野良リヴァイアサンに戻れなくなった日...
オヤジとの勝負が決まってから俺は館の人間から呼ばれた兵士に取り押さえられ館の座敷牢のような所に放り込まれた。
俺が大人しく捕まった理由?
エミリアとエリュセルに手を出さないとオヤジに誓わせたからよ。
そうじゃなかったら暴れてるわいな。
やることねえから取り敢えず寝るか。
朝になり、兵士が俺を起こしに来ると服を投げ入れてきた。
これを着ろって事だろうが......女物の服じゃねえか!!舐めてんのか!?
<まあまあ、裸よりはいいんじゃないの?全部終わった後に着替えればいいんだし。>
そうだな、しゃあねえ。
取り敢えずサクッとぶっ飛ばしてオヤジから全部取り上げるとしやすかね~。
兵士から鎖のついた手枷を嵌められて館から連れ出されると庭のような場所に案内される。
そこにはエミリアやエリュセル、館の使用人らしき人間達が心配そうな顔でこちらを見ている。
そしてオヤジとオヤジが呼んだらしき傭兵のような男達が四名、俺を見てニヤニヤしてやがる。
「おお!本当にいい女だな!旦那、コイツをぶっ飛ばした後は楽しんでいいのか?」
「ああいいぞ。俺が一番先ならな!」
コイツら何時まで俺をメス扱いしてんだ?俺は雌雄同体だぞ!?
「お前らマジで頭は大丈夫か?俺はメスじゃねえつってんだろが!!」
「なるほど、旦那の言う通りこの女は頭がイカレてるようだな。どうやら俺達、SSランクの傭兵団『朱き血潮の叫び』の事もしらねえみたいだしな。」
そうリーダーぽい奴が馬鹿笑いしながら言っている。
めんどくせえなとっとと終わらすか.....そういや今の俺は人間みてえにちっちゃくなってるがステータスはそのままなのか?
<龍人の時はステータスが半分に弱体するよ。>
はん?まじか!!めちゃ弱くなってますやん!!
<いやいや、半分でも君のステータス、おかしいから。>
あ、そう?じゃあいいや。
「オマエらみたいなゴミを覚えるのはめんどくせえから瞬殺してやんよ!」
「.....この女、マジで頭がオカシイみてえだな。俺達はあのレッドドラゴンを撃退させたこともあるんだぞ?ただの女が俺達に勝てるわけねえだろ!」
レッドドラゴン?......レッドドラゴンって強かったか?強かったらもしかして俺ヤバい?
<昔、君が海に浮かんだまま死んだまねごっこをやってる最中に途中で飽きた君が腹を海の上に向けて寝ている時に君をおちょくりに来たレッドドラゴンがいたでしょ?覚えてる?>
.........そう言われると.....いたな。
ムカついたから鼻息で撃ち落として美味しくいただいた奴が。
<あれ一応ユニーク個体のエンシェント・レッドドラゴンだからね。たぶんこの人間の言っている撃退させたレッドドラゴンって通常種で尚且つ育ちきって無い奴だと思うよ。>
つまりこの姿でも余裕ってことですな。
「おう!いつでも良いぜ!!全員でかかってこいや!!『アホで痴呆が叫ぶ』さんよぉ!!」
俺が煽ってやると傭兵達がブチ切れたようで武器を抜きながら挑んでくる。
「このクソアマ!!切り刻んで肉塊にしてやる!!」
俺は手に嵌められていた手枷を引きちぎると向かってくる一匹目にガゼルパンチを打ち込む。
「ばべら......」と変な声を口から発しながらぶっ飛んでいく。
二匹目にアックスボンバーを決め、三匹目にサマーソルトキック。
焦った四匹目が俺に回し蹴りをして来たのでカウンターにドラゴンスクリューで返り討ちにしてやった後にストンピングの連射で終了。
「はん!やっぱゴミはゴミだな!!」
相当手加減してやったから死んでは無いだろうが俺の攻撃を一撃ずつ喰らって瞬殺された傭兵達が地面の上でビクンビクンしている。
「ば、ばかな!有り得ない.....こんな事、俺は認めないぞ!!!」
傭兵達が瞬殺される姿を見て唖然としていたオヤジが後退りしながら叫び声をあげる。
「おい、オヤジ。これでお前の負けだな。お前の財産は全部俺の物になったてこった。」
