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双翼の精霊騎士王  作者: 星丸
冒険家になりました
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剣の在り処

現在、ハーミルフォレストに着き、辺りを散策している。

この森は人の手が加えられていないため、道らしい道はなく、目印すらない。

だが、エレインが付いてきてくれたお陰で、適当に歩いても迷子になることはない


「うーん、それらしいところは見当たらないな」


「そうですね......あ、あそこの洞窟はどうでしょう?」


洞窟か。確かに盗賊がいるようなイメージがある


「じゃあ、オレは先に様子を見てくる......いや、一緒に行こうか。エレインをここで一人にするのは良くないからな。大丈夫、何かあったら必ずエレインだけは逃すから」


「エルシアさんも、ですよ?」


少し怒り気味にエレインに言われる。

うん。この子優しすぎて将来悪い人に騙されないかとか、なんだか不安になってきた


「そうだな、わかった。とりあえず行こう」


「はい!」


相変わらずの素敵な笑顔だ。

入り口とは違い、洞窟の中はなぜか松明が置かれ、明らかに人の手が加えられたようになっていた


「エレイン、横に並んでくれ」


いきなりの襲撃を考え、目の届く横に来るようエレインに指示する


「わかりました......エルシアさん、この先から人の気配はありません。でも、いくつかモンスターがいます」


「オーケー、ありがとうエレイン」


いよいよ初めての対モンスター戦になるわけか。

今まで対人しかしてないから不安だが、エレインがいるなら心強いし、何よりダサいところを見せられない。

そう思っていると、目の前に大きな人型のトカゲがいた


「あれは......リザードか?」


「はい。動きが早くて、牙には毒を持っていますよ」


「なるほど。とりあえずは初陣か!」


「ギィヤアアアアアアアア!!!」


リザードはこちらを発見すると、猛スピードで突っ込んできた。

そして腕を振りかぶり攻撃してくるが、それを剣で受け流し、体勢を崩した所を首に一撃与える。

多少のダメージになればと思ったが、ヴィヴィアムさんのお陰で綺麗に首を飛ばすことが出来た


「すごいです!まさかリザードをいきなり仕留めるなんて!!」


エレインがそう賞賛してくれる。

まさか、剣を研いでもらっただけでここまで変わると思わず、自分でも驚く


「......ああ、ありがとう。ヴィヴィアムさんのお陰だよ。こんなオレの剣でも通ったのは」


「エルシアさんだからこその一撃でもあります!さあさあ、次に進みましょう!」


「ふっ、ああ!」


そう意気込み、前に進む。

っていうか、ありえないくらいリザードから血が出てたけど、エレインは慣れているのだろうか......オレは完璧に慣れるまでは時間がかかりそうだ。こういうのは苦手だし。

それに、まだ斬った時の感覚が気持ち悪いくらい手に残っている。

そう思いながら、薄暗い洞窟を進む。

ここは一本道のようで迷うことはないだろうが、気を引き締めていった


「あ、またモンスターが居ます」


「距離は?」


「もうすぐ......見えました。またリザードですね」


「またか......よし、先手必勝」


背を向けているリザードに対し、出来るだけ音を立てずに近づき、首を落とす。

うん、良い切れ味だ。

本当は、せいやああああああ!って言いながら切れば格好いいんだろうけど、相手はモンスター。

少しの油断やミスで死につながることがある


「やりましたね!」


「ああ。2回目だけど緊張がすごい......」


額には嫌な汗が流れ、心臓の鼓動も早い。

そりゃそうだ、騎士団の試験とは違いこれは実戦。

何が起こるかわからないし、相手は手加減なし。

もしかしたら、と言うのを常に考えなければならない


「エレインは慣れているのか?」


「はい。私も最初はエルシアさんみたいに緊張しましたけど、戦う回数が多ければ多いほど相手のことがわかるので冷静に慣れます。でも、初めて戦うモンスターだとちょっと焦っちゃいますけどね」


