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とある兵士の悪夢

 「きゅきゅきゅ!」

 (CP、CP!!!こちらアルファ1。WP3を視認できる位置で待機中!何時でも行けますぜ!)


 「きゅきゅぅきゅきゅっきゅぅ!」

 (おうおう、敵さんがうようよ居てら~。腕が鳴りやすぜ!)


 「きゅ!っきゅきゅ!!」

 (了解!総司令の決めた作戦時刻までもう少しだ、そのまま全軍待機!!)




 「きゅっ...きゅっ...きゅっ...きゅ!きゅっ!きゅぅ~!!!!!」

 (......3.2.1....さぁ野郎共!お待ちかねのショータイムの始まりだ!!敵さん共をブヒブヒ鳴かせてやれ!全員突撃!!!!!)


 「「「きゅっきゅきゅっきゅーーーーーーーー!!!!!」」」

 (((ヒャッハァアアアァァーーーーーーーー!!!!!)))



 シーサーペント軍団の第三軍への奇襲攻撃を合図に、聖都ウィルドレル軍VS多種族混合軍の戦争が遂に開始されたのだった。






 「おい!聞いたかよ!先に上陸した奴ら、連戦連勝で毎回魔族共が無様な逃げっぷりを披露してくれてるみたいだぜー!!」


 「おお!聞いた聞いた!!!情けねえ顔で逃げてるって他の奴も言ってたな!...今度の戦は楽勝ぽいな。俺たちの出番はあるのか?」


 第二派の軍に組まれた俺も周りの奴ら同様、先発隊による戦闘の連戦連勝に少し酔っていた。


 「先発隊の奴ら、このまま行ったら俺達と合流する前に魔族共の本拠地を落としちまいそうだよな!」


 「俺達の分の女も残しておいて欲しいよな!なんせ魔族の女は別嬪でおまけに締まりも良いって聞くしよ!」


 既に勝った気でいる奴らが既に魔族の本拠地での乱暴狼藉に思考が行っている様で下品が事を大声で笑いながら喋っている。


 ...負ければ俺達も魔族の様になってしまうのだろうな....国に残してきた嫁さんや子供の事を思うと魔族が気の毒に思っちまう。


 そう考えると連勝気分も興ざめし、大声で喋っている奴らを睨みつけた。


 「あん?...何だ?....軍服を着た.....女か!?」


 騒いでいた奴らの一人が指差す方向に俺も目を向ける。


 俺の視線の先には軍服を着込んだ長い黒髪で開かれた目から覗く紅い瞳が神秘的な雰囲気を醸し出す美しい女性が扇で口元を隠している姿があった。


 「...何だか...楽しそうに不愉快になる話をしてるのね。」


 軍服の女は目を細めると汚い物を見るような表情に変わる。


 「おう、姉ちゃん!お前まさか魔族の軍人か!?...俺達にも運が向いてきたようだな!」


 複数の男が各々の武器を手に取ると女ににじり寄る様にゆっくりゆっくりと女との距離を縮めて行く。


 「....ふぅ。エリュセルと比べて...とても同じ種族だと思えないわね。...愚か極まりない。私は魔族じゃ無いわよ。人間でも無いけれど...お前達みたいな下郎は消え去った方が...この世界、住みやすくなる!!」


 「はっ!何言ってんだ?この女!!...おい!オメエ等、手足は切り落としても良いが殺すんじゃねえぞ!!殺すのは俺達が楽しんだ後だ!!」


 「「おう!!」」


 卑下な笑みを浮かべ男達が女へ飛掛かって行く。


 ...あんたもこんな戦なんか止めて逃げれば良かったのに。


 女の行く末を想像し、込み上げてくる嫌悪感に俺は争う音から逃げるように武器を握ったまま背を向け歩き出す。


 「ぎゃぁあああああぁああ!!」


 男の切り裂くような野太い叫び声が聞こえ思わず振り返ると...そこは地獄だった。


 身体が火に包まれ、地面の上でバタ狂う者。


 何かに心臓を貫かれ、目を見開いたまま絶命している者。


 既に燃え尽き誰だったかすら判断つかない者...。


 ...何だ!?一体何が起きたんだ!?


 女は地面に転がっている人間だった物にゴミを見るような視線を送った後「...手応えが全く無いわね、面白くもない。これならフォルティーナからボコボコにされてる魔王を眺めてた方が楽しいわ。....飽きちゃった。後は...お前達に任せるわ!」と呟くと開いていた扇をパチンと音を鳴らして閉じる。


 一体何者なんだ!?あれは!...あんなの人間じゃない!!人間が出来る事じゃ無い!


 恐怖で身体が固くなり、鉛のように重く感じる。


 不意に空が曇ったかのように頭上の日光が遮られた。


 今度は何だ?


 空を見上げると信じられない物が俺の目に飛び込んでくる。


 ド、ドラゴン!?


 しかも大小、種類も様々なドラゴンがキッチリとした編隊を組み、飛ぶ姿だった。


 そのドラゴンの軍団は俺の所属する第二派の軍をあっと言う間に殲滅していく。


 「は、ははっ。」


 俺は恐怖のあまり、握っていた武器を地面に落とし地面に両膝を着く。


 「あら?まだ近くに人間が居たのね。...何か最後に言いたいことは有るかしら?」


 女の声が頭上で響き、死を覚悟しながら見上げ「....妻と娘に愛している...と伝えたい。」と呟く。


 俺の言葉を聞き、女が少し表情を変えて何かを考えている様な雰囲気になった。


 「...ふーん。お前は先程の奴らとは違うようね。....そう言えばフォルティーナが戦が終わったら捕虜を何人か連れてこいとか面倒な事を言ってたわね。...良いわ。お前は生かしてあげる。皆殺ししちゃうとフォルティーナから教育的指導を喰らいそうだし。」


 そう言い終わると女は含みのある微笑みを俺に向ける。


 「さぁ、後暫くで終わる....あら?懐かしい奴の気配がするわね。」


 女が真顔になりそう言った途端にまだドラゴン達から蹂躙されていなかった後方の方から人間の断末魔の悲鳴がここまで響いた。

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