無色のパラノイア第11幕〜What color is your soul?〜その2
さてと、一体どうしたものか……。
西校舎といってもこの学校は他の私立高校とは比べ物にならないレベルで広い。
朝の部活動の時間ということで人はちらほら見える。
流石に今の状況で仕掛けてくるとは思えない。
私はスマートフォンを取り出し、見るふりをしてカメラ機能を起動。自撮り設定にしてさり気なく後ろを確認してみる。
およそ50メートル後ろに少しだけ体を出して廊下の隅の方に隠れている。
本当に私をその程度で殺せると思っているのだろうか。
だとしてもどんな能力を持っているのか分からない以上、正面から仕掛けるわけにはいかない。
ひとまず、知り合いのところへ行こう。
私は三階で活動しているであろう演劇部に向かうことにした……。
階段を登りそのまま3階へ登った。
一応後ろを追っかけて音を立てるようなことはしていない。念の為後ろに警戒しつつ演劇部部室に向かう。
クチナシの香りが僅かに香る。
私はあまり花には詳しくはないけれど、なぜクチナシという名前なのだろう。
口無しとして喋ることができない、意志を伝えられないようなイメージなのか?
昔、人の言語は同じだったけど神様の理不尽によってバラバラになったとかいう話を聞いたことがある。
そう、いつだって理不尽に塗れてる。
だからこそ、私はいつだって理不尽を回避するために最大限の努力をするつもりだしこんな世の中だ。
楽しくなけりゃ負けってものよ。
【朽無し】ってのも悪くはないね。
私は決して負ける気はないし、朽ち果てるつもりもない。散る運命なんてそんなの決まってる。
だったら朽ちる前に盛大に散ってやろうじゃないか……。
3階の廊下に出ると、何人もの人が大きな声を出しているのが分かるくらい響きわたっていた。
私が部室の前についたときにそれは止んだ。
「みんなお疲れ様! それじゃ10分休憩ね〜。」
とても澄んだ声が響き、部員であろう人たちが扉から出てきた。
私はそっと避けると、そこからショートヘアの凛々しい子が出てきた。
「お、その今も何かに襲われそうなくらいおどけた雰囲気を出してるのは花崎ちゃんじゃない!
もしかして入部する気になってくれたりした感じ!? 私、貴方には演劇に才能があると見込んでるの!!
ねぇ、どうかな?! 良いよね!! 」
「おはようございます……日暮先輩。私に才能なんて……ありませんよ。
今日は少し見学をしに来ただけで……」
「おっけーおっけー!! 私もそろそろ引退の時期だからね。それじゃ好きに見学していってー」
「はい……ありがとうございます」
そのまま少し時間を潰しながら今後の計画もとい対策を考えることにした。
私の能力は戦闘向きではない。それは重々承知しているし、価値が無いことを知らないほど無知でも無能ではないと思ってはいる。
一対一での肉弾戦になったら多少は分があるかもしれないがそこに能力の差が加わると流石に難しい。
取り敢えず、情報を集めつつ守りを固めようか。
考えてる間に十数分が経過し、端で待機している部長の肩に少し突付いて一度教室に戻る意を伝え部室を後にした。
(さてと……)
ガラスや不審な音が無いかを確認しながら階段を降りてゆく。
どうやら近くにはいないようだ。
しかし、きっと今日私は狙われるだろう。
私自ら手を下すことは殆どないが、相手の勝利に満ちた顔をどう陥れてやろうかと想像した途端、隠しきれないくらいの興奮が胸のそこから湧いてきた。
きっと普段とはかけ離れた雰囲気を身に纏っていることだろう。
私は西校舎の扉を開け、どう罠にはめるかを考えながら本校舎への道を進んでいた。
その時、目の前に一人の女子生徒がいることに気が付いた。
(あれは確か……櫻井って参加者だっけか)
彼女は戦闘型ではない。怯えている様子から戦闘になる可能性は低そうだ。
ここは邪魔される前に少し釘を刺しておくか。
私は少し俯きながらそのまま近づく。
そう、殺気を。まるでモンスターが如くの不気味さを醸し出すイメージ。
すると彼女は右手を腰の後ろに回した。
きっと刃物か何かだろう。ここが正念場だ。
彼女との距離が3メートル。
私は立ち止まり、最大の笑みを持ってこう話しかけた。
君には興味はない。まるで肉食動物が餌となる動物に慈悲深く逃がすように。
「安心して櫻井さん。そんなに警戒しなくても殺す予定はないよ 」
そして私は彼女を通り過ぎていく。
しかし、私は見てしまった。彼女の瞳の中に安堵とは別の使命感や恐怖といった色を。
(これは少し様子見……だな。さて、どうなるのか楽しみだよ)
私の物語はもう既に終わっているのかもしれない。
私の魂。心の色はとてつもなく黒に近い紫。
淡い光も宿しているけれど、欲望の。生まれ持っての性には逆らう事はできないのだから……
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