ハングオン!
あれはうだるような暑さの日だった
龍一・ぜんちゃ・オム・二功は校長室に呼び出された。
「何時間待たせるんだ、早く帰りたいのに」
「帰って妹のご飯作らないと」
「自宅の警備しないと」
「生徒会に行かなきゃいけないのに」
ひとりひとりが思い思いのことを口にしていたら、扉が開き、校長と見慣れぬ男が四人入ってきた。
「おまたせしたね、紹介します、HONDA・KAWASAKI・YAMAHA・SUZUKIの社長の皆さんです」
ガタン!
「は、初めまして!マシン科の川下龍一です」
「初めまして!エレクトロニクス科の佐藤ぜんちゃです。」
「は、は、初めましてエレクトロニクチュのオックスフォード・ムネナリです」
「生徒会副会長の池田二功です、よろしくお願いします」
オムだけ噛んだ
「時間も押してるし、早速本題に入ろう。実はこの春からこの高校では新しくバイク科が新設される、そこでテストとして、君たち四人に編入してもらって、バイク科の安全性を証明して欲しいんだ。」
校長がゆっくりと話し出した。HONDAの社長が龍一に寄って言って握手を求めた。
「川下龍一くん、噂は聞いてるよ、うちのバイクが世界で一番かっこいいってみんなに言っているんだって?」
「はい!HONDAのバイクに恋をして早5年、未だ恋心は揺らぎません!」
「そこで君にお願いがあるんだ」
「はい!なんでしょう?」
「ぜひ、HONDAと契約をしてくれ、バイクを1台差し上げて、年収は12億でどうかな?」
「もちろん、お受け致します!よろしくお願いします!」
即答だった。
無論龍一は無類のHONDA好きだから断る理由など無かった。その他のメンバーもバイク科の編入を認め、明日からバイクで通学することになった。高校生だから普通は大型は運転できないのだが、内閣総理大臣の承認によりこの4人は特別に大型を運転することが出来るのだ。特に龍一はレーサーとしてもデビューすることが決まり公道でも常時300㌔のスピードを出すことができる。それぞれメーカーに要求したマシンは
HONDA CBR1000RR SP
KAWASAKI ZXー10R
YAMAHA YZFーR1
SUZUKI GSXーR1000
新学期からいきなりクラスメイトが別のクラスに編入して、それもバイク通学しているから元々のクラスメイトは混乱が止まらない。
龍一はマシン科の元クラスメイトに挨拶に行った。
「今日はお前らに話があるって奴が来てる、入れ」
龍一は堂々と教室に入った。オレンジ色のレーシングスーツを着ているため、かなり目立つ。
「今日は皆さんに大切な話があってこの時間を設けてもらいました。この姿を見てご想像がつくと思いますが、私は昨日より、バイク科に編入し、HONDA専属のレーサーとしてデビューすることになりました。」
教室がざわついていた。エレクトロニクス科とインフォメーション科でも同じ反応だったようだ。だがぜんちゃとオムと二功はレーサーではないため、さほど盛り上がりはしなかった。
「おい、川下、レーサーったって学校には来るんだよな?」
クラスメイトから質問の嵐だ
「レースは休日しかでないから学校には毎日くるよ。」
「給料とかでるの?」
「年収12億」
その時、LINEが鳴った
「おい、誰だ、今のうちに出しとけよ」
「あ、先生俺っす」
「この学校の校則知ってんのか?」
いつものごとく顔が近い
「バイク科は携帯持ち込みOKなんすよ」
「アホ、ボケェ、」
相変わらず小学生みたいな言動しかできない担任だなあ、と思いながら、クラスメイトの質問に答えていた。
「バイクで学校来るんか?」
「もちろん、俺の相棒、CBRでくるよ」
「はい、終わり。川下は今から実習があるからこれで終わりね」
「ちょっと、待ってください」
龍一は教室の外に出て、置いてあったCBRをみんなに見せた。
「これが俺の相棒だ。1年経ったらタンデムできるから、乗りたいやつは言ってくれ。基本暇だからいつでも大丈夫だ」
そう言うと、キーをさしてエンジンをかけた。
「川下……何する気だ?」
「これで失礼します、今までお世話になりました、先生」
リアタイヤから白煙を上げて教室を飛び出して行った。
