特性って確かにあったような気がします
チュンチュンと、小鳥の鳴く声が聞こえる。それと同時に太陽の光がカーテンの隙間から差し込むのを感じる
「ふぁ〜あ、久しぶりによく寝たな......」
やっすい宿屋とは比べ物にならないくらい寝心地が良い。陽の光も入ってくるし、なによりベッドだし匂いが良い。
ずっと寝ていられるが、剣を探さなければならないため、眠たい目をこじ開ける
「洗面台は確かこの辺りか......」
昨日ラブリーマイエンジェルエレインに教えてもらった記憶を頼りに、洗面台へ向かう。
廊下を歩いても、床はきしまない。
この当たり前のように思える状態は、久しぶりに味わった
洗面台は浴室と同じ場所にあり、だれかがシャワーを浴びている音が聞こえたため、一応忠告する
「エルシアです!シャワーを浴びてるのは誰ですか!!」
キュッと、蛇口を閉じる音が聞こえた。そして
「エルシアさんですか?エレインです」
「エレインか。ごめん、ちょっと顔を洗おうと思ってさ。嫌だったらやめるけど」
大丈夫ですよ、私はまだシャワーを浴びてますので。そう返事が来たため、気にせずに蛇口をひねり水を出した。
それを手にため、顔に当てる。
冷たい水が頬を撫で、目が覚めた気がした
「エルシアさん?」
「ああ、なんだエレイ...ん?」
横から声がかけられた。
横を見ると、そこには髪を濡らし、タオルを体に巻いたエレインが居た。
そして、その背中には......
「......妖精の、羽?」
緑色の透明な羽があった。
生えていると言うよりかは、そこにあった
「あ、そういえば言っていませんでしたね。私、じつは精霊なんです」
はにかみながらそう言うエレインは、続けてこう言った
「ちなみにこの羽、便利で出し入れできるんですよ!」
体に巻いていたタオルを背中だけはだけさせ、彼女はオレに羽をしまう瞬間を見せた。
背中綺麗だな......
まあ、しまうというよりも、羽の先端から消えていったと言う感じだが
「へえ、すごいな」
「そうですか?」
エレインはこちらを振り返った。
だが、タオルを少しはだけさせていたためか、タオルが床に落ちてしまった
「あ」
「?...っ!!」
「ご、ごめん。何も見てない、ぞ?」
急いで目を背ける。オレは決して膨らみかけの何かをみてはいない!丁度手に少し余るくらいの、柔らかそうな何かは!見てない!!けど、記憶には残す!!!
と、その間に彼女はタオルを巻き直したのか、オレの名前を呼びこう告げた
「き、気にしてないですから!」
「あ、うん。そう」
男として見られていないのだろうか......そう思ったが、とりあえず洗面台を後にした。
チラリと視界に入ったラブリーマイエンジェルエレインの横顔はやはり綺麗で、シャワーを浴びていたためか赤く染まっていた。
あ、あとなんか羽は気分で出していたらしい
ーーーーー
「それで、エルシアくん。今日はどうするの?」
あのあと、朝食まで出していただき、それを食べているとヴィヴィアムさんが首を傾げながら質問してくる
「えーっと、とりあえず今日はここから近いハーミルフォレストに行こうと思います。もし剣を盗んだのが盗賊とかなら、この辺だと入り組んでいるハーミルフォレストを根城にしている可能性があると思うので」
並みの盗賊ならば倒せる......はず。
毎日鍛錬を積んできたから
「なるほど......確かにそうかもね。それなら、エレインも連れて行きなさい」
「へ?エレインを?」
彼女は戦闘したことが無いと思い、聞き直す
「ええ。一応エレインはある程度魔法を使えるわ。そうでしょエレイン?」
「うん、お母さん。エルシアさん、私は回復系の魔法も使えるので、心配いりません!」
笑顔でそう語るエレイン。
うん、本当にこの子は笑顔が綺麗だ
「まあ、回復系の魔法はおっちょこちょいなエレインがすぐに怪我をするから私が教えたんだけどね」
「ちょ、お母さん!もお〜、せっかくエルシアさんにかっこいい所を見せられると思ったのにぃ〜...」
「まあまあ、良いじゃない」
落ち込むラブリーマイエンジェルエレインを、ヴィヴィアムさんは悪戯顔で慰める
「エレインは十分人間...いや、精霊だっけ。としてかっこいいと思うぞ」
「本当ですか?」
「ああ。オレが保証するよ」
そう言うとエレインの顔はみるみる明るくなった。
か、可愛い......!!
