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俺、漁をする。

 みち.......みちみち...........ぶつんっ


 ふぁ!?なになに!?今の音!?


 こんがり真っ黒の日焼け肌で輝く白い歯の眩しい海の男を目指して浜辺で日焼けしている最中に少しの痛みと鈍く身体中に走る音で目を開くと......


 「みてみろよ!!このヒゲ!!売ったらいい金になりそうだぜー!!」


 ゴリ男が嬉しそうに両手で支えなければ持てないほどの太くて長い棒状の物を抱えて喜びのダンスを踊っている。


 何だ?アイツは?直射日光でアタマでもやられたのか?


 目を俺のあごの方に動かすと......無え!!無くなってんぞ!!


 俺の....顎髭が無くなってる......クソ!!ゴリ男!!!!ぜってえ喰ってやる!!!!


 <まあまあ、いいんじゃないの?一番立派な口ヒゲは人間の力じゃあ無理っぽくて諦めてたみたいだし。>


 てめえ、笑ってねえで俺にヒゲが危ないって教えろや!!


 .....もういいや。


 一番立派な俺様のジェントルヒゲは無事みたいだし....つうか身体の後ろの方がムズ痒いな。


 目を後方が見えるように視線を移すと.....人間どもが俺に群がり、必死の形相で鱗を剥いでいる姿が見えて思わず二度見した。


 「キャシャーーーーーー!!!!」


 なに解体してやがるんだ!!俺は生きてんだぞ!!!


 俺が怒りの咆哮を上げると蜘蛛の子を散らすように群がっていた人間どもが逃げ去っていく。


 くそ、奴ら俺が寝てるのを死んでると思ったみたいだな。


 これぐらいで死んでやるかよヴォケェー!!


 「お兄ちゃん、喉が乾いたし、おなかも減ったねー」


 「うん。....この島、真水もないし食べれそうな物も無さそうだもんね。」


 目の前の兄妹らしきパツキンのガキ二人が俺の口ヒゲに腰掛けながら少し憔悴した表情で呟いている。


 何だ?水が欲しいのか?おう!!じゃあ口の中にねじ込んでやんよ!


 小さめのウォーターボールを出現させるとガキ共の口の前までふよふよと移動させてやると二人とも驚きで抱きつきながらポカンとだらしなく口を開いてるのでそのまま押し込んでやる。


 「げほごほ.....何々!!.....あれ?これは水?」


 「げほげほ!!......うん。これは....水だね。」


 驚いた表情でお互いの顔を眺めた後に俺の方を見る。


 「もしかして.....龍王さまが水をくれたの?」


 メスガキの方がそう呟くので俺は勝ち誇ったような顔で呟く。


 「きゅきゅきゅー」(どうだ!すげえだろ!?俺様を敬え!!)


 「みんなに....みんなに教えてくる!!」


 オスガキがヒゲから飛び降りると、疲れて座り込んでいる人間どもの所へ走っていく。



 がやがや



 人間どもが俺から水を受け取ると元気になったようで騒がしくなり始める。


 「今度は腹が減ったよなー。」


 ちらっ、ちらっとゴリ男が俺を何度も見る。


 .....俺は食いもんじゃねえぞ。


 くそ、めんどくせえな!俺様の追い込み漁の秘技をコイツ等に見せつけて水神さまとでも呼ばせるかな!!


 俺は人間どもに退くように鳴き声を上げ、周囲に誰も居ないのを確認すると海に向かって転がる。


 無事に俺の縄張りに着水すると同時に周囲にいる魚を追い掛け回した。


 おっ、イワシの群ですね。


 いっただっきまーす!!


 浜辺へ向けて超小型タイダルウェーブでイワシの群れを大量乱獲。


 遠目で見ると人間どもが浜に打ち上げられたイワシに群がってるぜ。


 俺様を少しは敬えよ?


 後は.....おっ、丁度良い物が見えるぞ!!!


 途中で嵐にあったらしい中央マストの折れた漂流船を発見したので下から船底を俺の背中に乗せて人間どもが居る島まで戻る。


 ひゅん!


 こつ、こつこつ


 ひゅん! ひゅん!


 こつこつこ.....


 何だ?頭になんか当たってんぞ!?


 運んでいる漂流船を振り返るとどうやらまだ生きている人間がいたらしい。


 何人かが恐怖の表情で弓をひき、矢を全力で飛ばしてきやがる。


 コノヤロウ!!


 この船は俺様が拾ったもんだからもう俺んだぞ!!


 「キャシャーーーーーーン!!」


 漂流船に乗っている人間達が俺の咆哮で大人しくなりガタガタと震えている。


 よしよし、大人しくしてたらいいんだよ。


 漂流船を島まで持って行った後、また浜辺をビチビチ飛び跳ねながら定置に戻る。


 ふぁー、動くと眠くなるな........



 ぺち.....ぺちぺち


 .....今度は何だよ。


 あんまり俺を酷使すると疲れて死んじゃうぞ。


 「なあ、刺身が飽きたから焼いてくれや!!」


 クソゴリ男がイワシを俺の頭に投げつけてイワシまみれにしている。


 何だ?そう言う儀式なのか....それともそう言うプレイをおのぞ....


 「もう古くなって来ちゃったから焼かないとお腹壊しちゃうよね.....」


 「うん。もう少し食べたいけど....やめときな。」


 パツキン兄妹が眉を下げて残念そうな顔で俺の口ヒゲに乗っかっている。


 はぁーーーーーー。


 しゃあねえ、火を出してやっか。


 超小型フレアを出現させて浜辺に球状にしたまま置いてやる。


 「「ありがとう龍王さま!!」」


 チラリと片目を開き火を置いた場所を見ると人間達が火を囲み思い思いの行動を取っている。


 <たぶん君に人間達も感謝してるんじゃない?たぶんだけどね。>


 まあ、こんなのも悪くねえかな......



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