幸福に包まれた空間
ガレア高地が荒れ地から森に変わったことで少し...と言うかかなり魔族領は混乱したが魔王クリストファーが魔法で変化させたと大々的に国民へ向け発表し、どうにか混乱を収束させる事が出来た。
「フォルティーナ殿。あなたのおかげで魔族領も立て直せそうです。変わりに私が歴代魔王が成し遂げられなかった事をやった稀代の魔王と言う扱いになってしまいましたが...」
「いいんじゃね?それで。無能扱いされるより有能魔王って思われてる方が統治も楽だろ?」
「まあ、そうなのですが...私が成し遂げた訳ではないですから心苦しいと言うか...」
「クソマジメな奴だなお前は!虚勢でも良いから胸張ってろや。そうじゃねえと俺にとばっちりが来そうで嫌だから全部お前に押しつけたんだろうが!」
うじうじしている魔王の頭を一撃、叩きながら激を飛ばす。
「そんじゃあ、俺はそろそろファメルテウス民主国に帰るからな。クラルフェラン共和国に行く時には連絡せいや。お前と一緒に同席してやっからよ!」
「ええ、わかりました。...この度本当にお世話になりました!!」
「おう!じゃあな!」
ファメルテウス民主国から一緒に来ていた奴らを引き連れ帰ることとなった。
ファメルテウス民主国に帰った後、少し時間は流れる。
その間も俺は内政で忙しく過ごしていたがクラルフェラン共和国から嬉しい連絡があった。
「おっ!遂にヴァランティーヌとエリュセルのガキが産まれたか!!」
「はい。無事健康な子が産まれたそうです。」
「ええ!元気な女の子でしたよ~!!可愛かったです!」
身重のヴァランティーヌの身の回りの世話などをさせる為に送り込んでいたセレナが報告の為に帰ってきたのだ。
「よっしゃ!ガキ用の服やさらし何かを用意させてっからそれを持ってバハムーレ領に先に戻っとけ!」
「はい!わかりました~!!」
セレナが嬉しそうにニコニコしながら部屋を後にする。
俺も今すぐクラルフェランに戻りてえが...官僚達に聞かねえといけねえな。
...ふぅ、聞きに行くか。
何でこんなに自由が無くなってんだろうね。
意味わからぬ。
官僚に頼み込んで10日程の休みをもらい、俺は早速バハムーレ領のヴァランティーヌとエリュセル屋敷へおもむいていた。
「ほぉー、ちっけえな!おい、コイツの名前は何て言うんだ?」
「ヴァルファーレと言う名をつけたわ。」
俺の顔を見てにっこりと微笑むヴァルファーレを見て俺の顔は緩んでいることだろう。
ヴァルファーレは髪の色はエリュセルやエミリアと同じ金髪、瞳の色はヴァランティーヌの綺麗な紅い色だ。
「コイツは将来美人になるだろうよ!俺が保証してやるぜ!!」
眠そうに瞳を閉じ始めたヴァルファーレをヴァランティーヌに返すと、ヴァランティーヌはベットにヴァルファーレを寝かしながら「...フォルティーナ、親バカになりそうよね。いえ、もう親バカだったわ。」と呆れたように俺に言う。
「おう!何とでも言えや。」
静かに眠るヴァルファーレをにやにや眺めているとエリュセルが部屋へと幸せそうな笑顔で入ってきた。
「フォルティーナ、来てくれたのですね!」
「おう!エリュセルも仕事ご苦労さん。どうだ、領の経営の方は?」
「まあ、頑張ってフォルティーナが造ってくれた基盤を壊さないように必死なので大変ですが...でも悪くはないと思います。」
親父になり少しずつ自信がつき始めた様でしっかりとした口振りでそう答えた。
うん、良い面構えになってきたな!
「もう、お前もガキを持つ立派な親だ!...ガキに後ろめたい事はするんじゃねえぞ。」
「...はい!誓って!!」
エリュセルが眠るヴァルファーレを眺めながら強く呟く。
...もうエリュセルは大丈夫だな。
後はヴァランティーヌが上手く操縦して行くだろうよ。
そう思っているとエリュセルが何かを思い出したように「あっ!」と叫んだ。
「どうかしたんか?」
「ファメルテウスに帰る前にエミリアに会ってあげて下さいね。」
「おう、元々そのつもりだったから会いに行くが...どうかしたんか?」
「フォルティーナ自身の目で確かめてあげて下さい。」
ヴァランティーヌとエリュセルがお互いに見合うと笑顔をほころばす。
何だ?何かあったんか?
そういや、最近アイツと会話してねえな~。
前までくだらん会話をちょくちょくしてきたのによー。
まあ、エリュセルなんかの様子を見ていると悪いことがあったわけでは無さそうだが...
俺は首を傾げながら、気持ちよさそうに眠るヴァルファーレを眺めていた。