「ふふ、青春ね。ところでエルシアくん?あなた、自分の特性は知っているの?」
「特性、ですか?」
あれ、なんかそういうのもあったような......
「忘れていた、のかしら?」
「は、はい......」
「本当にアルの息子ね......まあ良いわ、特性は生まれ持った自分の才能よ。それくらい知っておきなさい」
「め、面目無いです......」
完全にその存在を忘れていた。
ていうか、もしかして騎士団に落とされた続けたのも特性の欄を空白にしたからか?
そりゃ落ちるわな
「こっち来なさい、貴方の特性を見るから」
「はい」
ヴィヴィアムさんに言われ、椅子に座る。するとエレインが
「ちなみに私の特性は魔法が扱いやすくなるものですよ」
「エレインは数十年に一人とまで言われる、大魔法使いの特性だったわ」
強くて可愛いのか、エレイン
「なるほど。それで、特性はどうやってみるんですか?」
「簡単よ、利き手にこれをつけるだけ」
ヴィヴィアムさんはそういうと、引き出しの中から瓶を取り出した
「これには魔力が込められていて、特性を形に表すの。こんな風にね」
ヴィヴィアムさんはそれを自らの右手に付けた。すると、なにやら紋章のようなものが現れた
「私のも大魔法使いの特性よ」
「あれ、大魔法使いの特性はレアなんじゃ?」
「それは人間に限った話です。私達精霊族では割と多いですよ?特にお母さんや私のような泉の精霊の中では」
「へえ、種族によって違いが出るのか」
「そうよ。それじゃあ、利き手を出して」
ヴィヴィアムさんに右手を差し出す。
するとヴィヴィアムさんは瓶の中の液体を筆に取り、オレの右手の甲に輪っかを描いた。
少し経つと、その輪っかの中が光り始めた
「くるわよ」
「楽しみですね!」
「ああ」
そう会話をしていると、いつのまにか光は収まっていた。
そこには、先ほどのヴィヴィアムさんのような紋章ではなく、まるで剣の様な物がクロスしている絵が表された
「......こんなの、見たことないわ」
「え?そうなんですか?」
「一度は剣士の特性かと思ったけれどね。でも、それは剣が一本だけだし、なによりここまで複雑ではなかったわ」
「そうですか......でも、剣に関係がありそうで良かったです。一応、騎士を目指してますから」
「そう......」
なんでそんな不可解な顔をしてらっしゃるのだろうか、ヴィヴィアムさんは。
そう思ったが、聞かないことにした
「それじゃあ、そろそろ行きます。あ、エレインは?」
一緒に行くことを忘れていた。準備は......
「大丈夫ですよエルシアさん。いつでも準備はできていますから!」
「流石、なのか?まあ、すぐに出発できてなによりだ」
「はい!」
ふはは、ラブリー(以下略)
「エルシアくん。これを」
ドアに手をかけようとした時、ヴィヴィアムさんが剣を渡してくれた
「あれ、これオレの......」
「貴方、完全に忘れていたわよ?それに、刃もボロボロだったから研ぎ直しておいたわ」
鞘から抜いて確認すると、確かにより鋭く洗練された剣になっていた
「特別サービスよ?行ってらっしゃい」
「はい!ありがとうございます。行ってきます!」
「行ってきますお母さん!」
オレ達はドアを開け、ハーミルフォレストに向かった