「タイヤ痕どうすんだ!」
龍一はそのまま走り去った。
正門前に集合した四人は実習の打ち合わせをしている。だが、基本自由主義のバイク科の打ち合わせは何方かと言えば、食べ物のことばかりだ。それどころか龍一以外のバイクにはクラスメイトの寄せ書きが沢山書かれていた。龍一はバイクの改造、ペイントが大っ嫌いだからそういうことは全て断ったのだ。
「お前らそれで走る気か?」
「しょうがないだろ、クラスメイトが勝手に書き出したんだから」
「インフォメーション科に至っては痛バイクになってんじゃねーか」
「これはマジで恥ずい、走ってるだけで捕まりそう、何だっけ……えーと」
「公然わいせつ陳列罪だ。」
「そうそう、どうにかして」
「わかった」
龍一は自分のガレージに入っていった、そして、雑巾とビンを持って出てきた。
「これで拭けば1発。ついでにSUZUKIのロゴも消しといてやるよ」
「ロゴは消すなよ!てゆうかそれはなんだ?」
「純度100%のアルコール」
「なんでそんなもの持ってんだよ」
「HONDA厨の俺がバイクの汚れを落とすために、金を惜しむことなく使うのは当然のことなんだよハハハハハ!」
「出たよ、HONDA厨、こんな奴がよくレーサーなんて出来るよな」
「レーサーは関係ないだろぜんちゃ、12億レーサーだぞ!」
なんだかんだ言いながら、3人のバイクを磨いていく。ものの5分で綺麗なバイクに戻った。
「そろそろ行こうか」
「ちょっと待って、ぜんちゃ」
龍一が呼び戻した。
「なんだ?」
「タイヤ変えてくる。レーシングタイヤにしてくる」
「なんでや、そのままでいいだろ。」
「すぐ終わるさ」
五分後に戻ってきた。ちなみに龍一のガレージには予備カウルが15セット、タイヤが60本常備されている。
「今日は岡山国際サーキットに行こう、龍一のサーキット走行見たいし」
「いいぜ、早速出発だ!」
バイクのエンジンをふかし、ロケットスタートで飛び出して行った。龍一たちが出発してから10分くらい経っただろうか、学校にDUCATI パニガーレに乗った金髪の美少女が校長室に入っていった。
「はい、どなたでしょう?」
校長が校長室のドアを開けた。
「Voglio trasferire ad una classe moto di questa scuola」
「???どちら様ですか?」
「あ、すみません、申し遅れました私イタリアから来ました、セリエオロ・デュークです。」
まさかの日本語ペラペライタリア人に校長も状況が理解できず、目を真ん丸にしてぱちくりしていた。応援の先生達が集まって本題に入ることができた。
「で、今日はどんなご要件で?」
「私をバイク科に入れて欲しいのですけど」
「無理です」
「何でですか!はるか遠いイタリアからやって来たのにそれはあんまりだと思います!」
「いいですか?このバイク科に入るためには内閣総理大臣の承認が必要なんです……なんですかそれ?」
セリエオロは校長の顔の目の前に一枚の紙を突き出した。
「見てわからない?日本の内閣総理大臣の許可証、私は12億レーサー、リュウイチ・カワシモに勝負を挑む為に日本にやって来たんだ!さあ、リュウイチはどこだ!」
「まあまあ、落ち着いて。事情は分かりました、あなたの編入を認めましょう。ですが今、バイク科の生徒は実習に出ています。帰って来るまで待ちますか?」
「そうですか、分かりました、待ちます。」
その頃龍一達はサーキットに向けて高速道路を爆走していた。もちろん、制限速度は優に超えている、そこに突然龍一の携帯が鳴った。
「はい、川下ですけんど」
「校長です。突然なんだけど、今から戻って来てくれないかな?」
「はあ、なぜ突然戻れなんですか?」
「急遽、合わせたい人物が来てるんだ」
「はぁー、わかりましたよ、、切りますね。」
「どした?龍一」
「帰るぞ」
「はあ?急にどうした?」
「よくわからん、じゃがとても嫌な予感がする」
そう言うと、アクセルターンで元来た道を帰って行った。
「しゃーねーな、後で龍一になんか奢って貰おうぜ二功、オム!」
「「そうだな!」」
学校では大変な騒ぎになっていた。絶世の美女がバイクに跨ったまんま寝ているのだ、驚異のバランス感覚で微動だにしない。龍一が正門から入ってきた。
