表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双翼の精霊騎士王  作者: 星丸
冒険家になりました
14/40

今と昔で立場が逆転することもある

「エルシアくん、そっちに一匹行ったわよ〜」


「はい!......っと、よいしょお!」


「ぶるるるるるるぅ!」


現在、ファイトブルと戦闘をしている。

運良く5、6匹の小さな群れに遭遇できたため、今のを合わせてあと三匹程度でノルマ達成だ。


「ふぃ〜......いや、やっぱり慣れないわ」


目の前には、ファイトブルの残骸がある。

下の芝生には血が飛び散り、エストールにも血が付いている。

慣れていたつもりでも、意外とくるものがある


(ま、仕方ないよ)


(そう、だな)


エストールを気持ち強めに振り、付いていた血を飛ばす。

そしてエストールから血は完全に取れた、という報告を聞き鞘に収める


「うん、ラッキーだったわ。さて、あと少しかしら」


「ちょ、どこ行くんですか?」


「え?」


狩ったファイトブルを放置し、そのままどこかへ行こうとするケイトさんを呼び止める。

何をする気だ?


「あー、そう言えば言ってなかったかしら。モンスターはその大半が魔力で構成されているから、ダンジョンでは勝手に消滅するのよ」


「勝手に消滅?」


「ええ、見てなさい」


ケイトさんに言われてファイトブルを見ていると、たちまち光に包まれ消えた。

というよりも、土に還った


「ほら、こうやって消えるわ」


「あれ、でもファイトブルの皮とかは......?」


「ダンジョンでは、特別な魔法にって誰がどのモンスターを倒したのかが記憶されます。そして、その倒したモンスターの部位などは後から回収できるんです。私たちが来た時の神殿がありましたよね?そこの受付から必要なところだけを貰い、残った部分は買い取ってくれるんです」


「へぇ、すごいな......」


「ドラゴンなんかは買い取ってもらうと高くつくみたいね。ま、もっともここに現れるとは思わないけど」


一体どういう魔法なんだろうか......


(空間魔法の一種じゃない?見た感じ、ファイトブルはどこかに転送されているみたいだったから、ダンジョンを管理している人たちが絶命した生物を転移させているんだよ。で、後はそこの人たちが解剖してくれるんだと思う)


(ふぅん、そういう仕組みか。ていうか、エストールは魔法にも詳しいのな)


(もちろん!だって超絶美少女の精霊王でしたもの!)


えっへん!と、エストールは言う。

ともかく、あと少しのファイトブルを狩れば良いだけで剥ぎ取る必要は無いと知ったため、楽に進みそうだ


「さて、それじゃあ移動しましょう。ここら辺にもパーティがやってきてるから」


「そうですね」


周りを見ると様々なパーティ......冒険者などの集まったグループが狩をしていた。

中には、新たな武器を試していたり、とんでもない勢いでモンスターを倒していく人もいる


「ん〜と、あっ、あそこにもいるわね」


「やっぱ多いんですか?ファイトブル」


「そうね。基本的に数は腐るほどいるわ。ま、繁殖力がすごいし至る所に分布してるからね。ただ、皮は良いし肉も良いみたいよ。折角だから持ち帰ってリナに調理してもらいましょう」


「お肉......」


じゅるり、とついよだれが出てしまう。

農家だったからお肉なんて食べる機会はほとんど無かった


「あら、楽しみなの?」


「はい!どんな......味、なんですか?」


そうねぇ、とケイトさんは立ち止まる。

そして両手を広げて


「噛めば噛むほど癖のない味がするわ。嫌な肉の匂いもないし、とても柔らかくそれでいて歯ごたえが抜群。......衝撃的な味よ!!」


デデーン!!まるでそういう効果音がつきそうな勢いで語るケイトさん。

一体、どれほど......!!


「ふふ、驚いた?......ってあれ、エレインは?」


「あれ?どこに......」


見渡すと、オレの自慢の視力で遥か遠くにいるエレインを見つけた。

だいぶん離れている上に、一つのパーティに絡まれているようだ


「ケイトさん、居ました」


「どこ?」


「多分、ここからじゃ見にくいと思います。行きましょう」


「わかったわ」


急いでエレインの元へと走って向かう。

近づけばわかったが、エレインは男三人組に絡まれているようだった


「ねえ君、良いじゃん?僕らと一緒にモンスターを倒そうよ」


「そうそう、このパーティには華が必要だと思わない?」


「え、いや、でも......」


「遠慮しないでよ」


一人の男がエレインに触ろうとした。

その瞬間、ケイトさんはあり得ない速度に加速してその男とエレインの間に割りいった


「困るわね?うちのパーティメンバーに手を出してもらっては」


「は?......まあ良いよ、君も入らない?そうしたら今の無礼は許してあげるよ」


「......なに?」


「確かに顔は良いかもね。ほら、入るの?」


「俺タイプだわ〜」


「騎士団の僕達のパーティに入れてあげるって言ってるんだよ。光栄でしょ?」


......やばい、なんか話してるみたいだけど遅すぎてまだ離れてるからわからない


(ケイトが速すぎるんだよぉ〜)


