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残念な王子

 私はカーツ・エーデル・ファメルテウス。


 このファメルテウス王国の第一王子で王太子だ。


 私はこの国の守護獣に選ばれた数百年ぶりの王太子で周囲の期待も大きく、帝王学を学ぶと同時に私が王になったときに私を支える貴族連中との親睦を深めるためハーネル学園に通っている。


 隣の領、リヴァイア領からまた一人このハーネル学園に入学する者がいると聞き私の心は躍る。


 既にこの学校に在籍しているエリュセル・アルフェールと隣の領の領主であるフォルティーナ・リヴァイア殿は主人とかなり親しい従者の間柄らしく時折お忍びでこの学園にエリュセルの様子を見に来られていると聞く。


 私は遠目からしかそのお姿を見たことは無いのだがそれでもわかってしまう品のある美しさ。


 それに惚れてしまったのだ。


 特徴的なストロベリーブロンドの長い髪、美しさを集合させるとこの顔になると言っても過言ではない作りの良い顔、少しタレ目だが意志の強さを感じるスカイブルーの瞳、均整の取れたスタイルで着こなすパンツスーツ姿。


 全てが完璧で素晴らしい!


 この学園にもう一人リヴァイア領から来ると言うことはフォルティーナ殿もここに来られる可能性が高いと言うことだ。


 私はどうしてもフォルティーナ殿とお話をしてみたいのだが直接会話をしたことのある者はこの学園にはまだいないらしい。


 どうやらフォルティーナ様はとてもシャイな御方らしく一言もこの学園では口を開く事はなさらずに頷くか否定のために首を振るかしかなさらないらしい。


 奥ゆかしい御方だ。



 しかしそれにしてもエリュセル・アルフェール.....羨ましい男だ。


 その様な奥ゆかしく完璧な淑女であるフォルティーナ殿から直接お声を掛けてもらえる上に一時とはいえ一つ屋根下のお屋敷にいる事が出来たなど.......無礼千万!!


 その上、最近になって友人が噂で聞いたと言っていたのだがエリュセル・アルフェール・リヴァイアと名乗っても良いと言われたらしい。


 嘘だろ?アルフェール家なんて貴族は貴族でも最下級に近い貧困貴族ではないか。


 その最下級貴族がフォルティーナ殿の家名を名乗る事があっていいのか。


 いい訳がない!!


 しかし、フォルティーナ殿が隣の領主に就任する前から知り合いの間柄だと聞くから忌々しいが認めるしか無いのだろうか....いや入学式に来られていたら本人に直接問いただす事にしよう。




 私は入学式に到着したリヴァイア家の馬車を眺めていたときに信じられないものを見てしまった。


 いつものように完璧に着こなしているパンツスーツ姿のフォルティーナ殿が姿を見せた後に新入生らしい女の子が一緒に降りてきた。


 フォルティーナ殿の馬車で一緒に来れるだけでうらやま.....許される事では無いのにフォルティーナ殿が女の子に臣下の礼を取るように身を屈める姿を見てしまった。


 しかもその後、あろう事かその女の子が私のものになるよて....私の憧れのフォルティーナ殿に抱きついている姿を見せつけられた。


 何者なんだ?あの者は!?もしやフォルティーナ殿の子供....そんなはずはない!!その様な届け出は出ていないはずだからな。


 これは調査させなければ!




 入学式に間もフォルティーナ殿の様子を見守る。


 傾いていた領の経営をたった数年で立て直したその手腕や美貌にまるで明るい光に集まる虫のように貴族共がフォルティーナ殿と会話をしたいが為に群がっているがいつものように相手にする様子も見せずに全て執事に任せている。


 クールだ!


 校長の話も終わりこの学園の首席、エリュセル・アルフェールが挨拶を始めるとフォルティーナ殿は閉じていたスカイブルーの瞳を開きエリュセルを一頻り眺めた後にニコリと花が綻ぶように笑顔をみせた。


 可憐だ!!....だがその笑顔が私に向いていないのが腹立たしい。


 入学式も終わり、フォルティーナ殿と一緒に来た女の子がエリュセルと親しげに話をしている。


 ふむ、容姿や髪の色等が似ているからあの二人は兄妹か?


 そう考えているとフォルティーナ殿が二人の所へ向かうのだろう、椅子から立ち上がると私の目の前を通り過ぎる。


 私は思わずフォルティーナ殿の名前を呼んでしまったのだがフォルティーナ殿は私の声に反応を示し、振り向くと私の顔を眺める。


 間近でフォルティーナ殿の美しい顔を見てしまった私は思わずふらふらと引き寄せられるように近付こうとするのだが、私とフォルティーナ殿の間にリヴァイア家の執事らしい老人が立ちふさがる。


 「申し訳ございません。フォルティーナ様はお忙しい御方ですのでそろそろ屋敷の方へお帰りにならなければなりません。お近付きになられるのはどうぞご遠慮を。」


 「貴様!!そこをどけ!私はこの国の王太子だぞ!!無礼であろうが!!控えろ!!」


 「私は国に雇われているのではなく主人はフォルティーナ様です。貴方様の命令を聞かなければならないいわれはありません。御容赦を...。」


 執事にそう言われカッとなった私は執事をはねのけて押し通ろうとする。


 しかしこの執事、歳の癖に意外なほど力が強くはねのけられなかった私はその場でフォルティーナ殿の方へと視線を移したのだが.....そこで私はあり得る筈のない出来事を目撃してしまう。


 エリュセルがフォルティーナ殿の胸に顔を押し付け抱きかかえられているではないか!!



 コノヤロウ、その乳は私のだぞ!!!



 しかもフォルティーナ殿がエリュセルに何やら耳打ちされていた後に赤くした顔で何やら頷いている。


 「あー、お兄様いいないいなー!!私はフォルティーナ自身からそういうことされたこと無いのにー!!」


 と言う声が響き渡った。


 .....フォルティーナ殿を呼び捨てするだけでも万死に値するというのに....もしやこの兄妹はフォルティーナ殿の弱みでも握っていて、あーんな事やこんな事を無理やり奉仕させているのか?


 .....けしからん!けしからんぞ!!



 フォルティーナ殿、貴女はこの私カーツ・エーデル・ファメルテウスが必ずお助けします!!私の召喚獣を使ってでも!



 流れ落ちる鼻血を拭き取りながらそう誓った。

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