タコの奮戦
「おい!ヴァランティーヌ!!セレナ!!お前らはエリュセルと爺の所に召喚で戻れ!!クラルフェランがあのデーモンとか言う奴らに襲われてんぞ!!」
俺は振り向き様に言うと真面目な顔をしたヴァランティーヌが頷き、セレナはあわてた様子でアワアワしている。
「ヴァランティーヌ、エンシェント系のドラゴン数体をファメルテウス民主国経由でクラルフェラン共和国へ行かせてデーモン共を殲滅させろ!!セレナはクラルフェランの首都防衛だ!!」
「ええ、わかったわ!...あなたはアレをちゃんとここに押さえときなさいよ!」
「はい!セレナ、行って来ます!!」
セレナは光の粒となり爺の元に召還されに行き、ヴァランティーヌは飛竜達に指示を簡潔に出した後に同じく光の粒になって消えた。
「聖都ウィルドレルの奴ら!第三軍の司令を大将に据えて退け!!殿はエンシェントドラゴンがやってくれる!」
俺がそう叫ぶとエンシェントドラゴンが一鳴きした。
エンシェントドラゴンが味方に着いたことで聖都ウィルドレルの人間達が恐怖からの支配から抜けられたようで統率の取れた動きで足早に退いていく。
「魔王!魔族の軍と一緒に領に急いで戻り魔族領を防衛しろ!!ベヒモス!お前も防衛を手伝えや!」
「はいはい。我は餌がもらえれば構わんよ。」
ベヒモスが後ろ頭をポリポリとかいた後にずんずんと歩き始め、退いていく魔族の殿をやるために移動し出す。
「....わかりました。これが終わったら私の事を名前で呼んで下さいねフォルティーナ!!」
魔王が俺の顔に手をやると名残惜しそうに呟く。
「お、おぅ。...わかったからはよ行けや!」
「...必ず生きて...生きてお会いしましょう。」
目を細め、俺を見つめた後に後ろを振り返りそう呟いた後にベヒモスを追っていった。
...そろそろ良いか。
周囲から人間や魔族達が撤退したのを確認してから片手を空に掲げ、魔神ヴィンザードと配下のデーモン共を閉じ込めるために水幕結界で広範囲を囲む。
「クカカ...最後の別れは済んだか?龍王リヴァイアサン。...ではお前を滅しこの世界には滅びて貰う。」
気色悪い笑い声を上げながら魔神ヴィンザードが手を前に差し出すと、更なるデーモンの軍勢が出現し俺の周囲を取り囲む。
「はん!テメエみてえなゴキ野郎に俺様が負けるかよ!!」
何だろう?町の様子がおかしい...さっきから不気味な気配が数多く出現している気配がする。
僕はリヴァイアサン様と人間の戦に参加しなかった。
気に入っているこの街から離れ難く、留守番として残っていた所だった。
波止場へと上がり、周囲を見渡すが街の方で何やら人間達の悲鳴や叫び声が響いている。
...何かあったみたいだ。
急がなくちゃ!
普段はあまり近寄ることのない街の中心部に近付いていくと波止場にダンスをいつも見に来てくれている女の子が僕に気付き、息を切らしながら走ってくる。
「タコさん!タコさん!!変なのが街で暴れてるの!タコさんも早く逃げて!!」
そう女の子が必死に僕の足を引っ張りながら喋り掛けてくるけど...もう逃げるのは無理みたいだね。
見たこともない人間型のモンスターが僕達に気付き此方へとどんどん近付いてくる。
...うん、ここで僕が頑張らなくちゃリヴァイアサン様とバハムート様に顔向け出来ない!
8本の足を動かし女の子と人型モンスターの間へと立つ。
「ケケケ....人間のガキを追い掛けて来てみれば...弱そうなタコじゃねえか!」
人型モンスターは僕の姿を見ると気味の悪い声で笑い、バカにし始めた。
...舐めて貰っちゃあ困るんだよね。
これでもキリングオクトパスの頂点に立っているのは僕なんだからさ!!
エリュセルに召喚され、クラルフェラン共和国のバハムーレ領へと戻った私はエリュセルから街の状況を聞いた。
どうやらデーモン共は数体位の出現でそんなに時間も経って居ないことからまだあまり被害は出ていないとの事だった。
「...じゃあデーモン共を駆逐して来るわね。後から飛竜達も来るから安心しなさい。」
「ヴァランティーヌ!一応これを持って行って下さい!」
エリュセルがフォルティーナから貰ったアーティファクトのエスペランサを私に投げ渡してくる。
「...あら?エリュセルが持ってる方が良いんじゃないの?」
「街中じゃあ竜モードで戦えないだろ?どのみち僕に剣は使えない。ここにはマスカレイドを持ってるクレアも居る。大丈夫だから使ってくれ!伝説ではエスペランサはデーモンを斬り殺せる神剣...ヴァランティーヌ、君を守ってくれるはずだ。」
...ふふっ、かわいい事を言うじゃないのエリュセル。
「...エリュセル。私はバハムート...あんなゴキブリ風情には私に傷をつけることすら出来ないと思うけれど...あなたの思いはわかったわ。...貸して貰うわね。」
エスペランサを腰に差すとデーモンを駆逐するために人間達の悲鳴が大きい方へと走っていく。
....いた。
人間を追い回す複数のデーモンの姿を確認した私は人間達が走り去る中デーモンに向かって走り一匹、また一匹とエスペランサで斬り殺していく。
...このエスペランサ...フォルティーナが持っていただけあって有り得ないわね。
デーモンがバターの様に斬れていくわ。
「ヴァランティーヌ様が帰還されたぞー!!もう大丈夫だ!!」
私に気付いた街の人間達が歓声を上げ、一様に不安げだった表情から安心しきっている表情に変わる。
「...もう少しすると私の知り合いの飛竜達が来るわ!!それまではデーモン共にあったら即、声を上げながら逃げなさい!それでデーモン共の居場所が分かるから。」
人間達にそう伝えると次の場所へと移動する。
目についたデーモンを切り倒しながら進んでいると...人間の子供を庇い、デーモンからボコボコにやられているキリングオクトパスが視界に入った。
「ケケケ!残念だったなタコ!!俺様は魔神ヴィンザード様の部下の中でも5本指に入る強者だ。お前もなかなかに強い奴だった様だが人間のガキを庇いながら戦うってのは俺様相手に無理な話だぜ!?」
...ウザそうな奴ね。
後ろから近づきサクッとエスペランサを背中から突き刺す。
「な、なんだと!?ふぐぅあああぁあ!!」
急な攻撃に驚いた後に断末魔を上げると光の粒となってデーモンが消える。
私の姿を見てホッとした様子のキリングオクトパスに声を掛ける。
「...良くやったわタコ。フォルティーナにあなたの事を伝えておくから。」