無色のパラノイア第16幕〜What coloris your souiその7〜
──────
「あの時の輝君は私からしたらヒーローだったの。そんな君に助けてもらって、いつか会ったときに絶対お礼を言おうって 」
あの時から今まで。こうなることが決まってたように感じた。
言い方をロマンチックにしてしまうなら【運命】とでも言うのだろうか。
「ほら、自分で言うのもあれだけど。あの時より随分可愛くなったでしょ? 」
澤島さんは隣に座る自分に近づき、上目遣いで見つめてくる。
(可愛すぎだって……!)
「そ、そうだね! 凄い可愛いと思うよ」
僕はまともに目を見ることも出来ず、完全に目をそらして言ってしまった。
「ふふ、照れちゃって〜。まあ、何だかんだあったけど後悔はしてないよ?
私、思うんだ。 後悔するってことは今の自分を否定すること。これから先にある未来をも否定して……。だから私は全く後悔してないよ! 」
それが澤島さんの覚悟なのだろうか。
後悔……。
「僕には後悔しか無いかもしれない。
でも言う通り、そのおかげで今があると考えると悪くないかもしれないな」
「でしょでしょ! 」
とその時、学校の鐘が鳴った。
「そろそろ時間だね、それじゃあまたね」
「ああ、また」
彼女は弁当箱を持ち帰っていった。
そこで僕は気づいたのだ。周りを見渡すとそこら中から変な視線を感じた。
それから数秒後、その視線が僕への嫉妬だということに気付きその場から速やかに退散することにした。
──────
「…………」
教室に戻ると、そこからはいくらかの男子の視線を感じつつ、目の前には信司が仁王立ちしていた。
「…………」
信司は僕の目を見たまま黙り込む。
一体なんだと……いや、今更何を言うかなど想像に難くない。
「……なあ輝、お前らがいい雰囲気ってのは知ってるけどよ。どうしたら彼氏を全く作らないことで有名なガードの硬い美少女を落とせるんだァ!!! 」
信司の言葉が火種となり、
「そうだぞ加藤」「何でお前が……」
などなど有象無象の台詞が飛び交っている。
「いや、そんなこと言われても。成り行きというか。ってかまだ澤島さんとはそんな関係じゃないから」
「いや、まだって何だよ。まだって」
そんな時、前方のドアから教師が入ってきた。
「ほらほら、授業もう始めるぞ。お前ら席につけ」
「輝、後でし〜っかり話を聞かせてもらうからな!! 」
「お、おう……」
なんとかやり過ごせたが、面倒だ……。
しかし、この時ばかりは忘れていた。
僕達は殺人ゲームの最中だということに…………。
ご精読ありがとうございます!




