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双翼の精霊騎士王  作者: 星丸
冒険家になりました
15/40

いじめっ子って大したことないのが常

「決闘だぁ!!」


エレインのことをナンパしていた、クレイという男はエルシアくんに向かってそう言い放った。

それに対し、エルシアくんは面倒くさそうな顔をして振り返り、こう言った


「やる意味、あるのか?」


その言葉に怒ったのか、エルシアくんを今にも殺さんとする目で睨み付け、クレイは続けた


「お前みたいな奴に、この僕が負けたままでいられるか!!」


「......そ」


「エルシアさん、何もわざわざ相手にすることは......」


「そうよ」


エレインがエルシアくんに無視するように言ったが、エルシアくんはいや、と言いそれを手で制した


「今ここでやらないと、いつ襲われるかわからないから」


「でも......流石にそんなことは」


「するよ。絶対」


エレインが言い終わる前に、エルシアくんは話し始めた


「あいつはそういう奴なんだ。今まで、何人も心と体を傷つけられている。自分の手を汚さない方法で」


「嘘......」


「嘘じゃないんだ、エレイン。今まで見ている事しかできなかったけど、今は違う」


だって、エルシアくんはそう言って私達に笑いかける


「今は......今はエレイン達が居るから。強くなった......はずだから」


「そこは言い切ったらどうかしら?」


「あはは。あ〜面目無い......」


「全くよ」


さっきはどうしたのか、と思ったけど、いつもと変わってないみたいね。

ただ、少し驚いていただけでしょうね。

会うとは思わなかった人物に会ったんだから


「おい、やるのかやらないのか!?どっちだ!!」


「良いよ、やる。でもその代わり、条件がある」


「なんだ、まさかハンデか?」


「いや。オレが勝つから、もう二度と、オレとオレの仲間の前に現れるな」


......言うわね、この子。

まさかオレが勝つ、なんて事だけは言い切るのね。

でもそんなに挑発しちゃうと......


「なんだと?......お前やっぱり僕を舐めてるだろ?」


「ほら怒った......」


「エルシアさん。やっぱお馬鹿さん、なんですね」


「え」


な、なんで?オレってそんな馬鹿?

そう言い何故か一人で慌てているエルシアくんを見ていると、面白くて笑ってしまう。

馬鹿だけど、だからこそ......


「って何考えてるんじゃあああああい!!」


「ちょ、ケイトさん!?そっちはダメですよぉ〜!!」


「はっ!?」


あ、危ない......危うくフェイの呪いに引っかかるところだった


「まあ良い。おいお前、その代わりこっちにも条件がある」


「ん?」


「もし僕が勝ったら......お前の持ち物全てを寄越せ。ああ、そこの女二人もな」


そう言って私とエレインを指差す。

......持ち物扱い......まあ、それは良いけど。

ともかくソイツは舐め回すような視線を浴びせてくる。エレインなんて


「うわ、気持ち悪い......」


って、顔が言っている。

まあ、外見だけは良いんでしょうね。エルシアくんには劣るけど......って


「わ......ふう」


「?ケイトさん、さっきから大丈夫ですか?」


「え、ええ。大丈夫よエレイン」


また叫ぶところだったわ......

私が少し安堵していると、エルシアくんは目つきを変えていた


「......悪いけど、それは出来ない」


「は?人に押し付けるくせに、自分はやらないのか」


まるで弱点を見つけたかのように、勝ち誇った顔をしている。うん、キモいわね。

にしてもエルシアくんのことだから、多分


「オレが勝つから、な」


「よく言ったわ、エルシアくん。さて、それじゃあ決闘を」


「はい」


「ああ」


エルシアくんはエストールを抜き、両手で構える。

対してあの......なんだったかしら、忘れたけど茶髪はレイピアを持った。

右手は痛むのか左手で......いや、鞘が腰の右側にあるから左利きね


「では」


「行くぜぇ!」


「うおっ!?」


勝負を始める合図をする前に、茶髪がエルシアくんに突っ込んだ。

それをエルシアくんはエストールで弾く


「......」


「おらおらおらぁ!どうした!!」


「......なんていうか、エルシアさん......物凄くガッカリした顔してますね」


「ええ。まあ私とやったら他では満足出来ないでしょうね」


「え......そんなに、その、す、凄いんですか?」


エレインは頬を染めて聞いてくる。

何を言っているのかしら?


