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双翼の精霊騎士王  作者: 星丸
冒険家になりました
10/40

実力

「まずいわね、エルシアくん」


「そうなのお母さん?」


「ええ、完全に彼女のペースに飲まれているわ」


「私もそう思います」


観戦していたら不意にお母さんがそう言い、聞き返した。

リナさんも同意する。


「まあ、心配はないわ」


「え?」


エルシアさんは完全に押されている。

今だって体勢を崩された。

なのにお母さんは笑いながらこう言う。


「だって、私が見込んだ男だもの。必ず勝つわ」


そう語るお母さんの目は力強く、確信していた


ーーーーー


なるほど。

エルシアはおそらくケイトの癖を見抜こうとしているのか。まあ、それは無駄じゃろう。

ああ、負けるかもしれぬな。

じゃがケイト相手は分が悪いとしか言えぬ。


わしがそう思っていると、ケイトが終わりを告げた。

そこで勝負はつくのじゃろうが、最後まで見届ける


ーーーーー


マズイ、このままじゃオレの負けだ。

そう思っても、鬼畜なケイトさんの刃は止まらない。

どうすれば良いのか、オレに残された1秒にも満たない時間で考える。


この一撃を塞ぐことができても、ケイトさんは双剣。

必ずすぐにもう一方の剣がくるだろう。いや、その先にもう3回くらいきてもおかしくない。

じゃあどうする?剣の長さを活かして二つとも一度で防ぐか?

おそらくそうした未来は負けになるだろう。

なぜなら彼女はオレにも考えられなような手で攻めてくる。蹴りとかありそう。うん


「はあっ!!」


ケイトさんの声が聞こえた。

すると、何故か白い光のようなものが高速で向かってきた。それをどうにかして躱す。

その後、何故か遅れて剣がやってきた


「なんで!?」


「っ、せい!!」


キィン!!と、驚いているケイトさんの双剣の追撃を防ぎ、距離をとって体勢を立て直した


「......どういうトリックかしら?あの状態、どれだけの猛者でも躱すのは不可能なはずよ」


ケイトさんが聞いてくる。

どういうトリックか?そんなもの......


「教えませんよ。まだ勝負は続いてますから」


「ふ、そうね。貴方に勝って聞けば良いわね」


知らねえよ!!

なんで躱せたんだオレぇ!?


(特性のおかげだよ~)


(特性?)


不意に話しかけてきたエストールに聞き返す。


(エルシアの特性はね、複合特性なの。で、そのうち一方は大剣豪の特性。これはね、超レアものなんだけど、持っている人の剣に対する知識、理解、剣を扱う技術などなど、全てを底上げしてくれるんだ!!)


(へえ、そりゃ便利だな。それで、避けれたのとなんの関係が?)


(さっきさ、白い光が見えたよね?それを躱したら後から剣が来たでしょ?それは大剣豪の特性の能力の一つ、剣読みだよ。まあ、簡単に言うと相手の動きから自分の脳で予測された剣筋が先に見えるってだけ。それ自体はものすごい努力と根気があれば誰にでもできるけど、エルシアみたいに光から剣がくるまでの間が長いのは大剣豪の特性あってこそだよ。もちろん、エルシアの努力もね)


(なるほどな......)


やっとオレの努力は報われた、って考えて良いのか?

そう思うととても嬉しい。毎日ハエを切ったりとかの練習しててよかった。

......いやまあ、成功率すごい低いけどね?


「あら、考え事?随分余裕ね!!」


ケイトさんが突っ込んでくる。

これだけ動いても顔が崩れないとは、さすが美少女。

あたりキツイけど。

その剣を避けているが、疑問が。


(今はその白い光が見えないんだけど......)


(そりゃあ剣読みは言ってしまえば脳に無理させている訳だからね。さっきみたいな極度の集中状態じゃないと見えないよ)


(そうか。世の中甘くない、な!!)


ケイトさんの剣を跳ね返す。


「っ!?......貴方、やっぱり中々やるわね。私もそろそろちゃんとやろうかしら」


ケイトさんはそう言うと、双剣のうち左手に持っていた剣を逆手に持った。

いや、手を抜いてたんかい。

そして


「ふっ!」


(また消えた!......そこか!)


スッ!!


また光が見えたためそれを首を逸らして避ける。

風邪を切るように放たれたそれは、オレの顔があった位置に向かってきた。

いやいや、死んじゃうぞこれ!?いくら刃がなくても!!


「へえ、今のも避けるのね......面白いわ」


「そ、そりゃどうも」


ケイトさんは先ほどまでのような優雅な戦闘スタイルから一転し、片方を逆手に持ったことでまるで獣のような素早さと重さで攻撃を仕掛けてきた。

その不規則な動きは、まさに予測不可能だ。

細かなフェイントなどがいくつも掛けられ、防ぐことしかできない。


「久しぶりにこのスタイルで戦うわ。でも、エルシアくんにならこのスタイルで戦うのが良いかもしれないわ。貴方になら見せられる」


「それは......褒められてるんですかね?」


「そうよ?さて、それじゃあもう一撃行くわよ。しっかりと防ぐこと、ね!!」


「くっ!」


ケイトさんは話し終わると同時に、今度は一直線で突っ込んできた。

双剣での重い同時攻撃をなんとか両手に剣を持ち、塞いだ。

いやいや、今剣が折れてたけど!?

あ、そういえばこの人何もないとこからもの作り出せるって言ってたっけ。そりゃ剣直るわな。


「っ......ぜぇい!!」


そのままケイトさんを弾き返すが、すぐさま攻撃を仕掛けてきた


「はっ!」


「ぐ!」


フェイントに惑わされ、蹴りを受けてしまう。

しかしめげずに目を向け続けると、そこで一つのことに気付いた。


(ケイトさん、一撃ごとに剣を握りなおしている......?)


