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首都攻防戦3

 傷付き、地面の上で血を流しながら倒れてしまっているレスターさんを抱えると脈があることを確認した後に「レスターさん?レスターさん!?」と声を掛ける。


 声を掛けられたレスターさんは薄く目を開くが喋る力すら残っていない様で体に力が全く入っていない状態だ。


 「今すぐ回復しますからね!」


 抱えたまま回復魔法をレスターさんに掛け治療する。


 「...これは...セレナ、ありがとう。」


 レスターさんが瀕死だった筈の自分が完全に治った事に普段は表情がわかりづらい糸目を驚きの表情で見開いた後に私に礼を言ってきた。


 完全に治療出来たのを確認した後に笑顔でレスターさんに頷く。


 「その人間はヴァルキリー...お前のエインフェリアか?なかなか強かったがそれにしては脆かったぞ。」


 無表情のままの黒い陰を纏ったヨアヒムが身体をユラユラさせながら尋ねてくる。


 「エインフェリア?何ですかそれ?私はレスターさんの召喚獣ですよ?」


 「なに?...ふはは、そうか...お前の様なヴァルキリーを見たことがなかったと思っていたが...お前は産まれたばかりで自分の能力を教わってもいない未熟者か!」


 無表情のヨアヒムがカタカタと震え、私をバカにするように笑いながら言う。


 治療の終わったレスターさんを地面に置くとヨアヒムと戦うために睨みを効かせながら立ち上がる。


 「セレナ!!あのデーモンは私の追い求めてきた仇!手出し無用!!」


 レスターさんも立ち上がると私の肩に手を置き、私を制止しようとして来る。


 「なに言ってんですか!レスターさんの仇ならば私の仇でもあります!主の敵は私の敵ですよ!」


 振り返りながら返答すると背後からぞくりとする感覚があり、直ぐ様握り締めていた剣で背後をなぎ払う。


 なぎ払う剣に抵抗を感じるとカキンという鈍い音が響き私の握っている剣が根元から折れる。


 刃が折れると同時に攻撃してきたヨアヒムに光属性の魔法を撃ち込み、牽制すると黒い陰を纏ったヨアヒムは再び後ろに後退するように飛び退き距離を取った。


 「ふん!勘は良いようだな...だが未熟者のお前とその人間、二人で我を滅する事が出来るのか?我は魔神ヴィンザード様の配下の中でも最も長く仕え、最も強いのだ!未熟で武器も失ったヴァルキリーに脆い人間なぞ我に敵う筈などなかろう!」


 辺りに響き渡り威圧感を感じる魔力の籠もった言霊にレスターさんの老いた身体では耐えきれない様で「ぐっぅ!!!」と苦悶の表情を浮かべ苦しそうな声を出した。


 「武器はありますよ?そもそもこの剣は街で買った普通の剣で気に入っていたから普段持って回ってただけですから!それに...えーと、お前はヨアヒムですかね?そんなにお前から強者の纏う感覚が私にはしないのですけど...本当に強いのです?」


 フォルティーナ様やヴァランティーヌ様の側に居たせいか目の前のデーモンの纏う雰囲気が強者のものだとは思えなかった。


 特にフォルティーナ様を怒らせた時に感じる”あっこれは私、死ぬんだな”とおもわず思ってしまう自分自身から発する危険信号みたいな物が全く感じないのだ。


 「...愚かで未熟者が一端の事をほざく!我はレベル90を超えるデーモンの王なるぞ!!」


 不快そうなデーモンの声が響く中、私はデーモンのレベルの数値に驚愕する。




 レベル90!?





 「レベル90台って...雑魚じゃないですか?」


 「...貴様...その侮辱、万死に値する!!楽に死ねると思うなよ!!」


 どうやら私の言葉が逆鱗に触れた様で今まで落ち着いていたデーモンが怒りを隠すことなく怒気を全面に出しながら飛び掛かってきた。


 「来なさい!魔剣グラム!!」


 右手を天高くかざし、グラムを呼ぶと黒き光に包まれて私の目の前に表れ、表れた魔剣グラムを掴みデーモンを撃退するために構えを取る。


 爪が長く延びたヨアヒムの右腕を切り落とし、返す刃で胴をなぎ払う。


 「な!?...バカな...あり得ぬ!どうしてお前の様な未熟者が魔剣グラムを使いこなせるのだ!」


 切り落とした右腕と上半身と下半身が地面の上に血液を流しながら落ちると相変わらず無表情のままのヨアヒムが声を上擦らせながら呟いている。


 バタバタと動いている下半身に魔剣グラムを刺し、止めを刺すと下半身は灰になり風で灰は吹き飛ばされ姿形も無くなる。


 「私は確かに未熟者ですがフォルティーナ様のドーピングのお陰で私のレベル300は超えちゃってますからね~。流石にレベル90台には負けないと思いますよ?...レスターさん、トドメを刺しちゃって下さい!!」


 アストラル・ブレードを構えているレスターさんに声をかけるとレスターさんは頷き、ヨアヒムの首を切り落とした後に頭に刃を突き刺す。


 「...レベル300...我らが敵う相手では...なか...ったか....」


 それだけを言い残し、地面に残された血溜まりまで灰になり...風で空高く舞い上げられその場にはかけら一つすら残ってはいなかった。


 「セレナ...ありがとうございます。これで私は人生の目標を達せた。」


 一筋の涙がレスターさんの頬を伝わり流れ落ちている。


 「ん~、御礼はフォルティーナ様に言って下さい!グラムも私の経験値もフォルティーナ様が与えたものですから!!」


 魔剣グラムを元あった私の部屋に送った後に笑顔でレスターさんに振り返りながら答えた。

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