストールを預ける。盗まれたらたまったもんじゃない


(私、剣の状態でも動けるんだけどね)


......とりあえず聞かなかったことにして、ヴィヴィアムさんに作ってもらったグローブをはめる。うん、良い感じ。

そしてブーツの紐を結び直し、冒険者用コートの開いていたボタンを閉じて、動くのに支障が出ないようにする。


「いよし......」


準備万端だ


「さあ、こっちじゃ」


フェイさんの後をついていくと、芝生のアリーナに出た。観客席のようなところには、ラブリーマイエンジェルことエレインとリナ、そしてヴィヴィアムさんがいた


「エルシアさん!頑張ってください!」


エレインは声を出して応援してから、ヴィヴィアムさんは手を振ってくれた。リナは微笑んでくれた

それに対し、オレは両手でサムズアップを返した。

やる気全開ですわ。


(モテモテだねぇ、エルシア)


(......そう言えば話せるのか)


「さて、両者向き合って」


すでにアリーナにいたケイトさんとオレに対し、フェイさんが言う。

言われた通り、オレ達は向き合った


「ここで武器の確認じゃ」


フェイさんから、オレはケイトさんの使う双剣を、ケイトさんはオレの使う剣を渡される。

それを触り確認する。

うん、ここまでは騎士団の入団試験と同じだ。


「よし、エルシア。ケイトの乳房を触れ」


「「ぶふっ!?」」


「なんじゃ?」


「いや、なんじゃ?じゃあないですよ!」


たしかに嬉しいけど!ほぼないでし「何?」


「い、いえ。なんでもないです」


「はあ......フェイ、なぜいきなり!?」


むーん、とフェイさんは考え、こう言った


「エルシアの緊張を無くすため。パートナーとして、先輩としての務めじゃケイト。聞き入れよぉっ!?」


「......バカ妖精」


「あ、あはは......」


フェイさんを殴ったケイトさんの拳からは、シュゥゥゥ......と、煙が出ていた。

よ、容赦ねえこの人......


「こ、こほん。冗談じゃ。ケイトには揉む胸もな「埋めるわよ?」......失敬、なんでもない」


胸に敏感すぎだろ、この人。


「では両者。握手じゃ」


フェイさんの声と共に、ケイトさんと握手する。

彼女の手は冒険者らしからぬ、女性的な柔らかさがあった。


「容赦はしないわよ?エルシアくん」


「もちろん、オレもですよ」


オレの身長は割とあり、ケイトさんは女性としては高身長だが、オレより低い。

必然的にケイトさんは上目遣いになり、少しドキッとする。

すると、ケイトさんはどこか嬉しそうな表情でこちらを見てくる。

ななな、なんすかぁ!?


「さあ、離れて。位置に着くのじゃ」


「あ、はい」


「ええ」


引かれた線の上に立ち、合図を待つ


「それでは......カウントスタート。5」


ケイトさんが目を閉じる。


「4」


剣を握り直す。


「3」


目を開いたケイトさんも握り直す。


「2」


構える。


「1」


ケイトさんも構えた。


「0!!」


先手はケイトさん、いきなり高速で切りかかってくる


「くっ!ふっ!」


「ほら、どうしたのかしら?防ぐので精一杯!?」


幾度となく剣が交差し、火花が散る。

いや、力すご!?

オレは確実にケイトさんに押されていた。


(まずいなぁ......ケイトさんも我流だからか、剣術にあるようなつなぎの部分がない......)


「ふっ、はっ、せい!!」


「っ!」


段々と速度が上がり、一撃の威力も上がってくる。

隙を見てカウンターに転じるも


「甘いわ!」


「なっ!」


高速の剣で跳ね返され、体勢を崩される。

急いで体勢を立て直し、追撃に備えるもケイトさんは余裕があるのか攻めてこなかった


「ふふ、どうかしら?伊達にこの数年間一人で活動してきたわけじゃないわよ」


んにゃろう......ぜってえ泣かしてやる......

でも


「流石ですね......硬い防御に素早い攻め。オレが勝っている点が見つかりませんよ」


こればっかりは認めるしかない。

しかし、どうしても強敵との戦いは気分が高揚する。


「あらそう?なら、もっと速く行くわよ!」


ケイトさんはそう言うと、その場の芝を抉り何処かへ消えた。

次の瞬間、視界が揺れた


「!?」


視界の端にケイトさんの長い金髪が見えた。

そして感じた、彼女の刃を。吐息を。そして......殺意を


「ふっ!」


キィン!そしてほぼ見ずに剣を振ると、そんな音が鳴り体勢を立て直せた。だが


「終わりよ、エルシアくん」


そう告げるケイトさんの声が聞こえた


ーーーーー


「ふっ、はっ、せい!!」


試合は予想通り私の優勢。

エルシアくんは剣で守ることしかできていない


「はああああ!!」


攻撃しながら彼を見る。

彼は苦しそうな顔をしながらも、目を見開き私の攻撃を見切ろうとしていた。


(無駄よ!)


さらに攻撃を仕掛ける。

私は気に入っていないのだけれど、この長い金髪と戦闘のスタイルから"双金の光剣(ふたがねのこうけん)"なんて二つ名が付けられた。

それくらい私の剣は速い。


「くっ!」


エルシアくんの体勢を崩すことができたが、私は攻撃をせずに距離を取り話しかける。

これは彼に私の実力を知らせるためでもある。


「ふふ、どうかしら?伊達にこの数年間一人で活動してきたわけじゃないわよ」


「流石ですね......硬い防御に素早い攻め。オレが勝っている点が見つかりませんよ」


っ......なんで笑ってられるの!?


「あらそう?なら、もっと速く行くわよ!」


私は冷静を装い、さらに速度を上げた。

その瞬間、世界はスローモーションになる。

何もかもが遅く見える。

エルシアくんも、応援しているエレイン達さえも。

そしてエルシアくんに足を引っ掛け、体勢を崩させ攻撃する。


キィン!


(弾かれた!?)


ふとエルシアくんを見ると、彼は体勢を立て直していた。

すこし驚いたが何も焦ることはない。冷静になり状況を分析すると、彼はすぐには動けない。

だからこう言った


「終わりよ、エルシアくん」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