ドラゴンオーブの秘密
魔王が帰った後に俺達は詰めの話し合いと国民へ向けて魔族との付き合いを始めることを発表した。
国民の反応もあまり反発も無くスムーズに行きそうなのだが...魔族領がガレア高地のせいで貧しくなっているのをどうにかしてやらなければいけないだろうな。
このまま魔族との付き合いを全ての項目で解禁してしまうとちょっと都合が悪い。
ファメルテウス民主国とクラルフェラン共和国よりも魔族領の方が貧しく、国力に差が出過ぎているのだ。
今は俺やワイナールの治世だから上手く行くかも知れないが後々までの事を考えると3カ国共に近い国力で有る方がお互いに不平等な事になりにくいだろうと思い至った。
うーん、どうにかあの荒野をどうにか出来ねえもんかな~。
<出来るよ。魔族が持ってるドラゴンオーブを使えば荒れ地を肥沃な大地に変えれるよ。>
マジか!!...でもそれが出来るんならなんで魔族はドラゴンオーブをガレア高地に使わねえんだ?
<魔族の魔力だけで出来たらやってるんだろうけどね。あれは魔力の質が低いと表の効果しか使えないんだよねー。それで...裏の効果は...世界の創造。>
あん?世界の創造だと!?
<そう。ドラゴンオーブはこの世界を作った時の僕の力の残りカスの結晶なんだ。創造の力はもう無いけど大地の回復位なら...君のMPを込めたら出来るんじゃないかな。>
なるほどな。
じゃあ魔王が今度こっちに来た時にでも話をしてみっかな!
数日後、魔王が複数の部下を従え、再びファメルテウス民主国へ訪れた。
「フォルティーナ殿、お久し振りです。我々魔族の方の話はまとまりました。」
「おう、お疲れさん。官僚共!魔族とすり合わせの最終確認をしとけ!」
「はっ!...では交渉係の方はこちらへ。我々と最後の詰めの話をしましょう。」
ファメルテウス民主国の官僚と魔族の係の物は俺の部屋から出て行き、会議室で会議を始めるようだ。
「ふう。後は奴らがファメルテウスと魔族領の折り合いをつけるだろうよ。」
爺が差し出した茶を飲み、椅子に深く腰を降ろし直し楽な態勢になる。
「ええそうですね。...そう言えば...フォルティーナ殿に報告が有るのですが...」
「あん?報告?何の事だ?」
魔王も爺の茶を口にした後に顔の表情を引き締めて「魔族領に亡命して来たファメルテウスの元王族と上級貴族達の事です。」と少し声のトーンを落としながら言う。
「ああ、クズ共の事か...まさかそっちで迷惑な事でもしでかしたか?」
「いえ、そうではありません。...彼らは我々魔族がフォルティーナ殿に敗北したことを知ると魔族領から姿を消したようです。」
アイツら...逃げやがったか。
逃げ足だけは超一流だな。
「まあお前等にとってそっちの方が結果的に良かったんじゃね?実際アイツらが居てもろくな事になんねえだろ。」
「...その通りですから何も言い返せないですね。」
苦笑いを浮かべながら魔王がそう呟く。
「アイツらクズ共の行方は一応こっちでも探らせるぜ。...おお!そうだ。肝心な事を忘れそうになってたぜ!あのよ~、ガレア高地が肥沃な土地に出来るかもって言われたらお前はどうする?」
「ガレア高地が肥沃な土地に?信じられないですね。我らが長い間どうにも出来なかったのに....まさか!?フォルティーナ殿は何か方法を知っているのですか?」
魔王が驚きの表情で身を乗り出して俺に尋ねる。
「おう。まあ出来るのかどうかはやってみねえとわかんねえが...試してみっか?」
「詳しく教えてもらえますか?」
俺は魔王に天の声から聞いたドラゴンオーブを使用してのガレア高地復活計画を話し始めた。
「...まさかドラゴンオーブにそのような力が隠されてるなんて!!」
信じられないと言わんばかりの驚愕した表情で魔王が小刻みに震えている。
「この事は黙っとけよ。人間の住む土地も不毛な土地が多いからな。この話が広まっちまうとドラゴンオーブを巡って戦争が起きるぞ!」
「ええ!その通りです。この話は...ここに居る者のみの内密な話としましょう。」
「つうわけだ。爺!わかったな。」
「仰せのままに。」
これでドラゴンオーブの話を知っているのはここに居る3人と天の声...位だろうな。
天の声の部下は知ってるのかも知れんがそこまでは口止めのしようがねえ。
「しかし、フォルティーナ殿は何故そこまで魔族を助けてくれるのですか?」
魔王が不思議そうな顔で俺を眺めながら聞いてくる。
「あん?...しいて言うなら俺の召喚主のエミリアの為だな。...あいつはガキの頃に親から変態オヤジに売られたり結構悲惨な目に合ってるからな。まああれだ、アイツには幸せに生きて欲しいのよ!だから後々障害になりそうなもんは早めに摘み取ってるだけだ。お前が誰かに礼が言いたいなら俺を召喚獣にしたエミリアに言うんだな。」
「...ふふふっ、そのエミリアって娘が正直羨ましい。あなたのような方が完全なる味方なのですから。」
目を細目ながら魔王はそう呟いた。




