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可哀想な魔王様

 「どのように...とは...どう言うことでしょうか?」


 魔王様が言う意図がわからずに聞き返すと魔王様が苦笑しながら口を開く。


 「そのままの意味です。フォルティーナ殿の今後の事ですよ。フォルティーナ殿はエミリア殿の召喚獣...エミリア殿が天寿を全うした後...フォルティーナ殿はどうなさるでしょうか?」


 「どうって...海に帰るのでは無いでしょうか?...フォルティーナは私がまだ子供だった頃、よく海に帰りたがってましたから...。」


 「いえ。最早それは無いでしょう。」


 魔王様はそう言い切った後に続ける。


 「ワイナール殿とエミリア殿の子、エリス殿に対するフォルティーナ殿の溺愛っぷりは部下より聞き及んでいます。...おそらくフォルティーナ殿はエミリア殿が亡くなり、召喚獣の契約が無くなった後もこの地に留まり見守って行くことでしょう。....御自分の幸せという物を考えずに....子々孫々まで....それをあなたはフォルティーナ殿に望んでいるのですか?」


 魔王様にそう言われ、私もフォルティーナの最近の様子から同じ様なことを感じ取り始めていた為に少し動揺する。


 このままフォルティーナを私に縛っていて良いのか?私がフォルティーナを使役しているためにフォルティーナ自身の幸せを邪魔しているのではないか?そう思い始めていたのだ。


 近年になり、フォルティーナは不意に陰りのある表情になる時があった。


 お兄様とヴァランティーヌの結婚、私の結婚、ヴァルファーレやエリスを見つめているとき...。


 自分のように喜んでくれていたがおそらくあの表情はフォルティーナ自身でも気づいていないのだろう...笑顔なのに凄く寂しそうな表情に見える時があるのだ。


 その寂しそうな表情は特にクラルフェラン共和国に帰ってきてからよく見かけるようになった。


 考え込み俯いてしまっていたのだろう、旦那様が「エミリア...」と声を掛けてくれそっと抱き寄せてくれた。


 ....旦那様もフォルティーナの変化に気づいているのだろう、顔を見合わせると眉を少し下げて何とも言えないという表情をしている。


 「エミリア殿とワイナール殿もそれとなく気付いていた様ですね。」


 「...結局はフォルティーナがどうしたいかですよね。」


 私の言葉に魔王様は真剣な顔で頷き、口を開く。


 「私は....」







 「フォルティーナ様!会談が終わったようで魔王様とエミリア様、ついでにワイナール様もこの部屋に来られてますよ~!」


 「...セレナ...お前、ついでって一応ワイナールはこの国の王だぞ。...まあいっか。おう、入って良いぞ!」


 セレナが部屋に入って来ると同時に自分が居る国の王にまさしく不敬と取れる物言いをするセレナに呆れながら魔王達に入って来るように促す。


 「お久し振りですね、フォルティーナ殿。」


 「おう、久し振りだな魔王。まあ座れや。エミリア達もついでに爺の茶を飲んでけ。」


 魔王達を座らせ雑談を開始するが何やら様子がおかしい。


 エミリアとワイナールは少しそわそわしているし魔王は俺を見ながら終始笑顔だ。


 「なんだ?オマエら。何か気持ち悪いぞ、俺に言いたいことがあるんなら言えや!!」


 俺の言葉を聞きエミリアとワイナールが一瞬体を震わせ、魔王は笑顔から真面目な顔になる。


 「では単刀直入に言います。フォルティーナ殿...私と結婚して下さい!!」「イヤだ。」


 間髪入れずにそう返すと魔王が椅子から滑り落ちる。


 あん?取り敢えず何も考えずに嫌だって答えたが...このクソ魔王、今何をのたまいやがった!?


 <いやいや。君、今魔王に求婚されたんだからね。言葉で瞬殺したけど...合掌。>


 はん?おいおい。


 俺は雌雄同体だぞ!?結婚できるわけねえだろ!


 「おい!クソ魔王!!お前ボケてんのか!?お前も俺が雌雄同体だって知ってんだろうが!!変な事を言い出すんじゃねえよクズ!!」


 魔王が椅子に座り直しているのを睨みながら眺めているとヴァランティーヌが「良い機会じゃない。あなたも完全な人間の女になれば何の問題も無いわよ。」と冷めた表情で俺を見て来る。


 「ヴァランティーヌ...お前なぁ、俺はそんな面倒そうな事はせん!って前から言ってんだろうが....お前、まさか魔王に入れ知恵しやがったな!?」


 「聞かれたから答えただけ。フォルティーナも完全な女になれるってね。」


 ふぁーーーー!!!!コノヤロウ!!!!魔王が変な事を言い出したのはコイツが元凶か!!


 「おう、ヴァランティーヌ。表に出ろや!お前は再教育が必要らしいな!!」


 「うん、無理。それに私に教育なんてすると...ヴァルファーレに嫌われちゃうわね。」


 抱いていたヴァルファーレをほれっほれっと俺に見せつける様に俺の目の前に差し出す。


 くっ、コノヤロウ!自分の娘を盾にしやがったな!!手が出せねえやんけ!


 ヴァランティーヌをぶっ飛ばしたくても出来ない事に両手をわきわきさせながら悶えていると真顔のエミリアが「フォルティーナに聞きたいことがあるの。いいかな?」と尋ねてきた。









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