「川下くん、あの人と知り合いなのかい?」
龍一は置いてあるDUCATIを見ていた。
「嫌な予感がします」
「嫌な予感?」
「はい、あのDUCATIパニガーレは俺のデビュー戦で俺とトップ争いをしたマシンにそっくりなんですよ」
「ふぁーーぁぁ」
どうやら眠りから覚めたようだ。
「は!、あのCBRは!」
「やべ!」
「リュウイチ!ひさしぶりね!」
「やっぱり、セリエだぁー!」
ギャラリーがざわついてきた。無理もないだろう、絶世の美女が目の前で龍一と楽しそうに喋っているのだ、女子は尊敬の眼差し、男子は嫉妬の眼差しが龍一に突き刺さった。そこにぜんちゃ、オム、二功が戻ってきた。
「おい、誰だよあの美少女は?」
「じゃあ、紹介するわ、この娘はDUCATIレーシングのオーナーの一人娘のセリエオロ・デュークだ、この間参戦したスペインGPで俺とトップ争いをしたんだ」
「そんなことよりも、私とレースしなさい!今すぐに」
「断る!」
「てゆうかなんで二人はそんなに仲良いんだ?」
「これが仲良いと言えるのか?」
「パパから手紙預かってるの!」
「手紙?やれやれ、また悪口か?」
セリエオロから手紙を受け取って目を通した。
〜偉大なレーサー、Mr.リュウイチ、娘を頼む。あとは頼みます!〜
「あのクソ野郎!」
龍一は手紙をぶん投げた。
「と、言うわけで今日からよろしくお願いします!」
セリエオロは流暢な日本語で学校のみんなに挨拶をした。ギャラリーからは大歓声が上がったが、セリエオロが後ろから龍一に抱きついてしまったから、男子たちが爆発してしまった。
「川下!てめぇだけいい思いしやがって!許さねぇぞ!」
「やって見やがれ!」
そう言うとバイクに駆け寄ってエンジンをかけた。
「轢かれたくなかったら大人しく教室に戻りな」
エンジンをふかしたら全員が思い思いに逃げていった。
「なんやこれ、ラブコメになっちまったな」
「お前なぁ、俺の気持ちも考えろよ。セリエの親父に娘をよろしくって言われたんだそ、俺はHONDA、あいつはDUCATI、下手したら減給されるかもしれないんだぞ!」
「乙」
「乙」
「乙」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛めんどくさ!」
龍一は電話をかけだした。
「龍一です、今日はちょっとお話があるんですけど、はい、それがですね、DUCATIレーシングのご令嬢が俺らのシェアハウスに入ることになったんですけど、大丈夫ですかね?はい、あ、そうですか分かりました失礼致します」
「どうだった?」
セリエオロが満面の笑みで聞いてきた。龍一でなければイチコロのエンジェルスマイルだ。
「大丈夫なんだって。」
「やった!」
「これからもよろしくね!」
龍一は無言でガレージに戻った。けどバイク忘れてたこと思い出してまた出てきた。そのままシェアハウスの自分の部屋にこもってしまって、一日出てこなかった。
突然、校長が訪ねてきた。
「なんすか、校長先生」
「今度のマラソン大会中止になったから」
「あ、そーなんすか、………まさかとは思いますが、その代わりにバイクレースするとか言わないでくださいよ、全校生徒参加とは言わないでくださいよ」
「大当たりだよ、そこで君たち5人に生徒のバイク講習をしてほしいんだけど……」
「最初からマニュアルで運転させようとするからですよ………HONDAのNC700Sでいいと思いますよ、あれ、オートマチックですから安全ですよ。」
「その手があったか、じゃあ、明後日本番だから、商品も豪華だから絶対に参加してね、参加しないと単位出さないから」
「卑怯な………」
それからというものの龍一はガレージに篭ってCBRのレースチューンをしていると、あっという間にレース本番になった。
「今日の商品ってめっちゃ豪華なんだって?」
「なんでも、好きなものを頼めるらしいぜ」
〜これが狙いか、これでセリエオロが勝てばあいつの思いのままにされる、、他の科のやつも勝つ気満々じゃねえか、格の違いを見せてやるか~
(さあ、そろそろスタートシグナルが始まります!)
