エミリアの卒業式
セレナをファメルテウス王国に送り込んでから一年程過ぎて無事にエミリアが学校を卒業した。
俺とエリュセル、ヴァランティーヌはエミリアの卒業式に出席していた。
生徒の代表が緊張の面持ちで挨拶をする中、エミリアの方を見るとエミリアも俺の方を見ていたらしく視線が合うと笑顔で顔が綻んでいる表情が見えた。
...何か感慨深けえな。
<そりゃねー。エミリアは君が育てた様なものだからね。>
...ああ、そうだな。
「エミリアは学校をちゃんと卒業する事が出来て本当に良かった...。」
エリュセルが慈しむ様に笑みを浮かべながらエミリアを眺めている。
そう言やエリュセルはキチンと卒業出来なかったんだよな。
...よっしゃ!二人の為に祝いの会でもすっか!!
側に居る爺に「おい!今夜はエミリアとエリュセルの為に宴をすっぞ!!用意しろ。」と耳打ちすると爺が「良いお考えです。かしこまりました。」と頭を下げて侍女に指示を出しに行った。
卒業式も終え、エミリアが学校で知り合った友人達と別れを惜しんでいる様子を眺めているとヴァランティーヌが近寄って来た。
「フォルティーナ、レスターから聞いたわよ。今日、エミリアとエリュセルの為に宴を開くらしいわね。」
「おう。そうだが...それがどうかしたか?」
「ふふっ、何でもないわ。...良い頃合いね。私もあなた達に知らせたい事があるわ。...宴の時に言うわね。」
今まで見たこともないヴァランティーヌの心から嬉しそうな笑顔に俺は首を傾ける。
なんだ?アイツ??頭でもいかれたんか?
「おう!今日は無礼講だ。使用人共もみんな酒飲んで飯を食え!!」
「「いただきます!!」」
俺の号令で飲めや歌えやの宴が始まった。
出席している奴を見渡すと、まあいつもの様にうちの使用人共しかいな...あん?ワイナールが居るじゃねえか。
アイツ何やってんだ?
「おい、ワイナール。何でお前がここに居んだ?」
「ああ、フォルティーナですか。何でと言われても...ヴァランティーヌに呼ばれたのですが。」
アイツに呼ばれたんか...そういや何か思わせ振りなことを言ってたな。
ワイナールと最近の国の内情を肴に酒を飲んでいるとヴァランティーヌとエリュセルが大きな声でみんなを静め出すので周りが途端に静まる。
「私とエリュセルから皆さんに報告があるわ。...私とエリュセルは召喚獣の垣根を超えて...夫婦になろうと思うの...フォルティーナ良いかしら?」
あん!!?奴らマジでつがいになんのか!?
<マジですか!!>
「お前達が良いで決めたことだろうが!何で俺に聞くんだよ!!」
「あら?エミリアとエリュセルはあなたの子供みたいなものでしょ?親に了解を取らないでどうするのよ?」
「...フォルティーナ。どう..でしょうか?」
満面の笑みを浮かべたヴァランティーヌの横でエリュセルは心配そうに俺を見ながらそう言う。
「どう...って別にいいんじゃね?好きにせいや。お前の人生だ、お前が決めた事に口は挟まねえよ。.....おめでとさん。」
俺がエリュセルに返した言葉で周りの使用人共が”わぁー!!”と声を上げヴァランティーヌとエリュセルの所に集まり各自祝の言葉を送っている。
嬉しそうな表情のエミリアが「お兄様...良かったね!ヴァランティーヌに幸せにしてもらってね!!」と少し涙を瞳にためながら呟いている。
俺はエミリアの頭を撫でてやると「そうだな。...良い機会だ、この領をヴァランティーヌとエリュセルに任せて俺達はアイツらの邪魔をしないようにどこかに引っ込むか?」と聞く。
俺の言葉に少しびっくりしたようだが笑顔で「うん!」と良い返事が返ってきた。
「じゃあ、俺の爵位をエミリア、お前に継がせる。爵位がお前を護ってくれる筈だ。そっちの方が俺は良いと思うが...それで良いか?」
「...はい。わかりました。フォルティーナの言う通りに爵位を貰うよ!」
覚悟に満ちた顔でそう俺に言い切った。
おっしゃ!これからはエミリアと二人で楽隠居みたいな生活でもすっか!!
「じゃあ、次の俺達の住処をどこに....」
「ちょーっと待ったーー!!」
隣で俺達の話を聞いていたワイナールが突然声を上げる。
「な、なんだよ!ワイナール、お前は俺がエミリアに爵位を継がせるのが嫌なんか!?」
「違うよ。寧ろそれを望んでいたし、この時を待っていた...。」
なんだ...めちゃんこ嫌な予感がするんだが...
<...これは嵐の...予感かな?>
ピシャリと真面目な顔になったワイナールがエミリアの片手を手に取ると跪き、口を開く。
「エミリア・アルフェール・リヴァイア。私、ワイナール・セルベ・クラルフェランと...結婚して下さい!!」