決闘後
ケイトさんが部屋で暴れていたため、事情を説明して今はエレインの部屋にいる
「エルシアさん?試合が終わったあと、なんでケイトさんと抱き合っていたんですか?」
「え?あー......なんていうの、ケイトさんが転んでさ」
「それを支えただけ、ですか?」
「ああ、そうだ」
なるほど......と考え込むラブリーマイエンジェルエレイン。
一体何を考えているのだろうか。
(エルシアにはわかんないよ〜)
(あはは、うっざ)
そう思っていると、エレインは数歩後ろに下がり始めた。
何をするんだ?
「エルシアさん...ああっ」
彼女は近づき、如何にもな棒読みとともに転んだ。
それを受け止める......いや、強制的に抱く形にされた。
その瞬間、優しい香りとケイトさんとは違う、主に胸部の柔らかな鎧の感触がした。
「......」
そして、エレインはなぜか物凄くキラキラした瞳でこちらを見つめてきている
「あー。だ、大丈夫か?」
「はい!」
(う〜ん。策士だねぇ、エレイン)
(たしかに)
まさかここまやるとは......行動力も中々だ。
さすがはラブリーマイエンジェル。まあ役得みたいなところあるし嬉しいけどさ。
「ありがとうございます!それじゃあ、私はそろそろシャワーを浴びてきますね。......あ、そういえばお母さんからエルシアさんにって、預かってるものが」
「ヴィヴィアムさんが?」
「はい」
なんだろう......そう考えている間に、ちょっと待っててください。とエレインが何かを持ってきた
「これは?」
「開けてみてください」
エレインが持ってきたのは細長い木箱だった。
それを開けると、エストールと同じカラーリングでいかにもぴったりそうな鞘が出てきた。
おお、カッコ良い。
「エストールの切れ味だと、エルシアさんの持っている鞘じゃ切れちゃうかもしれないって、お母さんが作ったそうです」
「そっか......ありがたいな」
「いえ、お母さんの方こそ感謝してるって言っていましたよ」
そう微笑むラブ(略)エレイン。
たしかに、エレインに似てる笑顔で笑いそう言うヴィヴィアムさんの顔が浮かんだ
(早速私をこれに収めてよ!)
(んああ、ちょっと待て)
エストールを今までの皮と木でできた鞘から抜く。
するとその瞬間、その鞘は真っ二つになった。
へっ!?
(ふぃー、確かにこれはぴったりだしあったかいね!)
(へえ、鞘であったかいとかあるのか)
(まあ服......というか上着みたいな感じだからね。それに、この鞘なら私が加減しなくても切れることはないから!)
(なるほど。ていうか、切れ味とか自分で変えれるのね)
(まーねー。抑えるのにエルシアの力を使わせたもらってたけど)
うん、さすがは聖剣だ。
そう思っていると、エレインが話しかけてきた
「どうですか?ガタつきとかは......」
それを聞き、少し動かしたりしてみる。
問題はない。
「いや、少しもそんなことはないぞ。エストールも喜んでるさ」
「そう、ですか......良かったです」
「ヴィヴィアムさんには感謝しても仕切れないな」
「これも、クエストの報酬だーって言ってましたよ」
そうか。そう言うとなんだかおかしくなり、二人で笑い合う。
しばらく笑いあっていると、エレインはシャワーを浴びに行った
(そういえばエストール)
(なーにー?)
(お前の本当の鞘って、ないのか?)
(あったけど、今はないよー?)
(え?)
(あー、騎士王くんは私のことをぶっちゃけ世界を救ったあの一度しか使わなかったからねぇ。それにあの岩に刺されたあと、鞘は取られちゃったし)
(ん?エストールはずっとヴィヴィアムさんが管理してたんじゃ?)
(うぇー?)
おかしい。
エストールの話だとまるで辻褄が合わない。
ヴィヴィアムさんは父さんがエストールを使っていたと、確かそう言っていた。
そして奪われたと......じゃあ、今オレが話している剣は一体......?
(私がエストールだよ。多分、エルシアのお父さんが使ってたやつはレプリカじゃないかな)
(れ、レプリカ......)
(うん。さっき言ったけどー、何千年か前にあの泉の精霊に似てる人に私の鞘取られちゃったし。あれからは全然、鞘にあったわずかな力すら感じなくなったからね)
(なるほど。んじゃあ多分、ヴィヴィアムさんの先祖が鞘からレプリカを作ってたのか)
(そゆことー)
納得だ。でも、なんのために......
というか、仮にケイトさんにめちゃめちゃやばい力で打ち込まれたら、刃こぼれしてないのかな
(大丈夫大丈夫。私は錆びない、欠けない、鈍らない。の三拍子揃ってるし!)
(聖剣すごいな......)
すると、ドアがノックされた
「エルシアくん、居るかしら?け、ケイトよ」
「ケイトさん?居ますよ」
なんだかぎこちない話し方だ。
うん
「ごめんね?さっきはちょっと考え事しててさ......もう大丈夫よ」
「わかりました」
「さあ。今度に向けて話したいこともあるし、部屋に戻ろう」
どこか柔らかくなった印象のケイトさんはそう言い、部屋を出て歩いて行った。
にしても、今度に向けて話したいこととはなんだろうか。
(デート?)
(いやー、ないない)
エストールと話しながらオレとケイトさんの(愛の巣)......部屋に入る。
「さあ、そこに座って」
「はい」
ケイトさんに促され、近くの椅子に座る。
するとケイトさんが紅茶を出してくれたので、礼を言う。
ケイトさんは紅茶を一口飲み、話し始めた
「フェイにさっき言われたんだけど、今度エルシアくん、エレインちゃん、そして私の三人でクエストに行くことになったわ。だから、エルシアくんはどういうクエストが良いのかと思って」
「どういうクエストが良いか、ですか。うーん......まだまだ新米なので、比較的簡単で経験を積むことができるやつとかありますか?」
「あることにはあるわ。いわゆる、素材集めクエストね」
「なるほど......じゃあ、オレはそれでお願いします。経験者のケイトさんには物足りないかもしれませんけど」
「ふふ、良いわよ。可愛い後輩に教えるのだから」
「ありがとうございます」
あれ、ケイトさんこんなに可愛かったっけ......?
それからオレ達は、リナの作ってくれた夕食を食べてシャワーを浴び、眠りについた。
クエストについては、エレインも同意してくれた。
そのため、フェイさんが明後日クエストに行かせるそうだ。
「おやすみエルシアくん。寂しくなって私の布団に入ってこないでよ?」
「あはは、しませんよ」
言われてちょっと考えたけどさ。
良い匂いだしなんか優しくなってるし。
今ならいけそうな気が......!!
(私が居るよ!)
(はいはい。なんか萎えたわ)
(もー!剣扱いやめて!!)
(違う違う、意識しないようにしてるだけだよー)
(むぅ......棒読み......)
はは、ごめんな。
心の中でそう言い、枕元のエストールを撫でる。
するとエストールは、なんだか淡く光った。
にしても本当、ここは良いギルドだ
今回は短いです。そしてこれからは土日に一話ずつ投稿していきたいと思います