港町の視察兼改革
ヴァルキリーのセレナが俺の所に転がり込んで来てから数日後、俺はセレナと爺を伴って最初に上陸した寂れた港町に視察に来ていた。
「やっぱ寂れてるしなんか住民の表情も暗いな。」
港町を散策しながら歩いていると商船ギルドの建物が俺の目に入ってきた。
むー、ここで話でも聞いてみるか~。
商船ギルドの建物のドアを開き、中へ入ると受付っぽい姉ちゃんに喋り掛ける。
「おう、姉ちゃん。えらいさん呼んでくれるか?」
受付の姉ちゃんはキョトンとした顔で俺を見つめながら「えーと、どちら様になるのですかね?」と尋ねてくる。
「この御方はこの領の領主、フォルティーナ・リヴァイア様です。ギルドの上層部の方とお話がなさりたいそうですが御時間はいただけるでしょうか?」
「え!?領主様!?す、すぐに確認して来ます!」
受付の姉ちゃんがひどく慌てた様子で奥に引っ込んで行った。
「ほんじゃあ、戻ってくるまでソファーにでも座らせてもらいますかね~。」
近くにあったソファーに腰掛けると側に爺とセレナが俺を挟むように立ち、姉ちゃんが戻ってくるのを待っていると奥から姉ちゃんがおっさんを引き連れて戻ってきた。
「これはフォルティーナ様!!事前に申して下されば相応の対応が出来るのですが...。して、今日の突然の訪問はどの様な事で?」
おっさんが急に俺が来たもんだから少し困惑している様子を見せる。
「ああ、今日来たのはな...」
この港町が寂れている理由をおっさんから聞いたのだが何故寂れているかの状況がわかった。
どうやら数年前からこの近海で海賊が増えたらしい。
そのため、海賊対策に傭兵なんかを最初は雇っていたが、その雇う金がかさみ物流の料金を値上げせざる負えなくなったそうでどんどん商人達が他の地域に逃げてしまいこの有様だという事らしい。
海賊か~。
前の国の時に俺が蹴散らした海賊がもしかしてここに住み着いてんのか?
うーん、どうすっかな?....前みたいに俺が直接蹴散らかしても良いが...今回は物流の強化もしたいから暇なアイツらを使うか。
「おいおっさん。傭兵とかを雇わなくて良くなれば海賊共が集まる前みたいに活気のある港に出来る自信は有るのか?」
俺の言葉におっさんは自信ありげに「昔以上に出来る自信はあります!フォルティーナ様の税制改革のお陰で他の地域よりも料金で勝負も出来ますから!」と胸を張って言う。
「よっしゃ!じゃあお前らがアイツらになれるまで少々時間が掛かるかもしれねえがこの港町の船を守る用心棒を用意してやんよ!波止場まで案内しろ。」
「!!、はい!!」
おっさんに案内され波止場まで来た俺はセレナに「おい、お前は光の羽が生えてたって事は飛ぼうと思ったら飛べるんだよな?」と聞いてみた。
「あ、はい。飛べますよ!」
「よっしゃ、じゃあ俺を海の上まで運べや!」
「はい!!」
セレナが光の粒子を集めた様な羽を背中に出現させ俺の腹に手を回すと、ふわりと空中に浮き海の上に俺を運ぶ。
「おう、ここで良いぞ!!あとは...連絡用の信号だな。」
アイツらの召集令状になっているアトミックレイを手の平から出現させて海に撃ち込む。
「...後はアイツらが波止場に来るのを待つだけだな。おい、セレナ。波止場に帰るぞ。」
「...凄い。アトミックレイをファイヤーボールみたいな感覚で使うなんて...」
「おい、聞いてんのか?波止場に帰るぞ!!!」
「は、はひ!帰ります!!」
セレナに波止場まで連れ帰ってもらい、しばし待つ。
待つこと10分程で波止場の目の前の海がうねり、奴らが来た。
「よう!久し振りだなお前ら!どうせ暇なんだろ?」
「きゅっきゅっ!!」
「げーそ!」
「....!!」
目の前に巨大なジャイアントシーサペント、キリングオクトパス、大王イカのそれぞれのボスが姿を表し俺の問いに答えた。
予想通り暇で死にそうな程らしい。
まあ、タコは喋れねえがここに来てるって事は暇なんだろ。
「その暇で死にそうな諸君に娯楽をやろう!この港の船を他の港までレースをしながら運んだり襲ってくる海賊達をイジメて遊んだり...楽しそうだろ?」
「きゅ?きゅっきゅっ!!」
「げそげーそ!」
「....!」
みんなやってみたいらしい。
タコはよくわからんが踊ってるからコイツもやりたいんだろう。
「おいおっさん!コイツらがこの港の船の護衛と運搬をやってくれるらしいぞ!」
「....え?...護衛はわかりますが運搬とは?」
「背中に乗せて運んでくれるって事だ。風に左右されないから早く目的地に着く上にわざわざモンスターが護衛してる船なんか襲うバカも居ねえだろうから安全で良いぞ!餌なんかは運搬の最中に勝手に自分で喰うから何もいらねえってさ。どうする?」
「...やります!他の者を説得しなければいけないですが...少なくとも私はやります!」
「おう、そうか。じゃあ後は俺について来た商人も仲間に入れてやってくれねえか?俺のやり方を知っているから他の奴らの説得もしやすい筈だぜ。」
「わかりました!是非紹介して下さい!!」
これで俺について来た奴らの仕事も出来そうだ。