究極駆動 (アルティメット・ドライブ)
くわぁ!この魔神ヴィンザードとか言うゴキ野郎、マジでうぜえ!!
魔神ヴィンザードからの攻撃自体は俺に通らないのだがこっちの攻撃も飛び回りて交わしやがるからなかなか当たらねえ!
当たったと思ったら即完全回復しやがるしよー、マジでイラつくぜ。
しかもこのクソボケとどれぐらいの時間やり合ってんだ?自動回復でも間に合わなくてかなりMPが減ってきてるぞ。
リーン・カルナシオン等の大規模範囲攻撃を連発で当てても直ぐに回復してくる魔神ヴィンザードのしつこさに俺の中に苛立ちと焦りが生まれて来ていた。
「クカカ!リヴァイアサンよ!!我の動きに着いて来れない様だな!....だいぶMPを使わせた筈だ...そろそろ本気にならせて貰うぞ!!!」
ヴィンザードが手を上にかざすと、周囲に数多くのデーモンが再び現れ俺の巨体に纏わり着いて来てHPとMPを黒い煙を出しながら奪い始める。
こんのヤロウ共が!!
身を震わせてデーモン達を振り落とすと水の刃であるハイドラシュレッダーで周囲にうごめいているデーモンを頭を動かして範囲的にぶった切っていると上空からヴィンザードの声が響く。
「リヴァイアサンよ!!確かにお前は我らを相手に良く戦った!だがここが陸上で残念であったな。海ならこちらが敗北していただろう!...そろそろ終わりの時間だ。」
声のする上空を見上げると片手を俺に向け黒い塊を作り出しているらしい姿が見え本能的にその黒い塊を避けなければヤバい!と感じ焦って動こうとするが...まあいつもの通りあまり自由に動けない。
「魂まで喰い尽くせ!!ソウルクラッシュ・サクリファイス!」
小さな黒い塊が俺に向け放たれ、避けれないと悟った俺は何重にも水幕結界を張りやり過ごそうとする。
俺の結界に黒い塊がぶつかり一つ、また一つと結界を次々と破壊され俺に黒い塊が直撃する前に力を溜め巨大なアトミックレイを最後の結界が破られる寸前に黒い塊に向けて打ち込むと腹這いでうねうね体を動かして少しでもこの場所から離れようと足掻く。
少し離れることが出来た所であっさりと黒い塊にアトミックレイがかき消され黒い塊が地面にぶつかると同時に爆風で起きた黒い風の嵐に吹き飛ばされ地面に叩きつけられる。
ふぁぁ~!あれはやべえ!!あれをマトモに喰らったら気持ち良く逝けそうだぞ!?
くっそ!マジ腹立つぜ!!...空飛べるようになんねえかな?
傷ついた体を回復魔法で回復させながら遠い目でヴィンザードを眺め、ヤツを倒すための方法を考える。
<...飛べるように出来るけど...どうする?>
マジで!?出来るんだったらはよ言えや!
<いや、飛べるように出来るんだけどたぶんその後に君が絶対キレるから言わなかったんだよね~。>
あん!?...何だか前に同じ様な事があった気がするが...おう、取り敢えずあのクソゴキをぶっ飛ばせるように出来るんならやれや!
<文句は聞かないよ?...よし、じゃあやっちゃうよ~!!>
《究極駆動の使用の許可が承認されました。究極駆動モードを使用しますか? yes? or no?》
おっ?めちゃんこ久々だなこの姉ちゃんの声。
究極駆動モードってのがよく分かんねえがこのまんまじゃあジリ貧になっちまいそうだから使うぜ!!
《究極駆動モード、開始。リヴァイアサンの再構築と共に守護神モードから究極駆動モードに切り替わります。 nowloading......》
俺の視界がブラックアウトし、全ての五感が無くなる。
《.....再起動確認....これより究極駆動モード...始動》
体の五感が全て戻った事を確認してからゆっくりと目を開く。
「クカカカカ!愚かな....この場で進化するなど自ら弱体化させてるではないか?それとも我らを舐めているのか?」
上空の方で腕を組んで俺を見下ろすヴィンザードが不快そうに声を荒げながらさっきの黒い塊を俺に投げつけようとしている。
「あん?これはたぶん進化じゃねえぞ?レベルが下がってねえし...つうか龍モードで人間の言葉を喋れるようになってるやんけ!?」
ヴィンザードに近付く為に飛ぼうとするとバランスを崩し盛大に体が左右にぶれながら回転しつつ地面に滑り込んで周囲が土煙で囲まれた。
...くそがぁ!体の動かし方がわかんねえぞ!おい、天の声!飛び方を教えろ!
