魔王様と愉快な仲間たち
「ガレオンが返り討ちに会いましたが生きて帰って来ました。」
「そうか...。」
事の始まりはファメルテウス王国の王族、上位貴族が魔族領に亡命して来たのが始まりだった。
奴らは俺達に亡命の嘆願と共に国を取り戻す為の交換条件を提示してきたのだ。
その条件とは国を取り戻した暁には魔族と友好条約を締結するとの事だった。
我ら魔族は人間達と交易を持つのが悲願だった。
人間達は我らに無い物を作り出すことに長けている。
それらが我らは喉から手が出るほど欲しかったのだが...何故か我らは人間達から差別されているのだ。
人間が持つ事の出来ぬ高い魔力を恐れての事か、それとも我らの寿命が長いと言うのを羨んでいるのか...
理由は私には分からないが人間と魔族は相容れない存在であった...今までは。
それがファメルテウス王国を取り戻せば条約を結ぶと確約してきたのだ!この好機を逃す手は無い!!
しかし、元ファメルテウス王国に送り込んだ魔族が誇る軍団長、魔影十傑が一人、白きガレオンが負けるとは...
ファメルテウス民主国の代表、フォルティーナと言う人物はファメルテウス王国の元王が言う通り竜王バハムートクラスの龍で間違いは無さそうだ。
余りに荒唐無稽な話で始めは信じられなかったが...ガレオンが負けるとは間違い無さそうだ。
「クリストファー陛下...どの様に致しましょうか?」
我が城の会議室でガレオンを除いた魔影十傑が集まり、ファメルテウス民主国での出来事に驚きを隠さないでいた。
「ふむ、あの国を取り戻し是非とも人間達との交易の足掛かりを作りたい。この国に伝わるアレを使うしか無いか...」
俺がアレの使用をほのめかすと十傑がざわつき始める。
「まさかアレを使う事になるとは...最後に使ったのは遙か昔に魔族領を襲ってきたバハムートの幼体を撃退した時と記録が残っているだけでしたな。」
「その通りだ。アレは一度使うと数百年単位で魔力を溜めねばならなくなるが...致し方ない...使うぞ!如何にバハムートクラスの龍とてドラゴンオーブで弱体化させれば我らが敗北する事などあり得ぬ筈だ!!」
「その通りで御座いますな。竜や龍は長き年月を掛けて成長するもの...急な成長は奴らにはありませぬ!現在存在しているバハムートの強さは大体把握出来ています。現在のバハムートの強さくらいと仮定するならばドラゴンオーブを使用すればこちらも多大な損害が出るでしょうが勝利する事は可能です。」
そう言えばバハムートの最後の情報は数年に途絶えたままだったな。
「確か人間の王の話ではバハムートは人間の召喚獣になったのだったな?その主は今どこに居るのだ?」
「はっ!クラルフェラン共和国に居るとの情報がありますが...それ以上の詳しい事は分かりません。」
しかし、あの誇り高き竜王バハムートが人間の召喚獣として使役されているなど今でも信じられん。
私ですらバハムートとの召喚獣の契約は無謀と周囲から言われ、反対されるだろうに...一体主は何者なんだ?
「人間の王はバハムートの主の事について何か語っていたか?」
「一応聞きましたが...何でも普通の下級貴族の子供...らしいとのことです。」
「子供だと!?...一体どう言う事なのだ!」
「その上、王の話ではバハムートについて来ていた者達は各々アーティファクトを所持していたとのこと。」
アーティファクト...だと!?...流石にドラゴンオーブのような強力なアーティファクトでは無いだろう。
「どの様なアーティファクトを持っていたのだ?」
「はぁ、人間の言う事なので真実かは分からないのですが...アストラルブレード、エスペランサ、神槍グングニル、魔杖バルドゥース、神器マスカレイド...等あり得ぬ事を言っておりました。」
おいおい、本当にあり得ぬだろ。
アストラルブレードが普通の剣に感じる程のラインナップではないか!
「...アストラルブレードはバハムートが所持していたから分かるが...他の物は既に失われたと言われているアーティファクトではないか!殆どが海中に没し...まさか!!」
我らの古より伝わる伝承の龍王が...バハムート達と組しているのか?
いや、龍王はリヴァイアサン...陸に上がれる筈がない。
それに伝承ではそのリヴァイアサンはバハムート以上の化け物だと伝わっている。
眉唾物だが真実だとするならば...我らは勝てるのか?
...よくわからなくなってきたぞ....。
「...一度そのフォルティーナとやらに会って見たくなったな。」




