無色のパラノイア第10幕〜What color is your soul?〜その1
世の中は思っているより単純なんだよ。
なんでここまで俺ばかりこんな目に……だとか
私はこれだけ頑張ってるのになんで認めてくれないの?! とかさ。
見ていて本当に滑稽だと思う。難しく考えてるくせに目先のことにしか頭にないってさ、それってとても……。
そう、例えるならば動物園と同じだ。
動物がいて、それを飼育する飼育員。さらに動物園を運営するためのスポンサーがいたり。
勿論客も然りだ。
本当に上手く回ってると思う。
自分が飼われているとも知らずに、そのイキった醜さを堂々と晒している。
私はこの例えだと飼育員。
餌を持ってきて檻の中に放り、その姿で客を楽しませる。
ただ少し違うのは、檻に餌を放る姿を見られてはいけないということ。
客に見られたら【可哀そう】と言って喚き立て襲ってきやがるんだ。
お前らも同類だろうに……。
でも私は【飼育員】を辞められない。
餌を投入して動物に食わせる。餌からしたらまるで酒池肉林。
怯える姿を見ながら動物は餌をいたぶり、食い散らかす。
でも動物は自分が飼われていることに気付かず、私という飼い主に始末されてしまう……。
誰が飼い主かも分からずによ……。
私はそれが……とてもとてもトテモトテモ……最ッ高なんだよなぁ!!!
そのためには私はなんだってやってやる。
そう、これこそが私の私による私のためだけの物語ってやつだ。
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「あ、花崎さんおはよっ♪ 今日早いんだね」
「あっ……うん! ちょっとやることがあってね……。 部活……頑張って! 」
私に話しかけてきたのはクラスメイトの一人。
バスケ部でかなり人望が厚い。付き合ってると、とても良い情報が手に入る。
私、花崎楓は常に仮面を何枚も着けて生きてきた。
それが最も生きていく上で最適だと思っているから。その一言だけだ。
私の趣味。それは神もひくようなとても醜いもの。
【決して自分の手を汚さずに他人を陥れ、その姿を観察すること】
な? こんなのが趣味なんて人間としておかしいレベルだ。
でも、過去にあの。天才が、地を知らない鳥が地面に叩き落とされた挙句川に自ら身を投げたあいつを見たときから私は……。
まあ記憶は曖昧でそいつが誰だったかすら覚えてないがな。あのときのことは何となくだが魂に刻まれているような感覚だ。
それはさておき、昨日は本当に殺人が起こり1ゲーム目が終わった。
そこで一つ私からネタバレをすることにする。
いや、察しのいい人なら今までの話で理解している人もいるかもしれない。
……昨日の殺人を裏で根回ししたのは【私】なんだよな!
私の能力は本当に私の生き様を。思想を体現している。
【参加者以外の人の意思を誘導する】という何とも気色悪い能力だ。
この力を使って、最初の被害者に下剤入りのドリンクを渡させた。
犯人には計画書を渡した。殺人方法から退路までな。普通は信用しない、推理システムがあるからな。【普通】は。
私は自分のコネクションで犯人こと鮫島には、死にかけているペットの犬がいたらしい。
病気でもう歳というのもあって鮫島は急いでいたんだ。そこで一本の糸を私は垂らしてあげたってわけ。
次に荒北の【サイコメトリー】は始まるまでの間、あいつは能力を強化するために街中や学校で何回も使っていて、相方も横でネタバレをするときがあった。
ルールで一般人に能力を使っていると【認識】されなければいいので人目さえ気にすればペナルティを喰らう可能性は低い。
まあ、能力を強化したらあいつの能力は脅威だが、無闇に使いすぎるのは良くない。私のように参加者の情報を集めているやつだっていただろうからな。
最後に【サイコメトリー】を私の能力で錯乱させたってわけ。
【死体】は参加者じゃないからね。【サイコメトリー】っていうのはその人の精神や魂といったものを測るような行為。
私の能力は精神といったものに直接関与するからそこは相性といったところだろう。
そう、死んでたって人は人だし。
まあ知られても私にはなんの影響もないから失敗しても良かったけどな。
正直、あの瀬戸とか言う女が消えてくれて良かった。【私】という本質をあいつなら見抜いてもおかしくないしな。
さて、なぜここでネタばらしをしたのかというとこれといって理由はない。
敢えて言うとしたらここで【私】という概念を説明しなければ、これから私のやることに理解すらできないだろうという珍しい私なりの配慮ってやつさ。
まあその前に、私は今狙われている。
朝、家を出てからずっとだ。後ろを尾行してきている。
男で身長は170ないくらいで私とほとんど同じ。
眼鏡をかけていて太っており、雰囲気はねばっとしている。名前は確か築城といったか。
生理的に受け付けない、気持ち悪そうなやつだ。
私は素を表に出すことは滅多に無い。いつもの気弱でおどけている【花崎楓】を演じ続ける。
一対一なら負ける気はしないが、能力を使われたらわからない。あいつがどんな能力を持っているのかも分からないんじゃ攻めるのは危険だ。
いや、一度仕掛けてみるのも良いかもしれないな……。
そして私は文化部や吹部がよく使っている西校舎に足を運ぶことにした。
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