俺の言葉を聞き焦り顔だったオヤジが何かを思い出したようにニヤニヤしだした。
「バカめ!!昨日の契約陣はお前を即奴隷に出来る契約陣だ!!さぁ命令だ!俺の前に跪いて靴を舐めろ!!」
「な...んだと......」
お遊びでオヤジに乗っかり俺は驚愕しているような顔を見せてやると超絶に勝ち誇った顔をオヤジが見せつけてくる。
《決闘モード、貴方の勝利を確認。報酬モードに移行。》
《報酬魔法陣を召喚します。》
姉ちゃんのアナウンス通り俺の前に魔法陣が出現し、その魔法陣に右手を突っ込む。
《報酬.....受託確認。報酬モード終了と同時に契約モードを終了します。》
ふう、終わったみたいだな。
「ヴァカはテメエだ豚やろう!報酬はもう受け取ったから全部俺のものだぜ!!」
俺の宣言にオヤジがニヤニヤしていた表情から余裕が消える。
「な、なんだと!?おい、権利書を持って来い!!」
執事に命令すると執事が急ぎ書類を抱え戻って来るとオヤジは執事から書類を取り上げ一枚一枚確認した後に大地に崩れ落ちる。
「ば....かな.....。どうしてどの書類も俺の名前が消えているんだ......。」
エミリアとエリュセルが書類を確認して驚愕した声をあげる。
「「.........名前のところが......フォルティーナ!?」」
兄妹がそう呟き俺の方を見つめている。
「認めん.....こんな事、俺は認めんぞ!!!」
書類を持っている兄妹にオヤジが掴み掛かろうとしたその時!!
どんがらがっしゃん!!!!!!
オヤジと兄妹の間に雷が落ちると空から声が響いた。
【契約魔法陣の悪用を確認。処罰モードに移行。.....処罰モードによりファーレン・グレスをフォルティーナへ隷属化.......確認。 処罰モード終了します。】
あ、あれ?ナビの姉ちゃんの声が響いてんぞ!?
<ナビ子ちゃんに告げ口しといたからね。.....僕がビビる位キレて怖かったよ....。>
そ、そすか、おっつー。
「まさか!神に契約陣の不正使用がバレたのか!?」
オヤジがそう呟きながらうなだれる。
「よっしゃ、これでわかっただろ?まあ、俺はオマエみたいなのいらんからな~。おう、命令だ。俺の視界から消えてこの地を離れろ。後は俺に後々歯向かって来ることも許さん、おらさっさと消えな!!」
オヤジが無表情のまま立ち上がるとフラフラしながらどこかに去っていく姿をこの場に居る皆が一言も言葉を発さずに見送る。
エミリアとエリュセルが書類を胸に抱いたまま俺に駆け寄ってくる。
「お姉ちゃん....フォルティーナなの?」
「あん?まあ.....そう呼ばれていた事もあったな.......。」
遠くを見る目でエミリアに答えるとエミリアにがばりと俺の脚に抱きつかれる。
「......どうして貴女はフォルティーナと名乗らずにリヴァイアと名乗ったのですか?」
寂しげな表情でエリュセルが尋ねてきた。
「...別にオマエ等を騙そうとした訳じゃねえぞ?エリュセル、俺の言った種族名を勝手にお前が勘違いしただけだ。」
「.....確かにそうですね。」
「そうしょげるなよエリュセル。あのオヤジから巻き上げたこの屋敷と財産はお前達、兄妹の物だ。全部やるよ....じゃあな。なかなか面白かったぜ。」
エミリアを脚から引き剥がすと海の方向へ歩き出し、振り返らずに手を振る。
ふっ、慕って来るガキ共に幸せを授け去る俺.......超カッケーー!!
「いや!フォルティーナ!!戻ってきてー!」
《守護神捕獲コマンド作動確認。エミリアの元へ帰投します。》
.....なんじゃこりゃ!?気付くとエミリアとエリュセルに抱きつかれてんだが.....。
<だから言ったでしょ。守護神モードになるとエミリアって子が死ぬまで離れられないよ?そもそも今の君の姿である龍人モードは守護神モードのおまけ要素だし。>
..........え?
「くぉらあぁぁーーー、その話聞いてねえぞーーーーーーー!」
<うん。言ってないし。>