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押しかけて来た奴は...

 ワイナールから貰った領地は俺達がクラルフェラン共和国に来た時に最初に上陸した寂れた港町のある領地だった。


 取り敢えず領地の経営は俺とヴァランティーヌ、エリュセルでやるとして...エミリアをどうすっかな?


 学校に行かせてやりたいが...首都の学校にぶっ込むか?


 俺が執務室で書類仕事をしている最中、ソファーの上で転がっているエミリアに声を掛ける。


 「エミリア。お前、学校はどうする?」


 「ん?学校?この領の学校で私は良いよ。結構有名な学校ぽいしね。」


 へー、じゃあこの領の学校で良いか。


 「んじゃあ、ここの領の学校に行け。」


 「ほーい。」


 後は領地の改革からだが...あの港町は何で寂れてんだろうな。


 そんな事を考えていると爺が執務室に入ってきて喋り掛けてくる。


 「フォルティーナ様のお知り合いと言う方が屋敷に来られてるのですが...」


 「あん?俺の知り合い?この国に知り合いなんて居ねえだろ!しかも爺が面識のねえ奴なんて俺は知らねえぞ!」


 困惑を浮かべた表情で爺が続ける。


 「...それが...来られてる方は人間では無いのですが...。」


 「人間じゃねえだと!?...まあいいや。ほんじゃあここに通せ!」


 「...誰だろうね?」


 エミリアが不思議そうな顔でそう呟くがそいつは俺が聞きたい。


 暫く待っていると爺が部屋に戻って来たが、爺の後から何処かで会ったことのある気がする奴が入って来た。




 「らーららら!」




 爺と共に来たのはセイレーンなのだが...


 「あーと、確かに何処かで会ったことがあるよな?」


 「あ!フォルティーナ!!ほら、召喚獣の授業の時のセイレーンさんじゃない!?」


 「...お、そう言われるとそうだな!」


 セイレーンに何故ここに来たのか聞いてみると、どうやら前の主との召喚獣契約をセイレーンから解約して俺達を追っかけて来たらしい。


 召喚獣契約って解除できるんかい!


 <出来るよ。もう君とバハムートは守護神モードまで入ってるから解除は無理だけどね。>


 あっそう。


 今更解除する気もねえからそれはどうでもええわ。


 「ほんでお前は俺の所に来てどうしたいんだ?」


 「ららーららぁ。」


 「あん?俺の元で働きたいだと!?...むー、どうすっか。」


 ...爺の召喚獣にでもして秘書をやらすか。


 おい!天の声!!爺はこのセイレーンを使役できるか?


 <ほいほい。...出来るね、一応だけど。安全策ならバハムートと同じ方法かな?>


 なるほどな、じゃあ俺がコイツにもMPをやるか。


 「おい、セイレーン!この爺の召喚獣になるのなら俺のMPを対価に雇ってやる。どうだ?」


 「らららあ!」


 「おい、爺!!セイレーンがお前の召喚獣になるそうだ!お前はそれで良いか?」


 爺は俺に礼を取り「フォルティーナ様の御心のままに。」とはっきりと言う。


 セイレーンが満足そうな顔をした後に光の粒になって爺の中へと入って行った。


 「よっしゃ!爺!!セイレーンを召喚しろ!MPを喰わすから。」


 「かしこまりました。」


 爺がいつも閉じているようにしか見えない糸目を集中するために閉じ、セイレーンを呼び出す。


 「らーららら!」


 「よし!手を出せ!俺のMPを喰わせてやんよ。」


 指示通りに差し出したセイレーンの手を握り、MPを送り込むと...突然セイレーンが眩い光を放ち始めた。


 な、なんだこりゃー!!!!


 <...君、またMPを大量に送ったでしょ?セイレーンが一気にレベルカンストして進化しちゃったんだけど。>


 ...忘れてた、すまね。


 ま、まあ強くなっていいんじゃねえのか?


 <えーと、セイレーンの進化先って何だったけ?...うん、覚えてないから取り敢えず進化モードが終わるのを待とうか。>


 セイレーンの包まれていた光がなかなか消えずにふわふわ揺らめいている。


 「こ、これがモンスターの進化!!」


 「すごーい。綺麗だね~!!」


 エミリアと爺が目を見開いて驚きの声を上げる。


 「...おう。やっちまったぜ...。」


 自分のやらかしたことに頭を抱え込みたくなる気持ちを抑えて進化モードが終わるまでしばし待つ。


 つうか、なんか長くね?


 <...うん。長いね。...何だろ?若干ヤなこと思い出してきたかも。>


 なんだ?そのヤなことってよ。


 ...おっ、おわった....あん!?


 光が消え去るとそこには...光の羽が背中に生えた真っ裸の銀髪の人間の女が居た。


 ........なんだ?コイツは??


 背中の光の羽が消えると目の前の女は俺の前に跪いて口を開く。


 「フォルティーナ様!私に新たな力を与えてくれたのですね!!一生ついて行きます!!いえ、ついて行かさせて貰います!!」


 「お、おう。ついてこないで良いぞ!」





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