表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/84

夜会での一幕

 俺達は式典も終わり祝賀の夜会の準備に入っていた。


 「おい!爺!!何だこの服は!!」


 「ワイナール殿下が此度の為に仕立ててくれていた物で御座います。」


 「くっそ!あのボケナス殿下!メチャンコひらひらで動きにくいし、しかも胸元もバックリ出てるじゃねえかよ!」


 夜会用のドレスに初めて袖を通したのだが...どこから見ても女物じゃねえかよ!


 「あら?似合ってるわよ?フォルティーナ。」


 タイトなドレスで着飾ったヴァランティーヌが扇で口元を隠し、目を細めながらそう言い放ちやがる。


 「うっさいボケ!爺!!お前の燕尾服を俺に貸せ!」


 「駄目です。殿下はそのお召し物で出て欲しいそうですので。」


 「はあ?意味わかんね。」


 「変わりに自由に話をされても結構、だそうですよ。」


 侍女が俺の髪を夜会用に編み込んでいる最中にそう爺が言う。


 ...むぅ、自由に喋れるならこっちの方がむしろ楽なのか?


 <君、案外単純だよね~。>


 うっさい!黙ってろ!!


 「フォルティーナ様、髪のセットが終わりました。」


 「うむ。ごくろうさん。」


 侍女から鏡を渡されのぞき込むと...床に突っ伏したくなる位女っぷりが上がってる...


 「...これは...どうなんだ?」


 「私の最高傑作です!!」


 良い笑顔で侍女からそう言われるといたたまれなくなってくるが...はあ、もういいや。


 全てを諦めた方が早そうだ。


 「フォルティーナ、ヴァランティーヌ。用意できたの...ってふぉぉー!!私の奥さん超べっぴん!!」


 部屋に入ってきたエミリアが奇声を上げながら飛びついて来ようとするが爺にディフェンスされている。


 見事だ爺!


 「ヴァランティーヌも凄く似合ってますよ!」


 エリュセルが部屋の中へと入って来ながらヴァランティーヌに声を掛けている。


 「ふふっ、ありがとうエリュセル。」


 「お兄様!こんなに美人なお嫁さんで良かったね!!」


 「ば...なっ!エミリア!!」


 エミリアのお馬鹿ちゃん発言でヴァランティーヌが怪訝そうな顔で「...エリュセルのお嫁さんってどういう事?」と呟いている。


 「...あー、あれだ。お前が真っ裸でエリュセルの寝床に転がり込んでたから責任を取ってお前を嫁に貰ってくれるんだと。」


 「...召喚獣が嫁?意味わかんない。...まあでも私はどうでも良いわよ。エリュセルが生きている間は人間として生きても面白いかもと思っていた所だし。」


 そんな事かと言わんばかりに目を伏せながら言う。


 「相変わらずお前意味わかんね。」


 「あなた程じゃ無いわよ。その見た目で未だに自分が着飾る事に慣れない何て...滑稽で笑える。」


 「やかましい!言うなやボケが!!」


 「お兄様!聞きました!?聞きましたよね!!ヴァランティーヌからOKが出ましたよ!!」


 「...もう好きにして下さい。」


 喜ぶエミリアに落ち込むエリュセルの姿がワラエナイ....




 俺達の為の祝賀の夜会が始まり、ワイナールの登場まで暫し会場で待つことになった。


 「おう!エミリア。後で腹が減らねえようにしっかり喰っとけよ。多分後で食いもんはねえぞ。」


 「うん!美味しいよ!この国の料理!!」


 茶を飲みながらエミリアが料理にがっついている姿を見て思う。


 コイツを本当に貰ってくれる奴はいるんかいな?


 <まあ、本人次第だよね。その内つがいが見つかるんじゃない?>


 ...そだな。


 急いでも意味ねえか。


 天の声とそんな事を話していると会場の入り口付近が騒がしくなった。


 どうやらワイナールが部屋の中へと入ってきたらしく人だかりが出来ていた。


 よっしゃ、渡し忘れていた土産でも渡しますかね~。


 椅子から立ち上がり、ワイナールが居るであろう場所へと歩いていると俺に気づいた人間達が道が開けるように退いていきワイナールと視線が合う。


 ワイナールも俺に気づいた様で此方に近付いて「フォルティーナ、そのドレス、良くお似合いですよ。」と喋り掛けてきた。


 「お前の趣味を俺に押し付けて来るんじゃねえよ!」


 「ふふっ、バレましたか。」


 「でだ。渡すの忘れてたから今お前にこれをやるよ。」


 亜空間ボックスから一つアイテムを取り出しワイナールに投げ渡す。


 ワイナールが受け取った物を少し見つめた後に”はっ”っとした顔になった。


 「...まさかこれはイージスの盾!?」


 「おう!この国は武器よりそれんが良いと思ってな。その盾なら広範囲に結界が張れるから国民を護ることが出来て良いだろ?」


 「...あなたって人は...本当に...」


 盾を胸に抱き締めながらワイナールが俺をくしゃくしゃな顔で眺めている。


 「...ワイナール殿下。フォルティーナは私の奥さんだからあげないよ?」


 口の周りにホワイトソースをつけたままのエミリアが俺とワイナールの間に入り、俺の腕を抱き締めながらワイナールを睨んでいる。


 「...お前、口の周りに食いもんがついてんだろうが!!たくよー!」


 ハンカチでエミリアの口元を拭いていると「あははは...」とワイナールの笑い声が響く。


 「うん。大丈夫だよエミリア。フォルティーナは見事に君の物だよ!!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