びー
全車一斉にスタートを切った。もちろんポールポジションにはバイク科の5人、公道4周の耐久レースだ。
現在トップはぜんちゃ、直線でぜんちゃのNinja ZXー10Rに勝てるマシンはいない。
「どうした?龍一!12億プレーヤーの名が廃れるぞ!」
「うるせえ、黙ってろ」
「リュウイチかっこいい!」
(さあ間もなく第1コーナーに入ります!)
龍一はハングオンで世界GPを制した奴だ、減速して、車体を傾ける。ぜんちゃと二功とオムはハングオンできないので順位が変動し、1位龍一、2位セリエオロとなった。
「まだ、悪魔のハングオンは健在だねぇ!」
「悪魔って言うなよ、てゆうかこのヘッドセットいらねえ、誰が付けたんだよ!」
「ぜんちゃが昨日付けてたよ」
「俺がセンターアップマフラーに変えてたあの時か、っと、さすがNinja、直線速いな、追いつかれる」
「悪魔のハングオンってなに?」
「聞きたい?ぜんちゃ」
「うん聞きたい」
「絶対にありえないバンク角なのに絶対転倒しないから悪魔のハングオンって言われてるんだ。」
「やっぱり悪魔だったのか」
「やっぱり、ってどういうことだよ、オム、転すぞ!」
「にしし」
(さあ間もなくシケインに入ります)
龍一はシフトを上げて加速する、HONDAのスーパースポーツバイクCBR1000RRSPが唸りを上げる、300㌔のまま、シケインに突入、ホームストレートに戻ってくる。
「タイヤが温まってきた、そろそろ行こうかCBR」
「何言ってんだか」
龍一はこれまでとは比べ物にならないくらいのスピードで疾走していく、龍一の勢いを誰にも止められることなくぶっちぎりでチェッカーを受けた。
オムと二功がゴールをした時には龍一はもう帰宅していた。
龍一はレースの時以外はピットクルーを雇わない。なので公道仕様にするために早く帰ったのだ。もっとも、セリエオロが来なければセンターアップマフラーにする必要もなかったのだが、かつての戦友の日本帰化だから仕方ないと、龍一の心の広さが改めてわかったバイク科一同であった。
龍一は優勝商品の景品で自宅ガレージに超高性能シャシーダイナモを設置した。
「シャシダイ置くヤツ初めて見たわ」
二功がやれやれという感じで話しかける。だが、龍一の耳には届かず、ジャッキでリアタイヤを持ち上げているCBRを持ってきてシャシダイに乗せた。
「多分、新しいマフラーとスプロケットを試したいんだと思うぜ。昨日、いつになく上機嫌だったからな」
ぜんちゃがモンスターエナジーを片手にガレージに入ってきた。龍一に買ってもらった緑のレーシングスーツを着ているが、新品故に少し動きづらそうだった。
「ね、ねえ、」
オムが死にそうな声をしてやってきた。
「どうした?事故ったか?」
「俺のバイクが……」
「壊れたんか?」
「黄色になってるんだけど、」
オムの乗ってきたバイクはオムライスのごとく真っ黄色だった。
「龍一だな」
「やっぱり?」
「うん、俺」
「もぉおおおおおおおおお!」
「水性だから大丈夫、あと、シャシダイ動かすからガレージから出たほうがええよ」
CBRが唸りを上げた。ガレージに反響して凄まじい爆音となった。
5分もしないうちに終わってしまった。
「リュウイチ!来たよー!」
元気よくセリエオロがやって来た。イタリア人には日本のジメジメした暑さは耐え切れないらしく、ショートパンツにノースリーブと大分露出度の高い格好だった。龍一はそんなセリエオロのことなど気にもせず、フロントタイヤとリアタイヤを変えていた。
「リュウイチ、暑い〜、、アイス無いの?」
龍一は財布から千円をセリエオロに渡した。
「俺、あずきバーで」
「私が買いに行くのネ……」
「みんなの分も買ってきな」
「はーい♥」
龍一は背筋にゾクゾクする感覚を覚えたが、気にせずタイヤ交換をしていた。それもそのはず、明後日からレースに参戦するのだ。学校があるから休日だけの参加だが、プロ転向から初の公式レースだから気合いが入るのも無理もない、龍一には守らないといけない約束があるんだ。
龍一には幼なじみがいた。