「騎士団?はっ、笑わせるわ。どうせ下っ端でしょう?」


「なっ......なんだと!!」


一人の男が怒鳴ったところで、ようやくその場に着いた


「はぁっ、はあっ......ケイトさん、速すぎ......」


「あらエルシアくん。遅かったわね」


「いや......」


「エルシア?今、エルシアって言ったか?」


「はい?」


誰だろうか、こんな人知らないんだけど......


(エルシアは案外有名だったりして?)


(ないない)


そう思い顔を上げると、目の前の人は歪んだ笑顔でこう言った


「あの落ちこぼれのダサルシアか!!」


「え......」


不意に体に電撃が走ったように感じる。

こんなに離れている場所なら聞くわけがないはずだ。

だって、だってそれは......その不名誉なあだ名は......故郷でしか言われなかったから......


「なん、で......」


「あ、覚えてねえか?僕のこと。クレイだよ!お前の親友のな!!」


「クレイ......!」


良く顔を見て思い出した。

茶髪、そしてオレの嫌いな吊り上がった目。

まさしくあのクレイそのものだった


「呼び捨てかよ!」


「っ、ぐ!」


「エルシアくん!」


驚いていると、いきなり腹を殴られた。

昔となにも変わらない


「ん?お前よぉ、見ないうちに図体ばかりでかくなったな、あ?」


「オレは......」


「なんとか言え、よ!!」


「っ」


続いて蹴りを入れられる。

だが、何故か昔より痛いとは思わなかった


「はあ、ったく......ほら、そこの子達?こんな軟弱より僕らと一緒にモンスターを倒そ」


「あんたぁ!!」


「あれ、君は怒っちゃう?良いの?僕は騎士団の幹部の息子だよ?」


「っ!」


そこでケイトさんの腕が止まる。

そりゃそうだ、あの騎士団幹部の息子に手を出したとなれば牢獄行きだ


「てかさ、なにその剣?どこでパクった?」


「これは」


「ん」


「......は?」


クレイは手を出している。

まるでオレのエストールを渡せと言わんばかりに


「忘れた?早く寄越せよ。それ、今日から僕のもん」


「......」


「早く」


(良いよエルシア。渡して)


(でも......)


(このガキ、タダじゃあおかない)


エストールにそう言われ、クレイに渡す。

するとクレイは、受け取った右手から地面にめり込んだ


「っ!?い、いってぇ!お、おいお前ら、早くどかせ!!」


「お、おう!」


クレイに言われて残りの二人はエストールをどかそうとする。

それが全く動かない


(ふんっ、ほーんとやだわこいつ。このまま手を潰してやろうかな)


(それはまずいだろ......)


そう思い、エストールを取る。

するとクレイは立ち上がって左手でオレの胸ぐらを掴んできた


「お前ぇ!どんなトリックだ!!」


「別に......」


なんだろう。

やっぱり変だ。昔みたいに......怖くない。

ちっとも。少しも。全然。

背がオレの方が高いから?それとも、エストール達が居るから?

わからない。わからないけど、一つわかることがある


「......ふっ」


「なに笑ってんだぁ!!」


哀れ。愚か。惨め。

今まで畏怖の対象であったクレイが、今ではそんな風に思えてしまった


「......殺す!」


いきなりクレイは剣を抜いてきた。

だけど、なにも問題はない。

だって、今まで通りだよ、なにもかも


(エルシア......?)


エストールを抜いてクレイの剣を受け止める。

するとほら、こんな簡単に折れた


「えっ」


「もう、終わり?昔みたいに、殴らないのか?」


怖くない。少しも。

エストール達に恥ずかしい姿を見せられないのもある、でもそれ以上に変わったことがある。

自信がついた。

騎士団のためにあれだけ......毎日死ぬほど体力をすり減らして、努力した。

小さかった背だって、体を鍛えてから段々と伸びた。

筋肉もついた。お陰で昔きていた細めの服はピチピチだ


「おらぁ!」


「おっそ......」


避けれる。簡単に。

するとそこでケイトさんとエレインの声が聞こえた


「もう良いわ。行きましょうエルシアくん」


「エルシアさん......」


「......ああ」


そう返して、三人でその場を離れる。

するとクレイは、後ろで何かを言っていた


「決闘だぁ!!」


......めんどくさいことになった


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