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無色のパラノイア第15幕〜What color is your soul? その6〜

僕は生徒指導室にそのまま連れてかれ、数十分後怖い見た目の生徒指導担当の先生が入ってきた。

中学の先生なのにいかつい見た目にグラサンととんでもない身なりだ。

「加藤、まずはお前の話を聞こうか。

まさかとは思うが、嘘なんかはつくんじゃないぞ? 」

威圧的で手が震えている。

思考は全く追いついていない。ついさっきまで普通に生活していたら急にこれだ。

嘘なんかつけるはずがない。余裕すら皆無だ。

「は、はい……。 着替えようとしてバックから着替えを出したらこれらの物がバックに入っていて……。もちろん見覚えもありませんし僕のものじゃありません。 本当に訳がわかりませんでした……」

俺は可能な限り精一杯の弁明を述べて、生徒指導の言葉を待つことにした。

彼は足と手を組み、大きくため息を吐いてからこう言う。

「大体こういう類の奴らはお前と同じことを言うんだ。まあ決めつけるのは良くないからな。

それじゃあお前は今回の件、一体どう思うんだ? 」

どう思うか。きっとこれをしたのは海都だろう。

いや、犯行を決して見た訳では無い。しかしそれ以外に思い当たる節が無いのだ。

しかし信じたくない気持ちの方が多い。あんなに真面目だった海都がそんなことをしてまで……。

ここは仲間を売るような気は引けるが、このままでは話が進まないし告げるしかないだろう。

「どう思うか? と言いますと、明らかにハメられたと思っています」

「心当たりがあるみたいな言い方だな? 」

「は、はい。 あまり言いたくはありませんが、同じバスケ部の葛城さん。彼には最近よく私怨のようなものを感じていまして……。

いや、実際に犯行は見ていませんが可能性としては……」

「葛城……そうか」

生徒指導は少し考え込むような仕草を見せて続けた。

「お前は嘘をついているようには見えない。

だが、証拠が無い以上何とも言えない。今日のところはこれでいい。この後また親を含めて話し合いをすると思う。それまでにはまた考えを改めとけよ? 」

駄目だ、完全に疑っている。

だが、言葉を返せるわけはなく承諾してしまった。

「は、はい……」

そうすると生徒指導は生徒指導室から出ていき、数分後僕は出てクラスに戻った。



クラスに戻ると、当然の如く授業中だった。

前から入るのは気が引けるので後ろから静かに教室に入る。

しかし、皆は後ろを見た。

その目はまさに冷たい視線は勿論、拒絶や驚愕といったもので完全に悪い方向で話は広まっているようだ。

俺は何も気付かないふりをして机に座る。

先生は敢えて何も気にせずに授業を進めていた。


それから休み時間に入り、皆から質問の嵐だった。

少しでも誤解を解こうと弁解したが、やはり一度崩したものを元に戻すのはそう容易いことではない。

俺は何もやる気が起きず、放課後も部活を休んで家に帰ることにした。

そのとき、下駄箱に差し掛かったところで彼の姿が。友人と楽しそうに話す海都の姿が目に映った。

なんだろうこの気持ちは。殺意? 怨み? それとも嫉妬だろうか?

胸の奥から湧いてくるのはどす黒い感情。

すると海都は俺に気が付き、ふと目があった。

しかし、そのまま知らんぷりをして体育館へと向かう。

それを見た瞬間、俺は後ろから追いかけて1発ぶん殴ってやろうかと思った。

だが、何とか踏みとどまる。そんなことをしても事態を悪化させるだけだ。

俺は早足で家へと向かった……。



ここから先の話は簡単だ。

この状況で学校に行ける訳がなく、2日後に両親を含めた話し合いが始まった。

終始両親は反対してくれたのが幸いだったが、

学校側は消して認めず、最終的には警察には連絡せず他校への編入。この件を再度持ち上げないことを条件に話し合いは終了した。

これは後から聞いた話だが、葛城海都の父親はこの学校の理事長だったらしい。

息子の犯行がバレたら学校側も相当まずいだろうし、生徒指導側にも圧力が掛かったのだろう。



なんて無力だったのだろうか……。

俺は最初から何もかも間違えた挙句、気がつけば何も動けない。詰んでいた。

海都に怨みが無いといえば嘘になるが、それ以上に自分の力の無さを何よりも怨んだ。

ああ、俺がなんでもできるだって?

ふざけるな。何も出来なかったじゃないか。

友の悩みに気付くことも、自分の立場も……。

この時から俺。いや、僕は他人と積極的に関わることを辞めた……。



話し合いの当日、学校から家に帰る時両親の車には乗らずに家には歩いて帰ると告げた。

心配そうにしていたが、是非を言わせず学校を飛び出した。

それから何時間経っただろうか?

