無色のパラノイア第7幕〜胡蝶の夢〜
スマートフォンから流れる目覚ましのアラームと共に目覚めた。
時刻は6時36分。いつも通りの時間だ。
何も考えずに素早く起きるのが、二度寝防止のコツだったりする。
あくびをしながら起き上がって少しずつ意識が覚醒したとき、体に異変が起きていた。
左目が全く見えず、右耳が聞こえないのだ。
一時的なものだと思い、取り敢えず着替えることにする。
ベッドから起きてパジャマから制服に着替えているとき、私は左手の中指に紫がかった不気味な指輪が嵌めてあった。
恐怖と疑問に駆られる。
(昨日は何もなかったのに…… )
指輪は外そうとしても外れない。何があったのかも全く思い出せない。
それに、味覚が無い……。
(確か昨日は、友達とカラオケに行ってそのまま家に帰ってきて……。 あれ? 誰と行ったっけ……?)
思い出そうとした途端、頭に痛みが走り私は考えるのをやめた。
そして制服に腕を通して着ようとすると、制服の裏地にペンで何か書いてあった。
【櫻井美希に会うこと。それで全て分かる 】
とはっきり私の字で書いてあった。
私は動揺した。さっきの頭痛。この指輪。
きっと何かあるに違いないと確信したのだ。
少し混乱している気持ちはある。
でも、無意識に近いが私は理由もなくこんなことをするとは思わないと感じていた。
私は学校へ行く支度をして、走って家を飛び出していった。
私の名前は瀬戸霞。3年9組所属。
一応普通の高校生をしてる。
趣味は人間観察と読書。推理小説とか結構好きかな。
読んでいて騙された気分になるのは本当に楽しい。それが影響してから、結構人間観察に熱が入っていたり……。
きっと時代が違かったら、探偵とかやっていたかもね。
人間観察が趣味なだけあって周りの人達とも結構上手くやっていけてる気がする。
私は学校に着くと、すぐさま櫻井美希のいる3年7組に足を運んだ。
なぜ彼女を知っているかというと、それは私が一方的に知っているとしか言えない。
よく遊んでいる友人は、いろんな生徒の情報を仕入れてそれをよく話のネタにしている。
櫻井美希は運動も勉強も出来て、何かと役に立つことから万能ちゃんとか呼ばれかけていたりとか……
それはそれでどうかと思うが、今となっては感謝している。
私は教室の扉を勢い良く開けて
「櫻井さん! 少し話があるんだけど来てもらっていいかな!? 」
走り疲れて息切れが激しい。それはそうだ。
だって私、運動得意じゃないし!!
「あ、うん。約束だったもんね 」
そうして私達は屋上に出た。
「それじゃ約束通りすべて話すね。
あなたの一部について……」
櫻井美希は淡々と、まるで夢のように語った。
しかしその話は、私の記憶の奥深くに突き抜け扉が開いたような気がした。
「あぁ、なるほどね。全部思い出しちゃった……」
「一体、この話に何の意味があるの……?
私には全く分からないのだけれど」
そう聞いてくる櫻井美希に私はこう答えた。
「こうなることは必然であり、皆望んだことだったんだよ。
なるようになるし、理不尽もたくさんあったけど、変える選択肢もある。
これは人生でも同じだったよね?
でもね、それは全て観測者達の……。
だから私は蝶になって舞うことにしたの。
これ以上は禁物かな。
じゃあ最後にひとつだけ、あなたがこのゲームの結末を変える鍵を握ってるってことを教えておこうかな。
それじゃ、また会えたらお酒の一杯でも奢るね! 」
そして私は屋上から走って柵を駆け上り、まるで眠るかのように目を閉じて……飛び降りた。
(私、本当の意味で生きてるといいな。
消されなければいいけど……。
それにしてもアタシって本当に天才よね! )
そしてアタシの意識は途切れた。
14人もの敵達や同志達を残して……
無色のパラノイアご精読ありがとうございます!
今回、いろいろ疑問に浮かんだと思います。
次話からはこのような疑問をちらつかせつつ進めていきたいと思います。
わざわざ最初から読んでくださった方、続けて読んでくださった方、本当に感謝します!!
これからも無色のパラノイアを宜しくお願いします(っ`•ω•´c)