クズ共との話し合い
アルフェール家の連中を城に呼ぶ訳にも行かないので、エリュセルとヴァランティーヌの首都での屋敷を借りる事にした。
屋敷へと向かう馬車の中、頼んでもいないのについて来た魔王が話し掛けて来る。
「これから向かう所はエリュセル殿とヴァランティーヌ殿の屋敷とお聞きしましたが...フォルティーナ殿の屋敷はクラルフェラン共和国には無いのですか?」
「あん?あるっちゃあるけど俺は城に住み着いたから帰ってねえな。」
エリュセルとヴァランティーヌに首都での屋敷も働いている奴らごと譲渡してからワイナールから替わりの小さな屋敷を城の近くに貰ったのだが一度も行ったことが無かった。
聞くところによると掃除などは毎日、今から行く屋敷の使用人達が分担でやってくれているらしいから直ぐにでも住めるらしいが。
「なるほど、クラルフェランでの私とフォルティーナ殿の愛の巣ですね!是非行ってみたい!」
「アホか!誰がお前と一緒に住むんだよ!魔族領に大人しく引っ込んでろボケ助がぁ!」
満面の笑みで寝呆けた事をぬかす魔王に眉間にシワを寄せながら罵声で返すと「そんな~、私達は将来を誓った仲ですよね!?」と不安そうな顔で俺に詰め寄ってくる。
「寄るなボケナス!暑苦しい!...考えてやるって言っただけだ。確定した訳じゃねえだろ、大人しくしとけやクズ!」
俺の一言でしゅんとしている魔王を眺めながらため息を一つ落とすと爺が「フォルティーナ様、我々が屋敷に入って暫くしてからかの者達に使いを出します。」と耳打ちして来る。
エミリアとエリュセルの血を分けた家族か...直接会うのは初めてだな。
今までアルフェール家には爺なんかを使いに出していたので俺は会ったことがない。
...まあ、爺やセレナの反応を見ているとある程度どんな人間達なのか想像がつくのがな~。
馬車の窓から見える外の風景を眺めながらアルフェール家の奴らの人物像を想像しながら更なる深いため息を落とした。
屋敷へと到着した俺達はアルフェール家の連中が来るまで各々休憩を取っていた。
爺に淹れて貰った茶を渋い顔で飲んでいると侍女が一礼をした後に部屋へと入ってきて「アルフェール家の方々が到着されました。...5名来られております。」と報告して来る。
「...5人?アルフェールのクズは4人じゃ無かったか?」
爺やセレナの報告と違う人数に首を傾げていると「どうやら1名アルフェール家の者では無い者が居るとの事です。」と部屋に戻ってきた爺が言う。
「ほーん、まあいいや。取り敢えず会いやすかね~。」
歓談室に通したとの事なので爺、セレナ、魔王を引き連れ移動する。
歓談室のドアを開け、中へと入ると...確かに5人いるな。
やたらと豪華な成金趣味満載の小太りのおっさん、これまた豪勢なドレスで身を包んでいるケバいババア、小太りのおっさんに良く似た小太りの若造が二匹。
そのチンドン屋の様な面子がソファーに座っている中、一人だけマトモな正装でこちらの様子を窺う様に眺めてくる男がいる。
5人の目の前に置かれている椅子を爺が引いて俺が座るのを待っているので、その椅子に腰掛けて脚を組んだ後に5人に対して口を開いた。
「俺がフォルティーナ・リヴァイアだ。...っで、何の用があるんだ?」
「おぉ!貴女がフォルティーナですか!噂通りうつく....」
「前置きは要らねえ!はよ要件を言えや。」
俺が普段よりも低い声でそう言うと小太りのおっさんの顔がひくついている。
「...では、要件を。エミリアとエリスに会わせてもらい...」「ダメだ。」
間髪入れずに拒否すると小太りの若造の一匹が目の前の机をバン!と叩き、俺を睨みながら「エミリアは俺達の血を分けた家族だぞ!会わせてくれても良いだろ!!」と騒ぎ立て始める。
だんだんクズ共の態度に苛立って来た俺は腕を組んだ後に指でトントントンと自分の腕を叩く。
「はん?家族?バカかお前らは!お前らはエミリアとエリュセルをファーレンとか言ったオヤジに売ったんだろうが!!お前らみたいなクズがアイツらを家族って言うんじゃねえよ!!」
そう俺が言い放つとアルフェール家の奴らは何も言い返せないらしく俺を睨んだまま押し黙る。
「少々宜しいでしょうか?」
俺達のやり取りを観察していたまともな格好をしている奴が俺の顔を見ながらそう言ってくる。
「何だ?」
俺の言葉を聞き、その男が座り直して俺の目を見ながら喋り始める。
「アルフェール家の皆さん方にお聞きしたのですが...フォルティーナさん、貴女はエミリアさんの召喚獣らしいですね。エミリアさんに使役されている貴女が口を挟む事自体がおかしいのでは無いのでしょうか?」
何だコイツ?俺にケンカ売ってんのか!?
<イライラしてるのはわかるけど落ち着いてね。>
お前に言われんでもわかってんよ!