「見てなかったのかしら?」


「み、みて良いんですか!?」


「ええ。フェイなんて近距離だったから、どれだけのものか良くわかるでしょうね」


「ええ!?」


「休む暇なく二人で打ち込み続けたわ。まあ、最後には私が脚を使って勝ったんだけれど」


脚ぃ!?と、いうエレイン。

何をそんなに驚いているのかしら......


「け、ケイトさんとエルシアさんが、そんな関係だったなんて......」


「そんな関係?何のことかしら?」


そう聞き返すと、エレインは左手で輪っかを作り、その輪っかの中に人差し指を......!?


そこで私は今までのセリフを思い返す


「ええ。まあ私とやったら他では満足出来ないでしょうね」


たしかに誤解を生みそうだけれど......


「休む暇なく二人で打ち込み続けたわ。まあ、最後には私が脚を使って勝ったんだけれど」


な、何の勝負をしているのかしら......って


「え、エレイン!?私が話しているのは、あの決闘のことよ!?」


「け、決闘......な、なんだぁ〜......」


エレインはぐったりとする。そして


「てっきりセ」


「それ以上は年齢制限がかかるわエレイン」


「え、え?」


「ああ、悪いわね。ちょっと体が勝手に......」


いったい今のは......

そう思ってる間にも、勝負は白熱......しているのかしら?

ぱっと見ではエルシアくんがただ受け流して、茶髪が疲れているだけに見える


「くそっ!」


「......」


「い!?」


飽きたのかエルシアくんはレイピアを受け流した後、滑り込んできた茶髪のお腹を柄で叩いた


「もう、昔みたいにはならないから。終わりにしないか?」


「っ......っ!」


茶髪はお腹を抑えうずくまっている。

これだけで、どれだけ二人の間に差があるかわかる。

エルシアくんの腹筋はなぜか割れていないが、とても硬かった。

一度結構本気で殴ってしまったけれど、あまりダメージにはならなかったから


「じゃあ、もう終わりで。オレの勝ち」


エルシアくんはそう宣言してその場を後にした。

私たちの元へ向かってくる


「ごめん二人とも、迷惑かけて」


「大丈夫です。元は私がお二人に遅れたせいですから」


「私も気にしてないわ。エレインも悪くはない、運がなかっただけよ」


そう言い、エルシアくんとエレインの手を取り進む。

だが、また茶髪が叫ぶ


「僕は騎士団の」


「言い忘れてたけどさ」


エルシアくんは続ける


「クレイ、お前の苗字はケイン。書けばたしかに騎士団幹部のカインとも読める......嘘は良くないぞ」


「「え」」


「なるほどね」


騎士団幹部の息子ってのもハッタリだったのね。

心配して損したわ


「オレは騎士団に入るために死ぬほど努力をしたんだ。毎日毎日、アンリー村から近くのベルーカンプ湖まで走って、体を鍛えて、剣を振って......でも、騎士団には入れなかった。大方、騎士団のメンバーってのも嘘だろう」


「な、何を根拠に......」


「騎士団に入るには、剣を右手で使わないと入れない」


「!?」


「まるで鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔してるわよ、あいつ」


「嘘をつくのが良くないんです。さあ、エルシアさん。行きましょう」


い、意外とエレインってばさっぱりしてるわね。

そう思っていたけれど、口には出さず黙って歩いた


ーーーーー


クレイを放置し、しばらく歩いてからファイトブルをまた倒した。

とりあえずノルマは達成したが、いきなり体が言うことを聞かなく倒れてしまった


「エルシアくん!?」


「え、エルシアさん、ちょっと待ってください......」


エレインが魔法をかけてくれる。

とても体が軽くなったが、依然として言うことは聞いてくれない


(極度の緊張状態にいたからね、エルシア。あのクズがどれだけエルシアを傷つけてきたか、わかりたくないけれどわかっちゃうよ)


(なるほど......まだまだ、だな)


本当のオレは偽っていたんだ。

きっと今にでも泣きたい気持ちなんだろうが、あいにくそんな無様な姿は見せられない


無理やり体を起こし、歩き始める。

震えはない


「ごめん、ちょっと疲れちゃった」


「な、なんだ......てっきり毒でも盛られたのかと思ったわ」


「良かったです......」


多分、この二人を母さんに見せたら泣くな。

良い人すぎて


(私は〜?)


(ノーカン)


三人プラスアルファで笑いながら、オレ達は帰路についた

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