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第20幕〜What color is your soul?その11

「だから……だから、僕と結婚して僕の物になってください! 」

中山は語った後、またも同じ言葉を繰り返す。

それと同時に、私の足首を持つ手の力も強くなり折れるのではないかと心配する程になった。


「っ!……いや、ごめん。尚更言ってることが理解できないわ」

「なんで……? 」

「はぁ……分かっていないようだから教えてやるよ」


中山の素っ頓狂な表情と相反して手の力は強くなっていく。

私はさり気なく左手でポケットからボールペンを取り出し芯を出しながら言った。


「それは愛なんかじゃなくただの妄想だろ。

お前の能力、それはお前の心を表したものだ。

遠いものには届かない。届いても足元だけ。

そして一方的に押し付ける……。

本当に欲しいのなら相手の気持ちも考えな! 」


私は左手に握ったボールペンを足首の手に落とし、見事に突き刺さるようにして落ちていった。

「いたっ! 」

中山は反射的にポケットから手を出し、私の足首の手は離れ全速力でその場から撤退するべく走り出す。


「……なんで皆、僕が好きだというと逃げるんだあああああぁぁぁぁ!!! 」


私は来た道とは逆の、校舎の隅。

狭い路地を抜けていく。

別に走りは速い方ではないが、遅くもない。

普段からドジを演じているため周りで知っている人はいないだろうが。

しかし、50メートルほど離した距離が一瞬にして30メートルにまで縮まった。

中山は必死の形相。憤怒に感情を振り切った様子で追いかけてくる。


「あああああぁぁぁぁぁぁ!! 」


目的地までおよそ200メートル。

(なんでこんな無駄にこの学校広いんだよ! )


等と心の中で毒づきながら走る。

目的地まで50メートルまで迫った時、中山との距離は20メートルにまで縮まった。

その瞬間、校舎の影になっている部分。私のすぐ左側の校舎の壁から何かが迫ってくるのを見て咄嗟に校舎から遠ざかる。

校舎の壁から現れたのは、さっき私の足首を掴んだ腕。

そして、その手に持っているものは鋭利なナイフだった。


「ちっ……範囲だけじゃなく、壁までありなのかよ! 」

私はすぐ様、中山の方へと振り返る。

中山は案の定、右手をブレザーのポケットへ入れていた。

「ふふふ、僕もねぇ〜進化っての? してるみたいなんだよなぁ! 」


その時、また壁から何か飛んできて避けようとしたが顔の前を何かが掠って下に落ちた。

ほんの少し右の頬から鮮血が流れる。

「そろそろ限界か……」

この場所は北校舎の隣にある予備棟。

予備棟と言っても、この学校が再開発される前の旧校舎で人は殆ど寄り付かない。

誰かに助けを請おうとも、誰にも届かない。


「諦めてくれた? それじゃもう終わりにしようか。

君を殺して、僕は永遠に君と一緒にいるよ……」


そう言うと中山は、両手をポケットに入れ私の左足首を掴み、校舎の壁からナイフを持った手が出てきた。


絶体絶命。

死の瀬戸際。


しかし、すごい充実感に溢れていた。



「そっか……私、もう終わりなんだね」

「そうだよ、僕と永遠に一緒さ……」

だんだんと首筋へと近づいてくるナイフ。

心臓の音が大音量で私の耳にまで木霊している。

私は最後に、大きく息を吸って

「きゃぁぁぁぁ!! 」

「おっと、この場所は君も知ってると思うけど人なんていないよ」

中山は勝利を確信していた。



それでいい。



「いや、もうお前の負けだよ中山」

「ふふ、最後の断末魔ってやつだよね。

そんな君も美しいなぁ……」

ナイフが私の首の側まで。鉄の温度が皮膚にまで伝わる。

「それじゃあね、そしてまた会おう」

中山がそう言った時、旧校舎二階の窓から声が聞こえた。

「え……? どういうこと? 」

二階の窓から見ていたのは、よく知っている顔。

演劇部の部長、日暮先輩だった。

彼女はその後、顔を真っ青にした後崩れるようにして倒れる。


「ちっ……邪魔が入ったけどまあいいや。

それじゃ、またね」

中山は一連の事を気にすることなく、私を殺そうと再開する。

しかし、もう終わりだ。

私はその場から反転し、歩き続ける。足首の手も力が入っておらずすぐに抜けた。


「ちょ、ちょっと待って! ……あ、あれ? なんで手が動かないんだ!! 」


中山の言葉を聞き、私はその場で立ち止まり振り返りながら答え合わせをした。

「少し危なかったけど、この場所に着いた時点で。いや、最初に花壇までまんまと来た時点で私の勝ちは確定してたんだよ」


私がそう言った途端、壁から伸びていた腕は粘土のように接続部が剥がれていき真下に腕が落ち、地面から生えるようにして私の足首を持っていた手はその場にぐったりと横になっている。

そして…………


「あああああああぁぁぁぁぁぁ」


中山は両腕を抱えるようにして叫んだ。

既にない両腕からは、袖から大量の血が流れるようにしてその場に滴っている。


「それじゃ、最後にネタばらしっていこうかな。

このゲーム、ガルムのルールの1つにこんなのあったよな。

【能力の使用が一般人に見られた場合、その能力を失う】って。

お前の場合は、失う直前まで使用してたからそのまま腕がちょん切れた訳だ。

それと、最初から勝ちを確信してた理由だが、私の能力【意思を誘導する】能力を前に演劇部の部室へ行った時に、この時間。この旧校舎に来るよう誘導してたんだよ」



私がネタばらしをしている間も、ずっと呻いている中山。

放って置いてもきっとあと数分で死ぬだろう。

私は溜息を吐きながら後ろを向いた。



「……やっぱり、僕の愛は届か……ないのかなぁ……」

「……いや、しっかり届いた。

だけどあと少し、優しかったら……な」


私がそう言った時、私の後ろで重い何かが倒れた音がした。

それ以上、音が聞こえることは無くなり私は歩き始める。

何も無かったように……。

ご精読ありがとうございます!

最近思い始めたのは花崎楓が主人公なのでは…?とか思ったり。

でもこの作品はある意味全員主人公なんです。

きっと最後に。。

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