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エミリアの答え

 マジか?マジなのか!?


 エミリアの手を取り、突然の告白をしたワイナールとそのワイナールの言葉に焦る素振りも見せないエミリアの姿を見ながら俺は動揺し身動き出来ないでいた。


 「...おい、ワイナール!どういうこった!?それに何でエミリアもこの状況にびびってもいないんだ!?」


 「....うん、フォルティーナ。私はクラルフェラン共和国に来てワイナール殿下からフォルティーナが爵位を貰ったときから何となくこうなる気がしてたの。...だってフォルティーナの貰った爵位、公爵なんだもん。フォルティーナは爵位に興味ないから気にしてなかったみたいだけど余りに高い地位の爵位なんだ。...気付くよね。」


 「やはりエミリアはわかってましたか。おそらくはエリュセルとヴァランティーヌも気付いていたでしょうね。」


 まじかよ!全く思いもしてなかったぞ!!!


 「それで...エミリア。あなたの返答を聞いていいですか?」


 真剣な表情でワイナールがエミリアに向き直す。


 「...殿下。私で良いのですか?私はフォルティーナからアホの子とよく叱られる様な女ですよ?」


 「ふふっ、私はエミリア、あなたをこれまで見てきました。あなたのフォルティーナに対するあれは親を慕う子供の様な無邪気な行動。現に今は私と普通の貴族の様に話せている。私はエミリアの様に対等に私と生活できる人が欲しい!」


 チラリとエミリアが俺の様子を窺うように顔を眺めてきて、視線が合う。


 ...ふん!...まあ...ワイナールなら良いんじゃねえかな...。


 俺はゆっくりと目を閉じて頷いた。


 「...フォルティーナもワイナール殿下を認めてくれた様です。...ワイナール殿下の申し出、お引き受けします...が一つ条件があります。」


 「...条件..とは?」


 ゴクリとワイナールが息を飲み、緊張しているのがわかる。


 「フォルティーナは殿下にあげませんよ!!...フォルティーナは私の奥さんだから!!」


 俺も今まで見たことも無いような心の底から嬉しそうに微笑みながらそう言った。


 ...コノヤロウ、まだそれを言うか!!しかも自分がプロポーズされてる時によ!!


 「ふっ、くくくっ、ははは!...うん。わかったよ。フォルティーナは君の奥さんだ!」


 一頻りワイナールが笑った後にエミリアとこれからの話を始めたようだ。


 さぁって、邪魔者は消えやすかー。


 俺は宴を開いている部屋から一人出て自分の部屋に戻る。


 <...良かったね。一番心配してたエミリアのつがいの相手が良い人ぽくて。>


 ああ、そうだな。


 全くガキはデカくなるのが早いな。


 ...まあ、だからこそ人間は生きる事に真剣だし必死なんだろうな。


 <うん、そうだね。...そんなに気を落とさないでよー。娘を嫁にやる親父みたいになってるよ!>


 うっさい!バカ!!


 部屋をノックする音が聞こえたので返事をすると執事の爺がティーセットをカートで運んできた。


 「...フォルティーナ様。お茶をお入れしましょうか?」


 「おう!頼む。」


 茶を入れながら爺が「エミリア様のお相手がワイナール殿下...私は悪くないと思います。」と俺を見ずに呟く。


 「おう、...わかってんよ。」


 「...私の主はフォルティーナ様のみ。私は何処までもフォルティーナ様について行きますから。」


 「....あんがとさん。」


 爺のいれてくれた茶が俺の心にぽっかりと開いた穴を少しずつ埋めるように身に染みて行った。




 エリュセルはヴァランティーヌと結婚する事になり、エリュセル・バハムーレと名前を変えアルフェール家と決別した。


 ヴァランティーヌの貰った爵位も同時にエリュセルに譲るそうだ。


 クラルフェラン共和国での俺の領だったリヴァイア領もエリュセルとヴァランティーヌに完全に譲渡しバハムーレ領となる。


 そして...俺はエミリアと共に首都のワイナールの城に住居を移していた。


 「つうかよ~、よく考えたら元他国の下級貴族のエミリアがお前の嫁で良いんか?」


 「えっ?ああ、大丈夫ですよ。寧ろ重臣や有力貴族達から早くエミリアを落とせ!!って詰め寄られてましたからね。」


 ワイナールの執務室で何故か俺も仕事をしている不思議空間で俺についてきた爺がいれた茶を飲みながら休憩している所だ。


 「あん?何でだ?」


 「いや、あなたがそれを言いますか...。エミリアがあなたの召喚主だからですよ。まあ私はそれを差し引いてもエミリアに求婚しましたけどね。」


 頬をポリポリとかきながらとても良い笑顔でワイナールがそう言う。


 「ちっ!リア充は爆発しろや!いや、寧ろ爆発させてやろうか!?」


 「おやめ下さい!」「やめて下さい!」


 俺の悪態に爺とワイナールの制止する言葉がステレオで響いた。

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