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無色のパラノイア第13幕〜What color is your soul?その4〜

ビーというブザーの音が体育館に響く。それは歓声よりもよく響き、すべての終わりを告げていた。

冬の初まりを感じさせるような肌寒さと葉が枯れ落ちる季節。

世代が交代し、僕達のバスケットボールチームは初めての公式試合に挑んだ。


中学2年。僕、加藤輝はとある中学のバスケットボール部に所属していた。

今とはとてもかけ離れた性格をしていて、皮肉だが今の僕からしたらとても眩しく見える。

スポーツマンらしく誰とでも気軽に積極的に話しかけ打ち解ける。

ときに笑い、ときに泣くそんな表情豊かな男の子だった。

そう、この時の僕はまだ【理不尽な現実】ってやつを知る前だった。



──────

まず最初に、現状を少し話しておきたい。

僕たちバスケ部は、地区大会を何とか切り抜け県大会にまで出場することが出来た。

でもそこで意識の差が出てしまったのだ。

意識というのは、そのまま優勝して全国を目指そうとする人、県大会出場で満足してしまった人。

その意識の差は表面上は無意識的なもので。

県大会の試合結果はとても悔しいものだった。

序盤、第2ピリオドまでは42対35と比較的優勢だったのだが、後半はその差が少しずつ縮まり第4ピリオドの時には10点差がついてしまいそのまま巻き返すこと無く試合は終了。

そのときの僕達は何も会話をすることなくコートを出た。

まるで鎖によって拘束され、死刑執行を待つ囚人のよう。

これこそ、有名なスポーズ選手からしたらこの経験を活かして次に繋げようとするだろう。

前向きに、足元に注意しながら。

でも、僕達は悪い例の一つかもしれない。

そう、一言で言うなら冷めてしまっていた。

たった1回。必ず負けると知ってはいてもそこにチーム内の意識の差がさらにダメージを与えていたのだ。

僕も、もう少し上に行けたらという気持ちが強かったから、それなりにキツいものがある。


会場の座席。僕達の荷物を置いている場所に戻ると、後輩達が励ましてくれた。。

それに便乗して、チームメイト達は悲しみを紛らわしているのか。それとも全国なんて行けるわけがなかったという嘲る意味が含まれていたのかは分からない。

キャプテンやスタートで出ていた仲間は混ざって笑っていたり、席を外していたり様々だった。

正直なところ、それなりに真面目にやっていたからあまり自分の気持ちに嘘はつきたくないと思う。でも、僕はスタートメンバーの5人ではなく6.7番目という微妙なところ。

それにさっきの事ではないけれども、ポジティブ主義。次頑張ればいいさという人なのでここは楽しく混ざることにする。

学生ではいちばん信用出来ない言葉だが……

そんなとき一人の後輩が話しかけてきた。

「先輩お疲れ様です! 惜しかったですね。

活躍っぷり見てましたよ!

しっかり周りが見えてて、キャプテンの代わりを完璧にこなして。流石です! 」

「そんな事ないよ。スタメンじゃないし、キャプテンのポジションの代わり。代用品だからね。

今の僕が出てもチーム最高の状態で戦うことは出来ないから、まだまだ練習が必要だよ 」

「先輩は何でも出来ちゃう人ですから余裕ですよ! 練習また付き合います! 」

「ああ、よろしく頼むよ 」

「あ、そうだ! この前、この選手がですね…… 」

そう言ってバッグからNBAの雑誌を出してきた。

こんな感じで他愛もない話を続ける。

(後輩の言ってたこと。僕が何でもできる……か )


確かに何でも出来ると思ったことはないが、苦手なことは殆どない。昔から苦手なことを作らない性格だったから、それなりのレベルなら出来る。

でも裏を返せば突出して得意な事はなくて、全てにおいて一定の能力だから扱う方からしたらとても使いにくいに違いない。

格闘ゲームとかだったらそんなキャラは僕は使わない。

これが最近気づいたコンプレックスでもあり、特技でもある。

それに比べて後輩は頭もキレて運動も出来る。

少し幼さが残る顔立ちだが、そんなものは些細なものだ。

まあ、そんな後輩のおかげで気持ちも落ち着いたしまた明日にでも頑張ろうかな。



そんなこんなで大会も終わり、普段通りの中学校生活が始まった。

一回目の朝練は、正直なところ空気は微妙だ。

【意識の差】は変わらないけれど、試合に出てるメンバーとそうでないメンバーとの溝が生じている感じだ。

僕達2年の中で試合に出ているのは8人。僕も不本意ながら入っているはずだ。

そして出れなかった人は6人。普段から練習はサボってる訳では無いが、少し厳しい言い方をしたら実力が伴っていない。

それがスポーツの黒い部分であり、仕方ないと言えばそうなるのかもしれない。

ピリついているとはまた違う雰囲気。

粘っこい絡みつくような……。

どうにかしなければそのうち、崩壊してしまうような。そんな不安定さが今まで以上に浮き彫りになっていた。

それでも練習はいつも通り進む。



そんな日々が数日続いたある日、やはりと言うべきか転機が訪れた。

もしかしたら、僕が【僕】たらしめた原因。

ここでもっと良い対応をしていたら、もっと明るい生活が待っていたのかもしれない……。



──────

放課後の練習を終え下校の準備をしている時、1人のチームメイトが声をかけてきた。

「輝、今日一緒に帰ろうぜ」

彼の名前は葛城海都。ポジションは僕と同じポイントガードで、ライバル的な存在とも言える。

僕も人のことを言えるほどでは無いけれど、現段階で実力的には勝っていた。

時々、影で練習をしている姿を見かける度に心苦しくなる。

僕よりも彼の方が試合に出るのが相応し……いや、それはまた違うよな。

「了解。んじゃ行こーか」

そうして僕達は学校を出た。


夕日が沈みかけ、暗い夜が近づき反射的に少しばかり緊張が走る。

校門を出てどれくらい経っただろうか。

いや、もしかしたら数十メートルしか歩いていないかもしれない。

日常会話が出てこないってことはそれなりの要件なんだろう。

それからしばらく無言で歩き続けていると、海都は話した。


「なあ輝、お前は今後どうしたい?」

「今後ってのは?」

「いや、濁しすぎたな。 輝はもっとバスケで上に行きたいと。 頑張ろうと思ってるか? 」

その言葉は少し意外だった。いや、意外というより予想外と言うべきか。

「そうだな、俺も同意見。 だがまあ、俺は周りに合わせる。 流れに素直に従うよ 」

「それはお前の本心か? 」


どうも海都が何を言いたいのかよく分からない。

こういった空気は本当に苦手で、少しイライラしてきた。


「本心かと言われたら……まあそうなのかもな。

俺はただ『やる』ことに意味があると思うし。周りがどうしようが、僕はそれに付いていくのが一番ベストだと思ってるよ 」

「…………ふざけるなよ! 」

俺が言った後、少し空けてから海都は声を荒らげた。

「……いや、悪い。忘れてくれ。それじゃ、俺はこっちだから 」

「あ、ああ。それじゃまた 」


僕達はそれぞれ帰路へ向かった。

海都は何か追い詰められているのだろうか。

少なくとも、意味もなく声を荒らげるような奴ではないから少しチームメイトとして心配だ。

(まあ、明日には普段通りになっているだろう )

そして僕は家への道のりを歩いていった。

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