セレナとある国での出来事
「セレナ、頼んだぞ。一応敵地だから気をつけろよ。」
「本当に気をつけるのよ、セレナ。あなた少し抜けてる所が有るからね。」
「はい!フォルティーナ様!!ヴァランティーヌ様!!大丈夫です!お任せ下さい!!」
ファメルテウス王国に断りの書状を持って行くという重大なお役目をいただき、私の気分は高揚していた。
私は背中に羽を生やすとファメルテウス王国の方向に飛び始める。
今回は4日程、あちらに滞在する予定だ。
第一のお役目がアルフェール家にワイナールさんの手紙を届けること。
第二にファメルテウス王国の王にフォルティーナ様の書状を届けること。
第三が元リヴァイア領の様子を見てくること。
その他もありますがメインはこの三点です!まずは...元リヴァイア領の様子を見に行きましょうか!!
私は前の主の召喚獣の時には殆ど喚び出されずに主の中に居たため、ファメルテウス王国の人間達の暮らしぶりを知らないのでとても楽しみです!
元リヴァイア領へとたどり着き、一番大きな街を散策する。
うーん、住民の方々の顔色は...暗いですね!
このどんよりとした雰囲気、前までの街の様子をフォルティーナ様やレスターさんから聞いているのですが全然違う場所に思えてきますね~。
取り敢えずこの街に1日滞在して住民に直接お話を伺いましょうか!
宿を取り、商店街へと出向くと情報収集の開始です!
ふむー。
街のみなさんのお話ではどうやら国の直轄の領地になったようでフォルティーナ様が居た時よりも税金もかなり上がった上に停止していた規制等も復活したそうです。
以前からの制度に戻っただけらしいのですがフォルティーナ様の領政を知っている皆さんが不満大爆発のご様子です!
その上、新領主はこの国のバカ...失礼しました。
領主様は王太子様でこれまた問題有りとのことです。
王太子様の腰巾着な貴族達が袖の下を要求したり、公共事業等ではプール金を作ったり等やりたい放題のご様子。
街のみなさん、口をそろえて言う一言は...「フォルティーナ様、カムバーック!!」でした。
余りに不憫だったので雷を役所に落としておいてやりましたよ。
ささやかながらの私の心遣いです!
残念ながらフォルティーナ様はここには絶対に戻って来ませんよ!ふふんっ!!
可哀想ですがこの領の善良な領民は亡命以外に明るい未来は存在しそうに無いですね。
さぁ、気分を変えて美味しい御飯を食べてから明日に向けて...全力で寝ます!
さあさあ、やって参りましたアルフェール家!
家の外見は...あれ?そんなに落ちぶれた家に見えませんね?
頑丈そうな石造りで手入れもキチンとされてますし...む~、何かやな予感が...
まあ取り敢えずフォルティーナ様の手紙を放り込んでとっとと退散しましょう!
家の中に案内され中を軽く見渡すもそこそこの調度品ぽいのがそこらかしこにありますね。
...まさかこれは...借金で良い暮らしって奴ですね?
使用人さんに案内された部屋は...めちゃ豪勢な部屋じゃん!...若干興奮のあまり言葉遣いが乱れました。すみません。
豪勢なお部屋で部屋の中には四人の方が居ました。
中年のふっくらしたおじさん...エミリア様とエリュセル様のお父様らしき方なのかな?
これまた中年で化粧がケバく派手なおばさん...お母様...ですよね?
そして私を見るなり非常にウザイ視線を飛ばしてくる若い男が二人...お兄様方かな??
手紙を懐から取り出すとおじさんにワイナールさんの書簡を渡そうとすると若い男が私の腕を掴んで「俺の物になれ!贅沢な暮らしをさせてやる上に良い思いもさせてやるぞ!」と今から亡命する人の言葉と思えぬ台詞をのたまい出す。
取り敢えず私の腕を掴んでいる男に一発蹴りを喰らわし手紙を投げ渡すと「所詮は庶民の妾との間に出来た子供の家で働く者か...主人に相応しい使用人だな!」等と私に対する暴言ならばいざ知らずリヴァイア家を貶める言葉を吐いてくる始末、これは腐り果てて駄目な人間のパターンですわ~。
良かったですね~、エミリア様にエリュセル様。
こいつ等に似なかった上に幼い段階で家を出れて。
若い男達が二人掛かりで捕まえようとしてくるのでやむなく暖炉の中に遅延型のエクスプロージョンの魔法を放り込んで逃げました。
空を飛んで撤退を決めた私の背後で派手な爆発がありましたが手加減したので死にはしてない筈...OKですよね!?
...死んで無くても家と家財一式、一緒に吹っ飛んで財産がパァーでしょうが...うん、知らない。
さ、さぁ!どこかの街で一泊した後フォルティーナ様の手紙を届けに行きましょう!