<...相変わらず君は初めてのモードの時は変な動きをする...yo..ne。>
机を叩きながら笑ってねえではよ教えろや!...やばい攻撃が来ちゃう!!あの世に召されちゃう!!!!!
<海を泳ぐ感じで空を飛べるよ。まあ究極駆動中の君なら直撃しても大丈夫だと思うけどね。>
天の声のアドバイスを聞き直ぐ様、大海を泳ぐようにうねうねと体を動かしてみるとまるでここが水中の様に推進力が出来て体が浮いた。
お?マジだ!これなら全力疾走も使えるな。
「これで終わりだ!!お前が滅びた後はこの世界を破壊してやる!」
再び黒い塊を俺に向けて放たれ、前回とは違い俺をホーミングするように飛んでくる。
ほーん、俺を追っかけて来るつう事は...上手いことやればヴィンザードにこの黒い塊をお返し出来そうだな。
ゆっくりと土煙の中から出て、追いかけてくる黒い塊との距離を着かず離れず位の速度で飛びながら上空にいるヴィンザードを目指して飛んで行く。
「なっ!?空を飛ぶ...だと!?水中型モンスターの進化から外れたのか!?」
俺が飛ぶ姿を見て焦りをみせるヴィンザードが俺から逃げるように背中を見せるがこのチャンスみすみす逃がす筈も無く距離を詰めて行く。
ヴィンザードとの距離が近くなった所で黒い塊をヴィンザードにぶつける為に一気に追い抜こうと全力疾走のスキルを発動させた。
「なっ!?」「げっ!?」
全力疾走の余りの速さに着いて行けなかった俺自身がヴィンザードを避けれずに顔面から背中に突っ込んでヴィンザードを後方の黒い塊に向かって跳ね飛ばしてしまう。
「うがぁあああああぁ!!!!」
俺から跳ね飛ばされたヴィンザードが自分が生み出した黒い塊にぶつかり、断末魔の叫びと共に盛大な爆発音が後方から鳴り響いた。
「た~まや~!!...しっかし汚ねえ花火だな!」
<....君から全力で跳ねられた上にそんな事言われてるヴィンザードがちょっと可哀想に思えてきた。>
跳ねられた奴が悪い!...と思う。
爆発による煙でヴィンザードがどの位ダメージを受けたのかわからなかったのだが、煙が晴れてくると下半身を吹き飛ばされて左腕も失った上半身だけのヴィンザードが悔しそうな表情をしているのが見えた。
「空を飛び、鱗が光り輝くプラチナ...お前の様な龍を見たことがない!」
そう言や鱗の色がピンクから変わってんな。
確かに今の俺はリヴァイアサンではねえよな...
<....うーん、完全に海モンスターからは外れちゃったよね。空を飛んでるし。実は究極駆動って最終進化種が経験値をカンストさせた時のボーナスで元々の全てのステータスを10倍に底上げするっていうのが本来の効果だったんだけど...究極駆動まで辿り着いたのは君が初めてだからついでに空も飛べるように弄ったら鱗の色も変わってるし最早リヴァイアサンではないね。>
まあ、どうでもいいや。
取り敢えずヴィンザードにトドメをさくっと刺すかな!!元の10倍ならワンパンで沈めれるだろ!
ヴィンザードを逃がさないように広範囲の結界を張り直し、リーン・カルナシオンを最大威力で使うために力を溜める。
<そうだ!言ってみたかった台詞があるからやって良い?>
あん?....勝ってにやりゃあ良いじゃねえか、どうせ俺にしか聞こえねえんだろうしよ。
<じゃあ.....俺のターン、ドロウ!!....ふっふっふ、貴様の命運も尽きたようだな!!ヴィンザード、貴様に見せてやる。俺のプライド、俺の魂を受け継ぎししもべの姿を!出でよ、プラチナム・リヴァイアス・ドラゴン!!!...ヴィンザード、貴様の見た未来とやらに、リヴァイアスは登場したか!貴様の慟哭を聞いてやろう、喰らえ!!滅びのリーン・カルナシオン!!!!!>
天の声が尊厳溢れる声で意味のわからない台詞を俺の頭の中で響かせ、毛細血管がちぎれそうな程力強くシャウトしている。
........お前...恥ずかしい奴だな。
<.....うん。早くやっちゃって。冷静に突っ込まれると死にたくなるから。>
はいはい。
「我は耐える!!耐えてみせるぞ!!!」
ヴィンザードの絶叫を後目に結界を徐々に小さくして行きヴィンザードを小さな円上の結界の中に閉じ込め、最大威力までリーン・カルナシオンをヴィンザードに向けて放とうとした時に更なる強力な力が俺に流れ込んで来て力が暴走しそうになった。
<あっ!?もしかしてやらかしちゃった?...かも>
なっ、何じゃこりゃ!?とにかくリーン・カルナシオンをヴィンザードに早くぶつけねえと自爆しそうな予感がする!!
