戦果報告
「予定通り第一軍との闘いは一進一退で上手いこと膠着状態に持ち込めてるみてえだな。」
魔王率いる魔族の主力部隊がゴーレム達を盾にしつつ敵を上手くコントロールしているようでこちら側の負傷者もまだ少ないようだ。
「そろそろ第二軍と第三軍の戦況報告が来る頃くらいか?」
ギアリス平原に作った仮設の司令室でガレオンの淹れた茶を飲みながら第一軍への戦況報告書を呼んでいると現在、第三軍とやりあっている筈の海モンスター連合の報告係りにしているセレナが戻ってきた。
「フォルティーナ様!報告します!!聖都ウィルドレルの第三軍は私達側の海モンスター達の奮戦によって....お味方の大・勝・利・確定です~!」
「ほほ~う。...つうかもう闘いは終わったんかよ!」
戦況報告の第一報が勝利確定報告ってあり得ねえだろ!
「はい!突然のモンスターの総攻撃で人間達は為すすべも無く、一刻掛からずに壊滅でした~。...まあ海の上であんな数の海型の大型モンスターに襲われたら人間では抵抗のしようも無いでしょうからね~!!」
セレナは笑顔のまましきりに頷いて納得している様子を見せる。
....まあそりゃそうか。
しかもセレナも元セイレーンだから海の上での海型モンスターの優位性は知ってて当たり前だもんな~。
「おう!それは分かった!!じゃあ、こっちの損害状況と第三軍の敵さんの状況を報告しろや!」
「こちらは強襲が大成功したのでほぼ被害は無しですね!!...敵さんは...3分の1位は亡くなったり行方不明です。残りは全てこちらの捕虜になりまして、取り敢えず捕虜の皆さんを無人島に置いて来ちゃってます。一応第三軍の司令は捕まえてるのでここまで連れてきました!」
ふむ、こっちは被害無しで相手は3分の2を生かしたまま無力化出来てるのか...上出来だな!
「よっしゃ!良くやった!!!後はヴァランティーヌ達か....アイツらはやべえだろうな。色んな意味で。」
セレナを褒めた後にため息をつきながらそう小さく呟くとセレナも笑顔から真顔に変わり、俺の言葉を肯定するように大きく頷いた。
「あら...第一軍との戦闘はまだ終わって無いのね。」
報告に戻って来たヴァランティーヌが俺を見るや否や、開口一番にそう言い放つ。
「うっせえよ!オマエらの報告次第でどうすっか考えてる所だからワザと膠着状態に持って行くよう魔王に頼んでんだよ!」
「あらそう。...じゃあ報告するわね、第二軍は壊滅、たぶん逃げ切れた人間はいないと思うわよ。捕虜は...そうね、十数人位かしら。こちらの被害は皆無よ。」
捕虜十数人...第二軍の戦力は4万人程居た筈なんだけどな...。
「...まああれか...十数人の捕虜でも完全に殲滅させて来なかっただけまだマシか。」
確かに陸上で中途半端にやって師団クラス位の敵集団を逃がしてしまうとそいつらの大概が野盗なんかになりやがって後々この周辺の罪もない村や町を無差別に襲いまくるだろうから...それに比べたら殲滅で良かったかもしれねえな。
「後、捕虜の中に大司教と言うのが紛れてたわ。...それにフォルティーナ、あなたに会わせたい知り合いが居るんだけど。」
ヴァランティーヌは椅子に腰掛けた後にガレオンから茶を出されそれに口を付けると「...あら?レスターの淹れるお茶に近いじゃない。...お前やるわね。」と無表情のままガレオンを褒めている。
「ほーん、大司教な~。」
大司教と第三軍の司令が既にこっちの捕虜になってるって事をあちらさんにちらつかせたら第一軍の戦闘は終結するかもしれねえな。
「でっ、会わせたい奴って誰だ?」
「ここに入りきらないから外で待たせてあるわ。...ケガをしてるから出来れば治してあげて欲しいの。」
「...別に良いけどよ~。じゃあ取り敢えず会ってみやすかね~。」
ヴァランティーヌがその知り合いって奴に早く会わせたいらしく椅子から立ち上がると俺の腕を引っ張って来たので急いで茶を飲み干すと俺も立ち上がる。
「つうかよ、お前のその服...良いな!」
部屋から出るときにヴァランティーヌの着ている趣味の良い軍服に気付いた俺は、今の俺の着ている服に比べると遥かに動きやすそうで羨ましくなった。
「あら?そうでしょ。...ワイナールに貰ったのよ。動きやすい服で行けってね。」
「マジかよ!!俺も今度貰うかな~。貰えなかったらお前から剥ぎ取るわ!!」
俺がそう言うとあからさまに嫌そうな顔をして「....ワイナールを脅してでもあなたの分を作らせるから剥ぎ取るのは止めて。そもそも私の服のサイズじゃあなたに合わないでしょ?...主に胸と尻が。」と不機嫌そうに言った。