龍一がバイクに興味をもったのもその幼なじみの影響でもあるからだ。幼なじみがバイクに乗っている姿を見て、強い憧れを抱いた。その幼なじみの名前は木下みとなといい、近所では有名な美少女だった。みとなはとても速かった。龍一はみとなに追いつこうと必死になって、バイクに乗り続けた。そしてみとなと約束をした。
「龍一はさ、大きくなったら何になりたいの?」
「俺は、億越えレーサーになりたいな。」
「なにそれ、おかしな人」
「いいじゃんかよ、俺の夢なんだから」
「じゃあ、勝負しようよ」
「勝負?」
「どっちがたくさんトロフィーをもらえるか」
「お、いいねぇじゃあ、約束な」
「約束?」
「勝負がつく前に事故をしない、死んだら許さねぇぞ」
「それはこっちのセリフよ!いいわ!約束ね」
2人は固く指切りをして、帰宅した。
その3日後だった。みとなは死んだ。両親と観戦に行った世界グランプリでクラッシュに巻き込まれたんだ。龍一はニュースでみとなの死を知らされた。
「みとなの嘘つき!俺とレースに出るんじゃないのかよ!」
そのまま崩れ落ちてしまった。
みとなが龍一の誕生日にプレゼントしたリアサスペンションを見て、一筋の涙が頬を伝った。
みとなが死んで数年たったある日、みとなの両親が龍一を訪ねてきた。
「お久しぶりです、元気でしたか?龍一くん」
「はい、おばさん。」
「今日は、あなたに差し上げたいものがあるのでお伺いしました」
「俺に?なんですか?」
みとなの父親が大きなダンボールを抱えて龍一の前に置いた。
「みとながね、死ぬ前に言っていたんだよ、私が死んだらバイクを解体してくれって、だけどもったいないから、龍一くんにあげようと思ってね。」
龍一は大きなダンボールを開けた。
「フロントサスペンション、メーター、ディスクブレーキ、全部みとなのバイクに装備されてた……」
「龍一くんが使ってくれたらあの子も喜ぶと思うんよ、あの子はあなたに期待してると私達は信じてる。」
「ちょっと待っててください」
そう言うと龍一は部屋に戻っていった。数分後に階段を降りる音が聞こえた。
「これを、」
「写真?」
「はい、みとなと撮った最後の写真です。パーツのお礼です、みとなに約束は守るとお伝えください」
「ありがとう、伝えておくよ」
龍一が今乗っているCBRのフロントサスペンション、リアサスペンション、メーター、ブレーキはみとなの形見が使われている。約束を守るという大きな使命感に支配されているが、龍一がいつもと同じ生活をしているため、誰も気にすることはなくなった。
気づいたら龍一は寝ていた。
「リュウイチ!起きたね、さあ、私と遊ぼう!」
「寝起きなんですけど」
昨日から一睡もしていない龍一はバイクの上で寝落ちしてしまっていた。二功や、オムのように徹夜慣れしてしていれば問題ないのだが、規則正しい生活をしている龍一にとっては徹夜は地獄だった。
「ねえ、みとなって誰?」
「なんで知ってんだよ」
「えへへ、寝言、ひどかったもん」
「うわ、マジか」
みとなが幼なじみであることを明かし、守らないといけない約束のことを全て話したら、セリエオロは号泣していた。
「ぞんな!がわいぞうに!」
「落ち着け、もう何年も前の話だ」
「だからリュウイチのバイクは古いパーツが使われているのね、納得!」
「てなわけで、そろそろ帰るぞ。明日は早いからな」
「明日ってなんかあったっけ?」
「レースだよ!レース!忘れんな!それでもDUCATIレーシングのトップレーサーなのかよ!」
「そーだったわね、それじゃあ、帰りましょ」
夕暮れの中、2台のスーパースポーツバイクが風を切って走り去っていった。
初めまして、ウイングと申します。
初めて小説を書いているため、何かと至らない事がございますが日々精進を重ねるのでこれからも末永くよろしくお願いします。
この作品は私がバイクの事を愛していて、こんな学校生活があったらいいなあ、と思いながら執筆しました。あくまでも小説の中の話ですので実際の運転は安全運転を心がけて楽しくバイクライフを送りましよう。