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殿下とレスター

「よっしゃ!爺、後の話の詰めは頼んだぜ!」


「はっ、かしこまりました。」


フォルティーナ様に返答しながらドアを開きリヴァイア家の方々が出て行かれるのを見送り、静かにドアを閉める。


「...苦労を掛けたなレスター。」


「いえ、ワイナール殿下。あなた様のおかげで私は生涯の主を得ることが出来ました。...この国にフォルティーナ様を連れて参ったのは主君であるフォルティーナ様の為...そしてあなたへの恩返しの為です。」


私の言葉で殿下がくくくっと笑い「恩か...そんなもの気にせずとも良いものを。しかし本当にこの国で良かったのか?」と真剣な顔で問うて来た。


「はい。この国だから良いのです。フォルティーナ様は口はアレですが優しい御方...この国の風土に一番合うと思ったから選んだのです。」


「なるほど...確かにフォルティーナはあの様な見目麗しい深窓の令嬢のような見た目なのに...喋り方と中身は男前だからな。」


フォルティーナ様の言動を思い出したようで少し笑いを浮かべながら椅子に深く座り直す。


「しかし、フォルティーナ様はあの様に裏表の無い非常にわかりやすい御方ですが...ヴァランティーヌ様が少々気難しい上に感情もわかりづらく...正直怖い御方ですね。」


「うん。その様な感じだね...。」


「フォルティーナ様もヴァランティーヌ様の考えている事はよくわからんと仰っていましたし...まあ、悪い御方で無いのは確かです。御自分がお持ちになられていたアーティファクト、アストラルブレードを簡単に貸し与えてくれたのですから。」


ワイナール殿下が少し俯き考える素振りを見せる。


「ヴァランティーヌは飛竜種特有の激しい気性のようだね...まあ、逆を言えば気に障る事をこちらがしなければ害は無さそうだ。何より二人に逆らって滅ぼされない国など我々人間には存在しえないだろうからな。」


「その通りで御座いましょう。」


殿下の言葉に肯定するように頷く。


「後は、夜会でリヴァイア家とバハムーレ家の事をこの国の古株の貴族達に認めさせなければならないな。...それに一応見た目だけでも私に臣従している様にしてもらわなければならない。」


「それについても大丈夫でしょう。フォルティーナ様が自分達を引き受けてくれた礼は夜会でお見せすると仰っておりましたし...土産を殿下に用意するとのお考えの様で御座いました。」


「ほう...龍王の土産か...、それは楽しみだな。」


入れた茶を差し出すと、殿下が徐にカップを手に取り口にする。


「...しかし、かの国は必ず何か言って来るな。もう暫く経てばとんでもない物を逃してしまった事に気付くだろうからな。愚かな王で此方としては助かったが...国の民はあの様な王を持って哀れなものだ。」


「その件で...フォルティーナ様が少し杞憂しております。かの国のリヴァイア領だった場所の領民がこの国に亡命を望んだ場合、何とかしてやりたいが...殿下は許してくれるのかっと...」


「ふむ、その為にフォルティーナにこの国の爵位を授けたのだ。夜会でこの国の領を治めてもらう事も発表する。元々の領民と贔屓しなければ構わないのでは無いか?」


「ならば大丈夫で御座いましょう。フォルティーナ様は元領民に居場所は作ってやるから後は自分達で頑張れ、俺はお前達を元領民だからと言って贔屓などしないぞと今回我々と一緒について来る事に決めた民に直接そう言われておりますから。」


「なるほど。...やはり聞いていた通りの人物の様だな。うん、それなら大丈夫だろう。万が一クラルフェランの元々の領民に不満が出るのならば不満のある領民の移動を許せば良いしな。」


ゆっくりと口をつけて中身の減ったカップを机の上に降ろす。


「では、私はそろそろフォルティーナ様の所へ戻ります。...今の私の主はフォルティーナ様。フォルティーナ様に仇なす存在に殿下がおなりになられた時は...迷わず殿下に剣を振り下ろすのでその心積もりで。」


「ふっふ、ああわかってるよ!まあそんな事になることは無いが...その時は遠慮なく私を斬るがいい。」


その含み笑いを浮かべながら言う殿下に頭を下げ、お暇する。


部屋から出るとフォルティーナ様が泊まる部屋へと急ぎ足で移動しながら考える。


フォルティーナ様...私の主はあなた様だとこの数年で心に誓いを立てました。


この身、滅ぶまであなたにお仕え致します!


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