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魔族領の現状

 「ほーん、ここが魔族領の首都か~。思ってたよりも経済活動は活発そうだな。」


 俺は今魔族領で親善視察と言う名の見物をしている所だ。


 基本的には人間と文化の相違は無いように見えるが、魔王の話ではやっぱりガレア高地のせいで食いもんなどの物価がやたらと高く国民はそんなに豊かではないと言っていた。


 「フォルティーナ殿、晩餐会の件ですが...」


 「おう、お前達にも体裁が有るのかも知れんが別に豪華にしなくていいぞ。普段喰ってる料理を出せ。既に今回一緒に来ている奴らにも前以て伝えてるからこっちは気にすんなよ。」


 「ありがとうございます。...正直ありがたい。」


 「国民が腹減らしてんのに上の奴らが旨い飯を喰ってたら示しがつかねえだろ。...おぉそうだ。なんぼかファメルテウス民主国から食いもんを送って来る予定になってっから市場に安く出してやれ。当然貧しい者にも買えるように配慮せいよ!」


 「何から何まで...ありがとうございます。...うん!?」


 首都の様子を見るために魔王が用意してくれた馬車の中で魔王と話を最中に不意に馬車が急ブレーキが掛かり俺と魔王は前のめりになった。


 「どうしたんだ!?急に馬車が止まったみてえだが...」


 馬車のドアを開き、外の様子を確認すると若い魔族の女がメスガキを庇うように抱いて地面に座り込んでいる。


 外で馬車の警護をしていた魔族の兵士と爺が若い魔族の側で慌てている表情で話しかけていた。


 あん?何があったんだ?


 「爺、どうした?」


 「フォルティーナ様、どうやらこの親子は腹を空かせてる様でして...空腹に耐えきれなかった子供が馬車の前に倒れて進路を塞いだ為の急ブレーキでした。」


 「ガキにケガはねえんだろうな?」


 「ええ、大丈夫の様子です。」


 なるほど、ケガがねえのはわかったが...おっ、そういや...


 馬車に戻り、俺と魔王のために用意されていた菓子パンを何個か掴むと俺は魔王の馬車の進行を妨げた為の処罰を恐れるあまり小刻みに身を震わせて恐怖におののく表情を浮かべる親子の側に近寄り、身を屈め親と視線を合わせる。


 「おう!腹減ってんだろ。これをやるからガキと一緒に喰え!...お前達を餓えさせないよう協力するために俺はこの領に来たんだ。少しずつ良くなる筈だからもう少し我慢してくれ。」


 持っている菓子パンをハンカチで包み、親に渡してから腹を減らしているガキの頭を撫でてやって馬車へと戻る。


 「あ、ありがとうございます!!」


 母親が俺に言ってくる礼に振り返ることなく片手で答え、そのまま馬車に乗り込んだ。


 「おう、魔王。やっぱ晩餐会自体を止めとけ。それに掛かる経費を腹を減らしてる国民に炊き出しに使ってやれ。はやくしねえと...やべえな...」


 俺の言葉に驚いた様子を見せて「フォルティーナ殿...全ての者を救うことは出来ないのですよ...。」と寂しそうな表情で言う。


 「バカかてめえは!目の前の餓えてる自分の国民を見捨てる位なら王なんてやめちまえ!何の為の王だ!国民を最低限喰わせることが出来ているからこそ国民から税金を払貰ってるのだと思え。」


 俺は思考を巡らす。


 セレナにファメルテウス民主国から多めに食料を送って貰うように頼むか...いや、それじゃあファメルテウスの奴らが喰う食料の値段が上がっちまう...。


 ...そういや、戦時に喰う兵糧がファメルテウスでもあったな。


 どうせ敵は俺一人で殲滅できるんだから...


 「おい!魔王。魔族領には兵糧はあるのか?」


 「え?あ、ああ。多少ならば...」


 「ファメルテウスの兵糧も少し送ってやる。お前らが困ら無いくらい兵糧を国民にバラまけ。」


 「...それでは万が一の時に備えることが出来なくなるのですが。」


 魔王が焦った表情でそう言ってきた。


 「おう。わかってんよ。暫くはヴァランティーヌの知り合いの飛竜辺りにこの国を守って貰うように頼んでやる。この国の兵士にも農作業をやるようにさせて生産量を上げろ...持ち直すまでは俺もこの国を守ってやる。あと今回の訪問時に支払う事になってる城の修理代も待ってやる。その金も使って取り敢えず今を凌げ!」


 魔王は黙り込み思考している様子だがふと顔を上げ俺を眺めてきた。


 「わかりました。ファメルテウス民主国であなたは綺麗に纏め上げていますし前政権よりも圧倒的に国民も豊かになっていると聞いています。...やりましょう!」


 そう覚悟を決めた表情で俺に言ってきた。


 よし。


 ガレア高地...あれをどうにかすればこの状況はどうにかできるはずだ!俺様がどうにかしてやんよ!!

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