売られた喧嘩を買ったはいいが...
ガキ共が召喚した奴らが姿をあらわす。
一体目はキマイラ。
生意気にも俺を見ると小馬鹿にしたような顔になり地面に伏せる。
二体目はペガサス。
こちらには全く興味がないようで呼び出したメスガキに撫でられると気持ちよさそうな顔をしている。
三体目はセイレーン。
どうやら多少は俺に興味があるようでちらちらと俺を見てくるが近づきはせずにゆったりとその場に立っている。
四体目はブルードラゴン。
そのデカい体から地面が揺れそうな鳴き声を出した後、俺にガンを飛ばしてくる。
このブルードラゴンの主はどうやら食堂で俺が鼻血を拭いて介抱してやったオスガキの召喚獣らしい。
オスガキがブルードラゴンに声を掛けているが全然言うことを聞いている風でもなく完全に舐められているようだ。
....未だにガンを飛ばしてきてやがるが...やっちまっていいのか?
<んー、君と比べるとゾウリムシ以下だけど一応学園の生徒の召喚獣だからやめときな。食べたいなら止めないけどね。>
いや、俺腹減らねえからいらねえわ。
あんなの喰うくらいなら人間の食事の方がぜってえ旨いし。
全員が召喚し終わってから、教師の話が始まる。
まあ注意事項みたいなもんだ。
召喚獣が破壊した物損などは召喚主が責任を負うとか話している。
.....俺はぜってえ不用意に元のサイズに戻れねえじゃねえかよ。
来年になるとこの中の三体で別の地域にある学園と合同訓練を踏まえた召喚獣対決をやるらしい。
....まあ俺は除外されるだろ、どっちかというとそっちの方が俺にとってもいいわ。
舐められてるみたいだし何より戦う時に力を加減するのが面倒だ。
授業も無事に終わりキマイラ、ペガサス、セイレーンは光の粒になるとそれぞれの主の下へ帰った行った。
じゃあ、俺も授業が終わったらエミリアの部屋で着替えてから走って帰りますかね~。
と思っているとむんずと後ろから何かに掴まれ引っ張られる。
エミリアまで引きずられそうになり咄嗟に腰に巻き付いていた部分を緩める。
一体どいつだクソ野郎!!エミリアまで巻き込むつもりだったのか!?
「フォルティーナ!!」
エミリアの慌てた声が聞こえるが俺は構わずに背後を振り返る。
俺の前ヒレ辺りを片手でブルードラゴンが掴んでいるらしくおもむろに自分の顔の前に持って行く。
こんのやろう!完全に俺にケンカを売ってるみたいだな!!
「キャシャーン!!!!」
「グルウォーーーー!!!!」
お、いいねー。
じゃあ、ひさびさに運動がてら買ってやんよ!!
先に召喚獣をしまっていた奴らも再召喚して俺とブルードラゴンを止めようとしているがブルードラゴンに怖じ気づいて近づけないようだ。
「アレックス!!!!やめろーーー!!」
オスガキの声が聞こえるが完全に目の前のブルードラゴンは言う事を聞く気が無いらしく、俺を掴んでいる手に力を入れ始めた。
おうおう、テメーにゃ俺の積もり積もった人間へ恨みと共にストレス発散のサンドバックになって貰うから気合いを入れとけよ?コルァァ!!
力を体に込めていくとグングン俺の身体は巨大化し、遂にはブルードラゴンが両腕で囲おうとしても出来ないくらいの太さになる。
くわははー!!この感じ、久し振りだぜ!!!!やっぱこれだよ!!こうじゃなけりゃいけねえぜ!!
「キャシャーーーー!!」
喜びの咆哮をあげブルードラゴンとガンの飛ばし合いから始めようと視線を合わせると....
...ブルードラゴンが仰向けで寝て服従の土下座を始めやがった....。
...なんだコイツは喧嘩売ってきて殴り合う前から土下座か?バカかコイツは!!
ブルードラゴンの腹に軽い頭突きを何度か入れると白目を剥きやがった。
<....まあ、こうなるよね。でどうするの?物損が出ないように巨大化してたし君が怒った理由のエミリアは無事なんだから穏便に....>
あん!?....不完全燃焼以前に燃料ばらまいただけで火をつけなかったからなこのクソブルードラゴンは!!...コイツの管轄はアイツか。
アイツを呼び出してコイツ共々再教育じゃい!
<あーあ、可哀想。完全に八つ当たりだよね…>
俺は大地が揺れそうな咆哮を上げ、このクソドラゴンの上司を呼び出す。
暫く待っていると上空に大きな黒い陰が現れ、静かに降り立った。
「バ、バハムート!何故竜王がこの学園に!!」
俺の咆哮で学園の生徒たちが何事かと集まりだし俺とバハムートを指差し驚いている。
バハムートは俺と視線が合うとゆっくりと目を閉じ....ブルードラゴンと同じ体勢になると土下座を始める。
あんこら!テメエの躾がなってねえからこんなクソボケが出てくるんだよ!!
バハムートの頭に頭突きを連続で喰らわすとバハムートの紅い目から涙が零れる。
(フォルティーナ!!いい加減にしなよ!!いじめちゃダメー!!!!)
俺の頭の中に泣きそうなエミリアの声が響く。
振り向くと瞳に涙をためたエミリアが少し震えながら俺を睨んでいる。
....はぁー、しゃあねえな。
実力行使はこれぐらいで終わらせてやるか。
後はどう責任を取らすかだな。