準備完了!
聖都ウィルドレルの第一の軍勢が上陸を果たした。
今海上では第二軍が上陸するために船団でこちらへと向かって来ていると報告が来る。
「そろそろ最終準備に入らねえとな。」
「ええ、第一軍は我々の予想通りギアリス平原を通過するコースだと偵察隊から報告が来ています。」
俺と魔王は詳しく地理の描かれた地図の前で標を睨みながら相談をしている所だ。
「第二軍の上陸はどの位になりそうなんだ?」
「おそらく第一軍がギアリス平原に入る前くらいになる模様ですね!」
第二軍の動向を探って来たばかりセレナがガレオンから差し出された茶を美味そうな表情で飲みながら返してくる。
「なるほど...よっしゃ!魔王、魔族の尖兵で第一軍にちょっかいを何度か出して小競り合いをしろ!そのままギアリス平原に引っ張り出してからそこで足止めして第二軍に少し進軍させてから第三軍が海上まで出るのを待つぞ!」
まさか聖都ウィルドレルの奴らも分けた軍団全部に同時総攻撃を喰らうとはこれっぽっちも思ってねえだろうからな。
更なる油断を誘うためのこちらの演技に付き合ってもらうぜ!
「はい!...お前達、わかったな!」
「「お任せ下さい!!」」
魔影十傑の面子が一様に頭を下げ、自信に満ちた表情を見せる。
「おう!頼んだぜ!!ケガは治してやれるが...なるべくこちら側の死人や重傷者を出すんじゃねえ。ギアリス平原までは小競り合いで良いんだ、適当に手出しして直ぐに退くんだぞ!」
「「仰せのままに!」」
魔影十傑が良い表情で返事を返すのだが...俺はお前らのボスじゃねえのに従順過ぎじゃねえ?
「お前ら....魔王の為に戦えよ?俺は居候の上に面倒事を持ち込んだ張本人だからな。」
「何を仰いますか!!フォルティーナ様は我々魔族の救世主様!その上我らの魔王殿下のお后になられるのです!既に我らの主上も同じ!魔王殿下と共にフォルティーナ様も我々の主でございます。」
魔影十傑の中で一番歳を取ってそうな奴が目を見開きそう言い切ると周囲にいる奴らも頷き出す。
「お、おう。后は...あくまで予定だと思うけどな。」
コイツら頭堅すぎでめんどくせえ...
<ね!面白く無いでしょ?クソマジメ過ぎるから見てても面白くなくて途中から飽きたから放置しちゃったんだよね。>
...お前が放置したからガレア高地があんな状態になったんじゃねえだろうな?
<......うん?>
うん?じゃねえよ!職務放棄してんじゃねえよアホ!!
天の声の働きたくない病に辟易しながら更なる戦の準備へ考えを巡らせ始めた。
「俺達の主力部隊があっちだから....この辺でいいか。」
俺はギアリス平原で展開している魔族の主力部隊の陣がある方向を指差しながら呟く。
紫色に輝く球を数個、地面に落とすと俺のMPを球に向けて放つ。
球の周囲の地面が盛り上がりそこから巨大な土の化物、ゴーレムを数体産み出した。
実は今回の戦で使えそうな物が何かないか亜空間ボックスの中を再度確認した時にゴレムクオーレと言う宝珠のアーティファクトが複数持っていることを知った。
コイツらを盾に使えばこちらの被害はかなり抑えられるだろうと思い使うことにしたのだ。
天の声が言うには込めたMPの量と込めた者の魔力の高さでゴーレムの強度、攻撃力等が決まると言うことだった。
作り出したゴーレムの腹に一発、軽いパンチを入れると「ゴッ!?」と言う声のような音をゴーレムが発してぶっ飛んでいく。
「....やっぱ俺がMPを込めたら1でもめちゃんこ丈夫だな。」
軽く殴っただけだがぶっ飛んだゴーレムは無傷のまま吹っ飛ばされた場所で何事も無かったかの如くむくりと起き上がる。
「いやいや!だいぶオカシイですよ!?ミスリル製の剣がボキボキ折れるのですが...たぶんこのゴーレムの強度はオリハルコン並ですよこれ!」
魔王が強度確認の為にミスリル製のツヴァイハンダーでゴーレムに試し斬りしたのだが一撃で折れたツヴァイハンダーを見て驚愕の表情を浮かべている。
「...なんつーか、アーティファクトって便利なのが多いんだな...俺、この戦争が終わったらアーティファクトハンターになるかな。」
「....フォルティーナ殿、今どれだけアーティファクトを持ってるんです?」
「あ~、よくわかんねえけど聞いた話じゃあ8割位持ってるらしいぜ。」
俺の答えに魔王が口をパクパクさせている。
「...聞かない方が良かったかも知れない。ヴァランティーヌ殿も大概ですがフォルティーナ殿もだいぶやりすぎてますよ...。そりゃあそれだけ持ってればレーヴァテインやらぽんぽん人に渡せますよね。」
魔王が地面に突っ伏して何やら呟いているが気にするのは止めるか。
それよりも戦の準備はこれで万端だろ!よっしゃ気合いを入れてぶっ潰しやすとしやすかね~。