首都攻防戦
...こんな私達の神を信じない世界など滅んでしまえばいい。
我が神が召喚した神兵が街を破壊して至る所から達昇らせている土煙や火災による煙を窓から眺めながら思う。
聖都ウィルドレルの大司教様や枢機卿に連絡が着かなくなり我々の負けを悟った。
しかし、神は我々を見捨てはしなかった。
神の神兵がこの不浄な地、クラルフェラン共和国に出現されたのだ!
「あっはははぁ!この様な我等の神を信じていなかった世界など...滅んでしまえばいい!!」
私は現実に起こっていることを目の当たりにして狂ったように笑い出す。
〔我等が主が我を必要としている。〕
...だれだ!
不意に頭の中で響く低い声に驚き私は部屋の中を見回す。
〔俺はお前でお前は俺だ。....体を俺に渡せ。さすればお前の願い通りこの世の終わりを見せてやろう。〕
この世の終わり...それが本当に神の望みなのか?
〔...ああ、間違い無い。お前は自分が信じる神のやることを信じないのか?それでも司教なのか?〕
...聖都ウィルドレルはフォルティーナに負けた。
私の行く末には暗き暗黒の暗闇しか見えない
...もうどうでもよい、自らの頭の中に良く分からぬ声が響くほど私は狂ってしまったのだ。
お前の好きにしろ。
どの道私には何も残らないのだから。
〔...うむ。ではお前の身体...我に返して貰おう。〕
「セレナ、デーモン達はイージスの盾の効果で首都の外側に弾き出されています!外側にいるデーモン達の討伐をお願いします。こちらはレスターとカレンがいますから大丈夫です。我が国民達を救って下さい!」
「はい!では駆逐してきます~!」
「頼みましたぞ、セレナ!!」
セレナが急ぎ移動するために執務室の開いた窓から光の羽根を生やし飛び立っていく。
「レスター、エミリアとエリスは?」
難しい顔をしたワイナール殿下が何も出来てはいない御自分に少し苛立ちを覚えているようで少し声を低くしながら尋ねてくる。
「今は自室にて落ち着いておられます。カレンが側で控えております上に衛兵も廊下に配置しておりますので御安心を。」
「...そうか。」
お気持ちを落ち着かせていただく為にお茶を差し出すとワイナール殿下はカップを手に取り喉を潤す。
「それにセレナの話ではヴァランティーヌ様もバハムーレ領へ戻られた上にお知り合いのエンシェント・ドラゴン等の上位飛竜達が此方に急ぎ向かってくれているとのことです。フォルティーナ様から授けられたイージスの盾のお陰でここの被害は皆無...大丈夫で御座います。」
「うん。...そうだな。魔神と言うのをフォルティーナが抑えてくれている様だが...頑張って貰わなければ。万が一フォルティーナが負ける...等ということがあれば人類は...駆逐されるのだろうな。」
カップをゆっくりと机に下ろすと両手を組んで祈る様な態勢でそう呟く。
「...大丈夫で御座います。あのフォルティーナ様が奮戦なさるのです。敗北など有り得るはずもありません。」
「...そうだな。フォルティーナが敗北するなど有り得んよな!」
自分を安心させるように力強く呟き頷く。
それから暫し今回の対応の事をワイナール殿下とお話していると突然の轟音と共に城に衝撃の振動が走った。
「な、何だ!?何が起きた!!」
「少々お待ちを!!」
執務室のドアへ慎重に近付くと、ドアの向こう側の廊下から慌ただしく走る音が聞こえドアが力強くノックされた後に衛兵が呼ぶ声が響きわたる。
ワイナール殿下と視線を合わせると頷く姿が確認できたのでドアを開く。
「はぁはぁ、ワイナール殿下!!デーモンが一体城に表れ外壁を攻撃しています!」
激しく呼吸を乱した様子で慌てふためきながら報告をして来た。
「ワイナール殿下!!私が出て押さえます!その間にグリフォンとハルピュイアを共にバハムーレ領へ御逃げ下さい!衛兵!エミリア様とエリス様と共にワイナール殿下を頼みますぞ!!!」
「待て!レスター!!...お前死ぬ気だな!」
「...ほほ、死にはしません。私が死ぬのはフォルティーナ様御身の為のみと決めておりますので...この様なところで死ぬ訳には行きませぬから!!」
私の言葉に悔しそうな表情になった後に「すまないレスター。...死ぬのは本当に許さぬぞ!!」と私に向かって呟くと衛兵に連れられて部屋から出て行く。
殿下...どうぞ生きて下さい。
あなたとエミリア様、エリス様さえご無事ならクラルフェラン共和国は焼け野原にされようとも復興出来るのです。
...もとよりあの時に私は死んでいる様なものなのです。
生きて下さいワイナール殿下!!




