エピローグ
気付くと私は何もない真っ白な空間にいた。
私は...死んじゃったんだよね。
何もないただただ真っ白な空間が地平まで続く場所で私は座り込む。
ここ...何処なんだろう?
<ごめんごめん。待たせちゃったよねエミリア!>
急に聞いたこともない声が響き渡り、私は立ち上がる。
え~と、誰ですか?私を知っているのですか?
<うん。僕は君を知っているよ。...本当のエリスの名付け親は僕だしね。>
...エリスの本当の名付け親?
エリスの名前を付けた人って...もしかして!
フォルティーナの知り合いの方でエリスに祝福を授けてくれた方ですか?
<そうそう。その通りだよ。...君は僕の期待以上に頑張ってくれたから二つ、ご褒美をあげるよ!>
そう声が聞こえ、懐かしい人が二人私の前に現れた。
会いたくても会えないはずの二人が...
「お兄様!!旦那様!!どうして二人が...二人とも...もう旅立ってしまった筈なのに!!」
私の眼前に若かった頃のエリュセルお兄様と新婚だった頃くらいの姿のワイナール殿下が少しばつの悪そうな表情で私を眺めている。
「うーん、何というかまあ一回死んでるんだけどね。」
「あれだよ。神様の仕事の手伝いをさせられてるって言うか...」
お兄様と旦那様が苦笑を浮かべながらお互いの顔を見る。
この世界の事をお兄様と旦那様から説明を受ける。
ここは私達が生きていた世界をコントロールしている場所...いわゆる天国のような場所らしい。
ここは慢性的な人員不足でフォルティーナに仕えていた人はみんなここで再雇用され、元気...と言って良いかはわからないが神様に仕えているとの事だ。
「...大体わかったけど...何で二人とも若返ってるの?...私だけ歳を取ってるの...恥ずかしいな。」
そう言う私に二人が目をぱちくりと瞬き、お兄様が笑いながら「何を言ってるんだエミリア。...お前も若くなってるよ。」と言い旦那様も懐かしい笑顔を浮かべながら頷く。
そう言われ自分の手足を見ると...シワシワだった手足が張りのある肌に戻っている。
顔を恐る恐る触ってもシワは無いようだ。
「...あれ?本当だ。シワが無くなってる。」
それから昔話を交えながらこの場所の事を教えてくれた。
ここは神様のいる所の入り口であり出口らしい。
お兄様や旦那様の様な元人間はここに普段は立ち入れないが私がここに来ると言うことで特別に許されたのだ。
と二人から教えてもらった。
「二人が神様の言っていたご褒美?」
私がそう言うと二人がゆっくりと頭を左右に振る。
<それは僕から説明するよ。エリュセルとワイナールは君への一つ目のご褒美。今回を逃すと再会できるのがかな~り先になっちゃうと思うからね。>
私は神様の言葉に首を傾げる。
再開が先になるってどういう事だろう?
<二つ目はね...君がずっと心の底で望んでいた事...それを叶えてあげようと思ってね。あっ、もう変更は効かないから強制だよ。じゃあ時間も無いし頑張ってね~!>
神様がそう言うと私の身体の中心から鈍い光が見え始める。
え、っえ!?何これ!?
私が慌てふためいているとお兄様と旦那様はお互いの顔を見合った後に頷き「エミリア!お前は僕の妹だよ!...次に会えるのを楽しみに待ってるよ!」「エミリア!君は私の奥さんだ!...だけど私に気にせず自由に楽しんで欲しい!そんな君を私は愛したのだから。次の君の旦那様と...一緒にここで酒を飲みたいよ!」と二人とも口早に言って来る。
身体が軽くなったと思った瞬間、周囲の景色が変わり長年住んだクラルフェラン共和国のお城が見える。
...なんだか...とても懐かしい気がするね。
そこからまるで流星のように速い速度で景色が流れて今度は沢山の人が幸せそうな顔で行き交うファメルテウス民主国の城下町が見え、私は嬉しい気持ちで一杯になる。
みんな生き生きとしてる!フォルティーナ、凄いね!!
そして眼前に広がる深緑に包まれたガレア高地を通り過ぎ....私は光となって意識が途絶えた。
...柔らかく抱かれるているような感覚がある。
ゆっくりと瞳を開くと長いチェリーブロンドの髪を束ねている優しげな表情のフォルティーナの顔が私の目の前にある。
「おうおう!元気なガキだぜ!!」
慈しむようにフォルティーナが私の顎を触ってくれる。
「産まれましたか!!」
魔王様が満面の笑みで私を覗き込んだ後にフォルティーナと視線を合わせてニコリとする。
「...この子の名前は...フォルティーナ、貴女がつけて下さい。」
フォルティーナの視線が一瞬天井を向き、そして私の瞳を見つめながら口を開いた。
「...こいつは名は...エミリア...エミリアでどうだ?クリス?」
「...良いのではないでしょうか。いい子に育ちますね!きっと!!」
私...私、本当に本当のフォルティーナ様の子供になれたんだ!!
前世で最後まで言えなかった事...いくら願っても叶うはずの無かった事が神様のご褒美で叶うことが出来たのだ。
うれしさのあまり私の瞳から涙が一筋流れ出る。
その私の様子を見たフォルティーナが眉を下げ、きょとんとしたような表情で「....エミリアは嫌なんか?じゃあ花子はどうよ?」ととんでもないことを言い出した。
....フォルティーナ....。
私は花子だけは阻止しようとギャン泣きでフォルティーナに応戦する事にした。
口は悪いけれど、まるで陽だまりの様に優しく包んでくれるフォルティーナに出会えたことを...私は神様に感謝します...。
~fin~