僕はひたすら歩き続けていた。この時、確かにいろんなことを考えていた。でも、全てがどうでもよくなってしまった。


なぜこうも中途半端なんだろうか。

なぜ何かアニメや漫画の主人公みたいに能力かなにかを持ってないのか。

どうしたら小さい頃に憧れたヒーローになれるんだろうか。


そんなどうだっていいことを考えて……。

いや、それぐらいしか考えることが浮かばなかった。

気がつけば夕日も沈みかけ、子供たちも家へ走って帰っていっていた。

そんな時、ふと少し遠いが声が聞こえた。

「や、やめて! 離してください……ッ!」

女性の声だろうか、少し裏路地に入って声の方へ向かうと、もう使われていないだろう廃墟で高校生と思わしき男の集団が中学生の女子生徒の手を掴んでいた。

「やめてと言ってやめると本当に思ってるの? いやいやないから(笑)」

「あなた達……本当にこんなことをして許されると……思ってるのですか 」

女生徒の声は完全に怯えていた。

「そろそろ諦めなって。 あの女が言ってたぜ。お前がうざい。死んでほしいってな。

残念だったな、どうだ? 友人に裏切られた気持ちは? 」

(友人……に裏切られた?

そうか、彼女も僕と似ためにあったんだな。)

彼女はその言葉を聞いた瞬間、全てを悟って諦めたように見えた。

もう、どうにでもなれ。と。

「ふ、往生際がいいじゃねーか」

そうしてリーダーと思わしき男が彼女の制服に手を出そうとする。


……本当にこれでいいのか?見て見ぬ振りをしていいと?

……無理だって。僕がここで飛び出したところで何にも解決にはならないよ。

……ああ、そうかい。そうしてまた俺みたいに間違いを犯すんだな。

……………………。

……お前は俺と違う生き方を選ぶことにしたんだろ?

……………。

……それなら今だけでも普段と違うことをしても何も問題なんかないよな?

……。

……ヒーローみたいな事をしたっていいわけだよな? 頑張れよ、俺。いや、僕。

……ッ!!



気がつけば僕は飛び出して男達に向かって走り出していた。

「おい、なんだよこいつ。お前ら、相手してやれ」

「うおおおおおおおお」

僕は必死に殴りかかってくる男達にしがみつき、振りほどかれ蹴り飛ばされる。

それでも必死に抵抗しようとして何回も殴られ蹴られる。

(ああ、本当に僕って無力だ……。何でこんなことしようと思ったのかな……。)

朦朧とした意識の中、つい諦めてしまいそうだった。

その時だった。この時のことを僕は一生忘れることはないだろう。

僕達に向かって走って来る影が一つ。

その影に向かって手下の男達は襲いかかる。

しかし、それをものともせずになぎ倒していく。

その姿はまさに……僕俺ぼくたちの憧れた

ヒーローそのもののような気がした。

「てめぇ、よくも仲間をやってくれたな!

覚悟は出来てるんだろーなぁ? 」

そうしてリーダーが取り出したのはナイフだった。

なぎ倒してた彼の顔がようやく見えた。

よく見れば高校生のような体型をしているが、制服を着ていてそれは隣町の中学校の制服だったのだ。

「なあ先輩、それを出すってことは覚悟は出来てるんだろうな? 」

「うるせーな!! 」

リーダーは彼に向かって走り、素早くナイフを突き出す。

彼は素早く身を低くして躱し、男の弱点。

股下に向かって全力で蹴りをいれた。

「ぎゃああああああああ」

リーダーがうずくまったと同時に、左手でナイフを取り上げ右手で顔面を殴った。

「年下に手を出すにしても未成年に手を出しちゃ犯罪だぜ? ロリコンも大概にしとけよな 」

決め台詞にしては拍子抜けだが、そんなことはどうだっていいくらいカッコよかった。

「よ、お前さん大丈夫か? 」

「あ、はい。何とか……」

そうして僕に手を差し伸べ、立ち上がる。

「お嬢さんは大丈夫か? 」

「は、はい。あの……ありがとうございました……! 」

「いや、いいっての。それに、助けたのは俺じゃなくてこいつだしな」

流石にそれは大げさだ。と言おうとした時、少し遠くから声が聞こえた。

「おい、そこの君たち待ちなさい」

あの服は警察官か。きっと誰か通報したのだろう。

「やべ、おい。お前も早く逃げるぞ! 」

「え、ま、ちょっと」

彼、僕のヒーローは僕の手を取って廃墟の裏口に走って向かいなぜだか必死に逃げたのだ。

それからしばらく走り、ようやく彼は公園のベンチに腰を下ろした。

「ふう、危なかったぜ……」

「はあ、はあ……。いや、なんで逃げる必要があったんですか? 」

流石に全力疾走はきついって……。

「そりゃお前、ああいうシーンは悪くなくても逃げるものだろう? よくあるヤンキーとの戦闘でよくあるじゃん」

「よくあるって……」

そんな軽口を聞いていたら、急に今までの事がどうでもよくなってしまった。

馬鹿らしくなっていた。

そうか、これが……。

「そうだ、俺の名前は越川信司だ。よろしくな! 」

「あ、僕は加藤輝。さっきはありがとう」

そうして僕達は握手を交わして気がつけば笑っ

ていた。

何て暖かいんだろうか。

夕日が沈んで夜になっていたのに、不思議と心は夕日色に染まっていた……。

ご精読ありがとうございます!

次からはようやく書きたかったシーンに移れて楽しみです( *˙ω˙*)و グッ!

ブクマ評価してくれたら嬉しいです!

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