舌を出してそう言うエレイン。

かわE


「そっか、オレも早く慣れないとな。一応冒険者だし」


「ゆっくり慣れていきましょう」


この天使にそうだな、と返しまた進む。

この洞窟はどこまで行くのかわからないが、あわよくば剣があることを信じ、進む

少しいったところで分かれ道があった。そこでエレインが


「私に任せてください」


「どうするんだ?」


「火球の魔法を使います。もし行き止まりなら、壁に当たって早くに無くなります」


「なるほど。頼む、エレイン」


「はい!」


エレインは返事をすると、分かれ道の方を向いた。

そして魔法を唱える


「火の精霊よ!」


すると、エレインが伸ばした両手から赤色の魔法陣が現れ、そこから火の玉が飛び出した。


「うお!?あっつ!?」


で、何故かオレに直撃した


「ああ!?す、すみません!!えーと、み、水の精霊よ!!」


「ぷはっ!あー、死ぬかと思った......」


「本当にすみません......」


「良いってエレイン。ちょっと服が焦げたくらいだし。失敗はつきものだ」


「......はい」


反省しているため、涙目の彼女を見ているとこっちが悪い気持ちになる。

そのため、出来るだけ明るくエレインに接した


「次はうまくやってくれよ?な」


「っ!はい!」


うん。さすがはラブリーマイエンジェル。

結果として、右側の通路の火が早く消え、左側の通路は見えなくなるまで進んだ


「あれ?でもさ。曲がり道だったら意味なくない?」


「大丈夫ですよ、火球の魔法に上乗せで障害物を避ける魔法も付けましたから」


「へえ、便利だなぁ」


「今度教えてあげましょうか?」


「え、良いのか?」


「はい!うまく教えられるかはわかりませんが、必ず役に立ちます!」


「そうか。それじゃあお願いするよ。エレイン」


「任せてください!」


天使とそんな会話をしながらさらに奥深くへ進む。

どれほどたっただろうか。

モンスターの数も次第に少なくなり、そろそろ終わりかと思われたその時、奴は現れた


「ギャアアアアアア!!」


「なんの声だ!?」


突如聞こえた野太い鳴き声に驚き、つい口に出してしまう


「この声は......まさか、ドラゴン?いや、そんなはず......」


「エレイン、聞き覚えがあるのか?」


「は、はい。昔お母さんの知り合いの龍使い......ドラゴンライダーの方が従えているドラゴンの鳴き声にそっくりでした」


「ドラゴン......だとしたらヤバイな。どうしようか」


頭の中で必死に考える。

ここは一本道の洞窟、しばらくはまっすぐな道だである。

もしもドラゴンがドラゴンブレスなんかをしてきた場合、オレ達は何もできずに焼かれることになる。

いや、エレインはオレが盾になれば助かるだろうが。

ともかく、この洞窟はかなり大きく、ドラゴンのような巨体でも動くのに十分だろう。

つまり、このまま進むのは無謀だ

引き返そう、そう言おうとした時にエレインが魔法で何かを感知した


「あ、エルシアさん!この奥に、剣があります!」


「剣だって?」


「はい、あれに込められている聖なる力......探していた剣そのものです!」


「そうか......」


どうするのが正解か。

ドラゴンがいるかもしれないという不確定な情報を恐れ退却するか、エレインの言う剣があることを信じて進むか......いや、エレインの魔法が不十分な場合も考え......られない、な。

いくら前科があるとは言え。

それに、道中リザードを雷で倒したりしていた。

そんな芸当ができる彼女が、基礎の基礎である感知魔法を間違えるわけがない。オレは使えないけど。

なら答えは一つ


「進もうエレイン。剣があるのは確かだし、たとえドラゴンがいてもオレが守るから」


「エルシアさん......はい、わかりました」


決心したエレインの同意を得て、さらに奥へ進む。

すると一段とひらけた、まるで広場のようなところへ出る。そこに、剣はあった。

何故か、まるで誰かに抜かれるのを待ち望んでいるかのように岩に突き刺さった状態で


「あれは!」


エレインが駆け出しそうになるが、ギリギリのところで腕を引っ張る。

すると真上から炎がやってきた


「やっぱりか」


「え、エルシアさん?」


「エレイン。これはかなり大変なことになるぞ」


「......?......!」


オレが上を指差し、ようやく気付いたエレイン。

そこに居たのはドラゴンのようだが蜘蛛のようでもある、異形の存在だった


「ど、ドラゴンスパイダー......でも、じゃあこの洞窟は......」


「......恐らく、ギルドや騎士団がクリアするべきレベルのダンジョンだったんだろう。で、あいつがボス。ただの洞窟なんかじゃない。ある程度道が整備されている時点で気づくべきだった......」


ダンジョンは二種類ある。

一つは、今のオレ達がいるここのように、試練として作られたもの。

それをクリアすれば、報酬がもらえる。そして報酬は、あの剣だ。

もっとも、試練として作ったのはこの世界であり、自然にできたものと人為的に作られたもので別れるのだが。

あともう一つは、ただモンスターが大量発生しているところ。いわゆるスポナーダンジョンだ。

で、ドラゴンスパイダーがいる場所には、剣や盾、ボロボロの鎧などがあった


「じゃああの剣は一体だれが......?」


「......あの剣は、泉の精霊によって選別された人しか使えず、私達ですら使えないものです。それがあそこにあるなんて......いや、そういえば持つことすらできない剣が奪われるなんてありえない......一体どう言う......」


「考えても無駄かもな、エレイン。とりあえず今はあいつをどうにかするしかないんだ」


「そう、ですね......全体が毛で覆われているので、私の龍の息吹レベルの火魔法ならギリギリ押せるかとおもいます」


「そうだな、よし。やろう!」


大一番、相手の弱点は分かっている。

ドラゴンより一撃の威力では圧倒的に劣るが、スピードはかなりある。でも、農業で鍛えた足腰を持つオレに、魔法で加護を使えるエレインならいけなくもないはずだ!!



ーーーーー


「やってくれるわね、騎士王さんは......」


エルシアくんの特性を見てから、家に伝わる秘蔵の本から情報をひたすら探し続けた。すると衝撃の事実が次々分かった。

一つは、私達が管理していた聖剣エストール。あれは本物に圧倒的に劣る、いわば擬似品であること。

二つ目、聖剣エストールは騎士王の持つ特性...エルシアくんも持つ特性、いや、複合特性ががなければ扱えないこと。

三つ目に、その特性とは大剣豪の特性と、聖王の特性の融合であること。

珍しくもない融合特性と大剣豪の特性だけなら見たことはある、でも聖王の特性は見たことすらない......それが故に、エルシアくんの特性は分からなかった。

超の中の超レアな特性が二つ融合して現れるなんて、今日世界中の生物がいきなり死ぬようなくらい低い確率だ。

そして最後に、聖剣エストールは封印されており、その封印されていると思われる場所がーーー


「ーーーハーミルフォレストの洞窟......」


剣のあるそこには、騎士王の仕込んだ怪物がいると言われる。本物の騎士王の資格があるものならば倒せる......ね。


「何千年も前の人物なのに、やってくれるわね......」


思えばエルシアくんの特性は過去に一度見られた形跡があった。もしかしてアルはこれに気づいて、エルシアくんをただの農家にしようとしたのかしら......


エレインとエルシアくんの事ばかりで、最後に書かれていた文を読まずにいた。そしてそこには、こう書かれていた


騎士王の名はエリュシオン・ロードである



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