剣をぶっ壊しては再生しているケイトさん。

そこでもう一度注意深くケイトさんの手を、攻撃をさばきながら見る


「せい!よっ!はぁ!!」


(やっぱりそうだ、指が動いている......一撃が強すぎて自分でも抑えきれていないんだ。剣が壊れるくらいだから当たり前か)


なら勝機は......いや、少なくともチャンスはある!!


「......ここだ!」


攻撃を塞いだ後、すかさず剣の向きを変えて保持力が弱まっているであろうケイトさんの剣に当てに行く。


キンッ!!


「......!?」


「ふっ!」


ケイトさんは剣を弾かれ、必然的に両手を上げる体勢になる。

その隙に首筋に剣を当てる


「辞め!勝者、ケイト!!」


「......うぇ?」


「ふぅ、間に合ったわ......おっとと、失礼」


倒れこんできたケイトさんを抱きかかえる。

おっふ、柔らか。

てか、なんで?


「エルシア、ケイトの膝をよく見ろ」


フェイさんがそう言うと、オレの腕の中にいるケイトさんが見やすいように膝を上げてくれた。

するとそこには短剣が仕込まれていた。

な、なんと......


「あの一瞬、エルシアが近づきケイトの首に剣を当てる時よりも、ケイトの膝の剣の方が速くお主の腹に到達していた。よってこの勝負、ケイトの勝ちじゃ」


「でも、強かったわ。エルシアくん。まさかあのタイミングで剣を弾くなんて思わなかったわよ?」


「あれはただ、ケイトさんが一撃ごとに剣の威力に手が耐えられず、握り直して剣の保持が弱くなる瞬間を狙っただけですよ」


「......それ、いつわかったの?」


「え?もちろん戦ってる時ですよ?」


なんか変なこと言っただろうか?


「うむ、関心じゃ。ところでお主ら、いつまでくっついているのじゃ?」


「「あ」」


フェイさんに言われて意識してしまう。

ケイトさんは汗をかいていたが、なんだか甘酸っぱい香りがした。

おん、興奮した。手は出さない。いや......出せないけどね?


(エルシアってば匂いフェチ?まあ、この子は胸が大っきくないからそっちの方に意識が行くのも納得かな〜)


(うっさいぞエストール。ところで、最後の膝の短剣が見えなかったのはオレの集中力不足か......いや、そうだよな?)


(もっちろーん。でも大丈夫、いざという時は私が居るから!)


......本当、エストールに甘えてばっかりだな。

そう思っていると、ケイトさんがオレから離れ、こう言った


「エルシアくん、貴方には意外と苦戦させられたわ。でも、楽しかった。ありがとね」


「オレも楽しかったです。久しぶりに......まあ、まだまだだって実感させられましたけどね」


オレがそう言うと、彼女は満足げな顔をしてアリーナから出て行った。なんだ、そんな顔出来るんじゃん。

ふとエレイン達の方を見る。するとエレインは口パクで何かを言っていた


(え、る、し、あ、さ、ん、の、お、ん、な、た、ら、し?)


(なんだそれ。オレはそんなことした覚えはないぞ)


(騎士王のハーレム体質は本当だったか......ライバルが......)


エストールが何か呟いていたが、それよりもエレインの横で手を合わせているヴィヴィアムさんは何を祈っているかが気になった


(エルシアの生存じゃない?)


(いや、なんでだよ)


よくわからないなぁ〜。女性は。


(わかってないのはエルシアだからだよ!まあ、その方が私に依存させやすくなって良いんだけどさ♪)


(......今度から、普通の剣を使おっと)


(ええ!?うそうそ!!だからそれだけはやめてえええええええ!!)


ーーーーー


部屋に戻るなり、私はベッドに倒れこむ。

途端に物凄い倦怠感が襲ってくる


「ちょっと油断が過ぎたかしら......いや、彼の実力が本物だっただけ、ね」


ガチャ、と、ドアが開いてフェイが入ってきた


「ちょっと、ノックくらいしてよ」


「女同士じゃし良いじゃろう?それと、報告じゃ。先ほどエルシア達の冒険者登録が承認されたことで、やれるクエストが増えた。近々三人でクエストに行ってもらおうと思っている」


「そう......わかったわ」


「ふ、やはりアルの息子はすごいのぅ?」


「??」


私がその言葉の意味を測りかねていると、フェイはからかうような顔でこう言った


「なんてったって、あの硬かった双剣使いを、ただの恋する乙女にしかけているのじゃからなぁ?」


......


「じゃあの〜、乙女や」


「っ、バカ!!」


部屋から出て行ったフェイ。

その後に言葉の意味に気づき、ドアに向かって枕を投げつける。


「いつから......って、いやいや、なんでそういうこと前提なの!?」


ああもう!訳わかんないわ!!


ーーーーー


......なんかケイトさん暴れてるから、今日はエレインの部屋にお世話になろ


(夜這い?)


(折るぞ)


(えへへ)


(ったく、このドM聖剣め。ところで、オレのもう一つの特性ってなんだ?)


(ひーみーつ)


なんだよ、ケチな聖剣だなぁ


(これはエルシアを思ってのことだよ!)


(......まあ、エストールは嘘はつかないからな。わかった)


(おっと!?エルシアがデレた!?よし、まだ私にもチャンスが!!)


「うるさい。ないぞ」


そう言い、鞘越しにエストールを小突く


(えへへ......騎士王には、自分の力でなってもらわなきゃ)


エストールが最後に言った言葉は、うまく聞こえなかった

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