無色のパラノイア第14幕〜What color is your soul?その5〜
それからというもの、海都と話すことは無かった。
いや、無いわけでないのだけれどあからさまに避けられてるってところか。
他の人とは……普段通りに接している。
ここまでくると流石に海都があの日、何を思っていたのかは今の俺じゃ全く分からない。
そもそも分かっていたら言葉なんか要らないだろう。
そんなことを練習中に思い耽っていたのがダメだった。
「輝、パス! 」
と気づいた時には既に目の前にボールが勢いよく飛んできていて
「うがっ!? 」
見事に顔面へクリーンヒット。更には変な声まで出してしまったという始末。
これは完全に赤面ものだ。
「おい〜輝! 何やってるんだよ。 集中集中っ!! 」
「ああ、悪い悪い」
そう言って僕は1度コートを出た。
(こりゃ1度気を引き締めた方がいいな)
このまま続けてもチームメイトに迷惑をかけるだろうし、外の蛇口で顔を洗って気を引き締めることにする。
「はぁ……」
蛇口を閉めてタオルで顔を拭く。
こうして顔を埋めてると何もかもどうでもよくなる気がする。
良いものも悪いものも全て拭き取ってくれるような……。
「お前最近大丈夫か? このままじゃチームのモチベーションに関わるからな。何かあるなら相談に乗るぞ」
そう言ってきたのはキャプテンだ。
スポーツ刈りで身長も高く正しくスポーツマンって感じだ。
「ごめん、ちょっと進路に悩んでてさ。
もしかしたら俺……殺し屋とか向いてるかも?! 」
「はは。それぐらい元気があるなら大丈夫そうだな。すぐ戻れよ〜」
そうしてキャプテンは練習に戻っていった。
(なんとか無理やりすぎる冗談でやり過ごせたけれど、流石にこのままじゃ皆に迷惑かけるしな。しばらく例の件については考えるのはやめよう)
大会も直に始まるし、こんなこと考えてる暇もない。
僕は急いで練習へ戻っていった。
──────
それから数週間、海都とは1度も会話をすることがなかった。
しかもここ暫く、自主練に励んでいる姿を見かけない。
今日は顧問の先生からユニフォームを渡される。
つまり、ここで前の番号で呼ばれなければ試合に出れる機会が少なくなるのだ。
この日は皆いつもよりも緊張度が高かった。
そして練習後、発表の時間になり顧問が皆を集めた。
「来週は大会だ。皆大会に出るために頑張ってきたのは伝わってきた。
だが、試合に出れる人数は限られている。
やるからには勝ちに行くのが普通だ。そこには一切私情は挟まない。
この結果を真摯に受け止め、今後も励んでほしいと思う」
皆の緊張が空気を伝わって心臓に直に伝わってくる。俺はこの時間が本当に嫌いだ。
努力は確かにレベルアップには必要だが、レベルアップにも経験値の量は人によって違う。
そのレベル差によって、いくら経験値を積もうが報われない人が必ずいるのだ。
【努力は必ず報われる】長い目で見たらそうだろう。だけど、チャンスが限られていて時間もなかったらどうしたらいいのか……。
そんな思考を毎度の如く重ねながらも話は続く。
「それではユニフォームを発表する。4番、キャプテン杉山! 」
「はい! 」
「5番、相葉! 」
「はい! 」
主に試合に出るのは一桁番号。10番以降は試合に出る時間は短い。
次々に発表され8番までに俺と海都の名前はない。
俺だって試合に出たい。呼ばれろ! と心の中で必死に願う。
きっと皆も同じ気持ちだろう。海都も……。
「9番、加藤! 」
「は、はい! 」
相変わらずギリギリな番号だが、僕の名前が呼ばれた。
正直、とても嬉しい。だがそれと同時に、皆の期待を背負うことになる。
海都は俺より何倍も練習していた。
その絶えず努力する姿に尊敬していたし、単純にすごいと思っている。
そんな彼より俺が選ばれていいのかという罪悪感にどうしても苛まれる。
きっと後ろを振り返れば海都の表情を見れるだろうが、怖かったしあまり性格の良い行為とは思えない。
結果、海都は11番。
俺は1度も海都の顔を見ることなく、体育館を出て速やかに家へ帰った。
もうこの時点で、僕は失敗をしていた。
いや、失敗を重ねすぎていたのだ。
人間は過ちを犯し続け学習する生き物。
きっと僕は人間じゃないのだろう。
僕じゃなければもっと良い選択が出来たかもしれない。
そう、既に引き返せないところまで泥沼にはまっていた。それに気付かない愚かで純情な【俺】の姿だった……。
──────
ユニフォームを貰った次の日、朝練が始まったときのことだ。
海都は今まで僕と目を合わせようともしなかったが、今日は異様に変な視線を送ってくる。
恨み……?のようなものだろうか。いや、そういう奴ではないとは思うが、恨まれても仕方がない。
ろくに努力もしてこなかった奴が、自分より上に選ばれているのだから気に入らないだろう……。
(これじゃこの前の二の舞か)
そして僕は、1度スイッチを切り替えて練習に励んだ……。
朝練後のこと、体育館の端で俺やチームメイトたちが着替えているときに事件は。
いや、事件というよりももっと分かりやすい言葉を並べるならば。【詰んだ】のだ。
着替えようとバックから服や、シューズケースを出すために一気に中身を出すとそこにはタバコや、よく分からない薬のようなものがいくつか服に紛れて出てきたのだ。
俺は何が何だか分からなかった。
それに気づいた隣にいたチームメイトの1人が
「おい輝、何だよそれ」
その一言が火種となり、瞬く間に他のメンバーと顧問が集まってきたのだ。
混乱して動けない俺と相反して周りの人達のざわめきは大きくなる。
「なあ加藤。一体それは何なんだ? 」
とても威圧的に、顧問は僕に問いただした。
「ち、違うんです……! こんなもの見覚えがありませんし、何でバックにこんなものが入ってるんだ!! 」
俺は混乱に混乱に重なって何が何だか分からなくなっていた。
声を荒らげると、それに比例して外野の声も大きくなる。
「とにかく、1度話を聞かせてもおうか。来てくれるな? 」
「……はい」
俺は顧問に強く手首を捕まれ、そのまま連れていかれた。
ふと後ろを振り返ると、海都が上から見下したように。今まで見たこともないような残酷な笑みを浮かべていた。
(ああ……、俺は既に最初から間違ってたんだな)
俺はこの時、完全に思考は停止していた……。
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