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エミリアの入学式

 「フォルティーナ様.....わかってますよね?」


 「あん?うっせえな。学園じゃあいつも通り何があっても口を開くなって言いたいんだろ。わかってるわ爺!」


 俺とエミリアはハーネル学園へ行く途中の馬車の中だが何故か俺が執事の爺さんから小言を受けている。


 執事の爺さんは「淑女らしい態度と口調をして下さい。」と毎日の様に注意をしてきやがる。


 あらためる気がそもそも無い俺は無視し続けて普段通りの会話を強行しているとある時、執事の爺さん含め屋敷で働いている人間全員から「屋敷の中は諦めますから外に出たときは絶対に喋らないで下さい!!」と懇願されながら号泣され、俺が折れた。


 「フォルティーナ様は公明正大で見目麗しくとてもお優しい御方なのに....喋ると築きあげた全てを瓦解させてしまいますからね。」


 「好きでこんな姿になってる訳じゃねえよ!元の姿に戻ったろか?あん!?」


 「.........おやめ下さい。」


 屋敷の使用人達は俺の真の姿、素性を知っている。


 知っている上で勤めてくれているからコイツ等は替えが効かない。


 まあ、頑張ってくれてるから給料も相場よりだいぶ多めに出してるし仕事のシフトについても自分達で勝手に相談して決めろとほぼ丸投げにしている為か誰も辞めたがってはいないようだが。


 「へえー、黙ってるフォルティーナか~。....新鮮で面白そうかも!!」


 「面白くも何ともねえよ!.....学園じゃあ俺は一っ言も喋らねえからな、爺がいつも通り対処しろ。」


 「かしこまりました。フォルティーナ様。」


 そんないつも繰り広げられているくだらない会話をしているとゆっくりと馬車が止まる。


 「フォルティーナ様、到着しました。」


 執事の爺が先に馬車から降りると俺の手を取り、馬車から降りることを促してくる。


 一つため息を落とした後にゆっくりと馬車から降りるとその場でエミリアが降りて来るのを待つ。


 「ここに来るのも久し振りね~。兄様が入学するとき以来だね!」


 エミリアが脚置き台をぴょんと飛び降りる姿を眺めていたのだがここで俺は気付いた。


 エミリア.....靴のかかとを踏んでるじゃねえか。


 俺は屈むとエミリアの靴のかかと部分を直し、キチンと履き直させる。


 「ありがとー、フォルティーナ!!」


 がばりとエミリアが俺に抱きついて来るのだがその顔の表情はニヤニヤしている。


 コノヤロウ、俺が喋れないのをいいことに俺を使って遊ぶ気だな?


 抱きついているエミリアを引き剥がすとデコピンをして牽制する。


 「いたっ!もうー、わかったよー。きちんとするから!!」


 もう一発デコピンを撃ち込む構えを取ると、デコピンで少し赤くなった額を抑えながら膨れっ面をしながら言う。


 わかりゃあいいんだよ!


 エミリアの背中をポンポンと叩いた後学園の中へと歩んでいった。




 それから入学会場に入った俺は俺用に用意された椅子に腰掛けるとやることもねえから脚を組んだまま静かに目を閉じ瞑想モードに入った。


 時折色んな貴族っぽい奴らが挨拶に来るが俺はそいつらを完全無視で対応は執事の爺が全てとっている。


 校長のクソ長げえ話が終わると聞き覚えのある声が聞こえ始めたので目を開けると立派な体格になり始めたエリュセルが在校生代表の挨拶をしていた。


 ふん、順調に育ってる様だな。


 エリュセルがこの学園を卒業するまで後一年か.....卒業したらさっさと領主を譲って隠居すっかな?


 <何枯れたこと言ってんの?>


 あん?うっせえよ!人間の事は人間に任せた方がいいに決まってんだろ。


 どうせエミリアが死ぬまで海に戻れねえんなら海に戻れるまで既に1秒も俺は働きたくねえの!





 入学式が終わり、久し振りにエリュセルに会えたエミリアは非常に機嫌が良さそうでニコニコしている。


 エリュセルはそんな妹の様子が嬉しいらしく微笑みながら妹の相手をしているようだ。


 「フォルティーナ様、そろそろお帰りになる時間が近付いております。」


 爺が耳打ちをしてくるので返答代わりに片手をぷらぷらとするのを見せた後に俺は椅子から立ち上がるとエミリアとエリュセルに近付いたのだが.....


 「フォルティーナ殿!!」


 背後から聞き慣れない声で名前を呼ばれ、振り返るとやたらと高そうな服を来たオスガキが俺に近付こうとしながら俺の顔を凝視していた。


 なんだ?コイツ。


 爺にオスガキに向け顎をクイッと動かすように見せると俺の扱いに馴れすぎている爺がオスガキの対応に行ったので再びエミリアとエリュセルの元へと歩む。


 俺の姿を見たエミリアが俺の胸に飛び込んで来て顔をいつものように俺の胸に押し付けてくる。


 「あー、フォルティーナの胸、やっぱり柔らかくて癒されるー。しかもしかも~、いい匂いもするし!」


 ぐりぐりと胸に押し付けた顔を小刻みに振った後にくんかくんかと俺の匂いを嗅いでいる。


 お前は犬か!


 一撃を頭に軽くお見舞した後にエミリアを引き剥がすと、どうやら不満だったらしく膨れっ面で俺を睨んでいる。


 アホの子は放置に限るな、無視しよう。


 エリュセルに視線を移すとエミリアを羨ましそうな目で見ているようだ。


 ははーん、そうか。


 俺がエミリアから受けているセクハラが羨ましいんだな。


 エリュセルもよく考えれば親から離されるのが早かったからなー。


 そうかそうか。


 じゃあ、ほらよ。


 エリュセルの腕を捕まえると同時に頭を俺の胸に押し付ける。


 「な....フォ、フォルティーナ!!」


 抗議っぽい声が聞こえるが気にせずグリグリと押し付け続けると最初は抵抗して体に力が入っていたのが、どうやら離してくれない俺に途中から諦めた様でなすがままの状態になった。


 エリュセルの頭を胸に押し当てて暫く経つとそろそろ勘弁してくれと言わんばかりに肩を叩いて来たので解放してやる。


 「......フォルティーナ、相変わらずやることが無茶苦茶ですよ。」


 顔を赤らめたエリュセルがそう言うのでエリュセルに抱きつきながら耳打ちをする。


 「親元を離れるのがお前達は早かったからエミリアの俺に対する母親にとる様な行動が羨ましかったんだろうが。」


 そう呟き離れると少し涙目で頷いているエリュセルに男が簡単に泣くなと一撃頭を軽くはたく。


 「あー、お兄様いいないいなー!!私はフォルティーナ自身からそういうことされたこと無いのにー!!」


 でかい声でそう言いだしたエミリアに制裁をもう一度スパンと頭に入れた後、俺と爺で屋敷に帰ることにした。


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