どうにか湧き上がる力を抑えつつリーン・カルナシオンをヴィンザードへと放つと自らに忍び寄る死の恐怖に顔が歪んだヴィンザードが断末魔の叫びと共に光にのまれて行く。
「我は...我は滅びぬぞぉ!!いつの日か...お前に...この屈辱をかえ...ぐはAAaaaaaaaa!!!!!!!」
ヴィンザードの断末魔を聞きながら収束して行く光を見て俺は呟く。
「ふん!勝ったな!!...まあまあ強かったぜヴィンザード。次に逢う時は俺様の敵にまわるんじゃねえぞ!!」
リーン・カルナシオンの光が消え、ヴィンザードが消滅したのを確認した後にゆっくりと地面へと降りて行き龍人モードに戻る。
「ふう。服を着てから帰るか...って何じゃこりゃ!?髪の色が変わってんぞ!!」
亜空間ボックスから服を取り出して着替えている最中にふと視界に入った自分の髪がストロベリーブロンドからセレナの様な銀色に変化しているのに気付いたのだ。
<ああ、それね。たぶん究極駆動のせいで色が変わってるだけだと思うよ。もう通常モードに戻ってるから暫くしたら元のストロベリーブロンドに戻るんじゃないかな?>
ほーん、まあどうでもいいわ。
髪の色なんぞどうでも良いし。
《天神の名付けにより新たな称号が追加されました。 追加された称号は....神を超えし者...超越種への進化...究極駆動への解放者.....》
あん!?何か姉ちゃんが凄げえ勢いで喋り出したぞ?....お前、何やった?
<あ~、やっぱりやっちゃってたのね...。...怒らない?>
何でお前は少しビビってる声を出してんだ?少々の事じゃあキレねえから正直に言えや!!
<...実はね、さっきの恥ずかしい台詞で君の事をプラチナム・リヴァイアス・ドラゴンって呼んだでしょ?あれがどうやら名付けって事になったみたいで僕の永続バフが掛かっちゃった見たいなんだよね~。君の力が途中で増大したのはそのせい、たぶん追加された称号の効果で君にプラスされるステータスはおおよそ...100倍かな?究極駆動抜きで。>
....お前バカだろ?お前より強くなってんじゃねえのか?
<うん。究極駆動中の君にでもガチで戦うと負けるかもって思って条件を満たしてるのに教えないで見なかったことにしてたんだけど...名付けで突き抜けちゃったね。無理無理、僕でも君に勝てない!>
マジでバカだなテメエは!!いろんな奴に怒られるんじゃねえのか?
<...うん、ヤバいね!特にヴァルキリーにバレたら僕の人生詰んじゃうねって...マジでヤバい!!外の廊下から奴らの気配がする!!...僕は暫く旅に出るからまったね~!!>
おい!?逃げんなボケ!!戻ってこいやクズ!!!!!
そう頭の中で天の声に悪態をつくのだが反応が返ってこないのでマジで逃げたらしい。
あんのクソボケ!!俺を放置してどうせいつうんだよ!!
俺が天の声に対して苛立ちを隠さないでいると《.....地上の管理者...以上で終了します。》と冷静な声の姉ちゃんが全ての称号の読み上げが終わったらしくアナウンスが終了した。
...地上の管理者。
「...はあ??地上の管理者だと!?...あんのクソボケ、マジで俺に押しつける気か!!」
誰も居ないギアリス平原で虚しく俺の心の底からの叫び声だけが響き渡ったのだった。
次が最終話です。
エピローグとあわせて残り2話になります。




