バカ王子の親はやっぱり...
「フォルティーナ様、ヴァランティーヌ様、陛下への謁見の準備が整ったそうです。」
「そう。じゃあ、行きましょうかフォルティーナ、エリュセルにエミリア。」
俺は頷き椅子から立ち上がる。
「うー、緊張してきた~!」
緊張の為か表情が少しこわばっているエミリアに(あん?何緊張してんだ?お前らと同じ人間じゃねえか。)と伝える。
「同じ人間じゃないよ~。相手はやんごとなき人だよ!!」
(はん!バカか!!俺様やヴァランティーヌを従えているお前ら兄妹の方がこんな国の王とかよりも遥かに立場は上なんだぞ?普段通りでいろや!!)
(....そうなの?)
不思議そうな顔でエミリアが俺の顔を眺める。
(あたりめえだボケ!!人型のヴァランティーヌでもこんな国、数時間で殲滅出来るわ!!)
(それだけはやめといてよね!)
エミリアがジト目で俺を睨んで来やがった。
...俺様に臆せず睨めるのはお前だけなんだがな、エミリア。
バハムートすら俺に土下座してた事を忘れてんなコイツ。
エミリアの頭をポンポンと数度のせるように撫で、そのままそっと背中に手を添え安心させるように謁見する部屋まで一緒に歩いていった。
この国の王との謁見の挨拶は何の問題も無く終わり、世間話のような雑談が始まった。
「フォルティーナ殿とヴァランティーヌ殿はアルフェール兄妹の召喚獣と聞いておるのだが...それは誠か?」
王が俺とヴァランティーヌを交互に視線を動かし見るような動きを取り、尋ねてくる。
「はい。誠で御座います。フォルティーナは私の妹、エミリア・アルフェールの召喚獣で御座います。こちらのヴァランティーヌは私、エリュセル・アルフェールと契約しております。」
うん、よしよし。
エリュセルは緊張気味だがしっかりと受け答えが出来ているようだな。
「ふむ。....ハーネル学園の学園長から報告が上がってきているのだが...フォルティーナ殿は龍王リヴァイアサン、ヴァランティーヌ殿は竜王バハムート...と俄には信じがたい内容なのであるが...相違は無いのか?」
「はい。その報告で相違ありません。」
エリュセルの答えに謁見室に居る人間達の動揺しているような声がひそひそと聞こえてくる。
「静まれい!...それの証拠は提示できるのか?」
王の問い掛けにヴァランティーヌが返答を変わるらしく俺達に目配せをして来た。
「それについては私が答えましょうか。元の姿に戻ってお見せしても良いですがここでは狭くて私もフォルティーナも戻ることは出来ません。よって私がリヴァイア家の執事に貸し与えている剣、フォルティーナがエリュセル、エミリア、リヴァイア家の侍女達に貸し与えている武器で証としましょう。レスター!!準備を!!」
「かしこまりました。ヴァランティーヌ様。」
執事の爺が皆から武器を集め、王の前に並べる。
「こ!これは!!我が国の古の英雄が使っていたと言うアストラルブレード!!...こちらはかの大陸の半分を制した英雄王の神剣と伝えられているエスペランサ!!こちらは...魔杖バルドゥース...国を滅ぼす威力があったと言われる魔杖か...。こちらは神器マスカレイド...そして神が勇敢なる勇者に自らの槍を与えたと言う神槍グングニルまでも...これは...全て本物なのか!?」
「お疑いならばここにも鑑定が出来る人間が居るはず...構わないのでどうぞお好きに鑑定なされば?」
瞳を閉じながら呆れるわーと言わんばかりの態度でヴァランティーヌが言うと大臣とか名乗っていた小太りの男が一つ一つ手にしていくが身体からの震えが抑えられないらしく次第にカタカタと震え始めている。
なんつーか...わかってはいたがヴァランティーヌの奴、性格わりいな。
俺達が持ってるのは間違い無く本物のアーティファクトだから偽物って言われたら暴れるつもりだな?
「陛下....全て本物で御座います。...とくにアストラルブレードは竜王バハムートに負けた英雄が取り上げられたと伝わっていますのでまずヴァランティーヌ殿が言われている事は間違いないかと...」
「なんと!!...やはりこれらは本物なのか...。ならばそれはそれで問題だ。これらのアーティファクトは本来人間の宝!お前達、貴族や使用人が持っていて良いものでは無い!!そもそも召喚獣が領主をやっているのもおかしいのだ!...これらはファメルテウス王国の国宝として王宮で預かろう、それで領主の事は見逃そう。良いな?」
あん!?何言ってんだコイツ!!...よし!取り敢えず殴るか!!
俺は徐に席を立とうとするとヴァランティーヌから服を引っ張られ制止される。
何でコイツは止めるんだボケ!?お前も粛清っすっぞゴラァ!!!
<君が殺気を出しまくってるからだよ。王様をヤル気満々でしょ?取りあえずバハムートに任せたら?>
...ちっ、しゃあねえな。