めでたいことは続く物で...
「じゃじゃじゃ~ん!私、子供が出来ました~!!」
「........はよ教えろやボケナス!!」
腹の膨らんだエミリアを見て初めてガキが出来たことを知った俺は悪態をついていた。
「だから早くフォルティーナにも教えてあげなって言ったでしょ。」
ワイナールが俺の荒ぶっている様子を眺めながら一つため息を落とす。
「どうしても直接フォルティーナを目の前にして報告したかったんだもん!...私の大切な人に目の前で祝って欲しかったの。」
エミリアが慈しむように大きくなった自分の腹をさすっている。
そうか...エミリアはこれで人の親か。
「まあ、あれだ。おめでとな、エミリアにワイナール。健康なガキを産むんだぞ、エミリア。」
「うん。ありがとうフォルティーナ!」
エミリアの頭を撫でてやるとくすぐったそうな表情で嬉しそうに答えた。
「ほんじゃあ俺もクラルフェラン共和国に戻って来れる様にファメルテウス民主国の代表俺から変われる奴を決めさせるとしやすかね。そろそろ隠居してえし...これから産まれてくるお前達の子供を近くで見守ってやりてえからな。」
「戻ってきてくれるのですか!フォルティーナが戻ってきてくれると聞いたら皆喜びますよ!!」
「おう!いつまでも俺が代表をしてるってのがおかしいだろ?一応俺の住処はクラルフェラン共和国なんだぞ。」
「フォルティーナ!!だーいすき~!!」
勢い余って俺に飛びかかろうとしたエミリアが寸前で止めて舌を出す。
「おっ、流石に腹にガキがいるから自重したな!まあ、今は大人しくしてろ。直ぐに戻ってこれる様にしてくるからよ!」
「うん!」
ファメルテウス民主国へ帰ると、俺は官僚などの国の中枢を担っている連中を呼び出しファメルテウス民主国の新たな代表を決める提案をした。
「...フォルティーナ様、本気...なのですね。」
「おう、俺はクラルフェラン共和国へ帰ろうと思っている。もうこの国に俺は必要ねえだろ。長い期間この国で働いたんだ。そろそろ俺を召喚主の所へ帰してくれや!」
集まっているみんなの表情が一様に暗くなっている。
「おいおい、そんなに暗くなるこたぁねえだろ。...何かあったら俺を呼べば良いんだからよ。ここまで関わったんだ、はいさようならって訳じゃねえからな。」
「わかりました!エミリア様も懐妊されたとのこと...それにファメルテウス民主国の情勢も良い状態です。良い機会かもしれません!...私達はフォルティーナ様から巣立ちの時を迎えたのでしょう!」
一人の官僚がそう真剣な表情で俺に向かって頷いた後にそう口を開いた。
見回すと皆もまだ少し迷いがある様だが俺の意志が固いとわかったようで承知するように頷いている。
「じゃあ、代表者の決め方だが...やっぱり選挙で国民自身に選ばせる方が良いだろう。そして数年でまた選挙をする。そうやって信を得た奴が代表をやった方が不平不満が生まれても我慢出来る様になる。なんせ今までの強制された王政と違って自分達が選ぶんだからな!」
「わかりました!それではその様に実施するとして...話を詰めて行きましょう!!」
「よっしゃ!じゃあ会議をすっぞ!!野郎共!!」
それから成人した国民に身分問わず選挙権を与えた代表を決める選挙が行われ、俺の元で働いていた官僚の一人が代表者となる事となった。
そしてそろそろ俺がクラルフェラン共和国へと帰る時が近づいていた時に魔王が新たな代表者との顔合わせの為にファメルテウス民主国へ訪れた。
「フォルティーナ殿、本当に辞めてクラルフェラン共和国へ帰るのですね。」
「おう!エミリアの腹の中にいるガキもそろそろ産まれてくるしな。いいタイミングだから俺はこのまま隠居して子守でもすっぜ!!」
「....そうですか。残念ですが御自身で決められたのならばそれが一番良いのかもしれないですね。ところで...私もクラルフェラン共和国の王とそろそろお会いして友好条約の話の詰めをしたいのですが。」
魔族領はガレア高地が肥沃な大地になったお陰で飢えていた国民はほぼ居なくなり、国力も見違えるほど持ち直したそうだ。
そろそろ良い頃合いか。
「そだな。そんじゃあ俺と一緒にクラルフェランへ行くか!ワイナールと合わせてやるぜ!」
「ええ、是非お願いします。...それにあなたの召喚主であるエミリアさんにも少しお話が有りますから...。」
「あん?エミリアに何か様があるのか?」
「あっ、いえ。おそらくその話は産まれた御祝いを魔族領から送り届ける時にするつもりなので今回は顔見せだけです。」
コイツ、何言ってんだ?
俺は魔王の言おうとしていることがよくわからなくて頭を捻っていると魔王は笑いながら「まあまあ、今の話は忘れて下さい。」と言うのだった。
仕事が多忙になってきたので3日に一回位の更新になりそうです。
すみませんがご容赦下さい。




