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ヤクザの組長に身売り的な事をしたが、どうやら立場は妹らしい【連載版】  作者: カドナ・リリィ
Bad Ending 〜暗闇から逃れる術を、もう彼女は知らない〜
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捌拾

ポーカー回です。頑張って解説しました。見辛いかもしれませんが、ご了承ください

 


 上機嫌な黒川さんと殺気を放つレオを連れて、私はポーカーを行っているテーブルに行く。丁度六人揃った。

 後藤さんが既にチップを用意してくれているので、すぐにでも始められる。さて、カジノのポーカーのルールはよく知らないから、最初は黒川さんの助言を元にゲームを進めていこう。


「このカジノのポーカーでは、『テキサスホールデム』という、世界的にもポピュラーなルールです。簡単ですから大丈夫ですよ」

「はぁ...」


 席についてまず最初に行われたのは、「DEALERディーラー」と書かれたボタンのような物をはじめはどの席に置くかを決める事だ。

 ディーラーの男性は時計回りにトランプを一枚づつ配った。


「あれ...エースだ」

「一番強い数字ですね」


 ポーカーでは、エース(1の数字)が一番強く、2が一番弱いカードとなる。

 ボタンが来るとなると、一番最後にアクションを起こせるわけで、私が一番良いポジションになるわけか...うん、黒川さんパワー半端ない。


 早速次はディーラーがトランプを配る版だが、私の左隣に座るアジア系のセクシーな女性は、ため息をついて20ドルのチップを机の上に置いた。

 曰く、これは、ボタンの来たプレイヤーの左隣に座る者に課せられる「強制ベット」という義務らしい。すると、それまた女性の隣の黒人の男性が、女性の二倍のチップを出した。これもルールで定められているらしい。


 さて、カードが配られた。他の人に見えないようにチラリと覗くと、ジャックのスペードとエースのスペードだ。同じ色、種類のカード...ラッキーというべきか。いや、ポーカーは勝敗が見えないからなぁ...。


「今から第一ラウンド。『プリフロップ』とも呼ばれています。二枚の状態でチップを賭けるんです」

「二枚の状態で、ですか? それ、結構抵抗があるような...」

「まぁ、こういうゲームは基本、運ですから。ファイト」


 第一ラウンドは、黒人男性の左隣の金髪の男性から始めるらしい。一番最初にアクションを起こすのは中々不利だろう。


『フォールド』


 すると、男性は今のゲームから降りた。ディーラーにカードを渡し、そのまま頬杖をつき始める。あまり良いカードが回っていなかったのだろう。カジノでは、いつ降りるかの判断も重要だ。

 次は、金髪男性の隣のご婦人。絶滅危惧種の毛皮を使っていそうな服を着ている。悪く言えば大阪のおばちゃんだ。ヒョウ柄は...嫌いじゃないよ。


『ふむぅ...フォールド』


 ご婦人もカードをディーラーに返す。

 次は私の隣にいる、赤髪の中性的な人の番だ。この方は、女性か男性か判断し辛い。とても綺麗な顔立ちをしている。


『レイズ』


「レイズ」...黒人男性に上乗せするようだ。チップを数枚取り出した。40ドルか。

 ディーラーの目が私に向く。あぁ、私の番か。


 さて、私のカードはジャックのスペードとエースのスペード。運が良ければ、全て同じ種類の「フラッシュ」を狙えるだろう。

 黒川さんは降りるも乗るも貴女次第ですよ、と耳元で囁いてくる。まぁ、いっか。どうせ上限決まってるから、失う物なんてないんだし。


「コール」


 赤髪の人と同額を出そう。あまり上乗せする気が起きない。


 *


 *


 *


「『フラッシュ』が揃った...」

「本当ですね」


 私の手持ちのカードが、全て同じスペードの記号で揃った。『フラッシュ』だ。

 最後のラウンドは「ショーダウン」と呼ばれ、残っている者が手持ちのカードを出し、周りの者とカードの強さを競うのだ。

 アジア人女性は途中で「フォールド」してしまったので、残っているのは私、黒人男性、赤髪の人。黒人男性は五枚続きの数字の「ストレート」、赤髪の人は私と同様「フラッシュ」だ。


 同じ手役の場合は、数字が大きいものがある方の勝ちだ。「ストレート」よりも「フラッシュ」の方が強いため、この場合私と赤髪の人の一騎打ち。

 さて、中身は...あ、私エース持ってるんだった。


「おや、サリンの勝ちですよ」


 皆の賭けたチップが全て私の方へ回ってくる。何だか変な感じだ。

 それにしても、最初だからか、高級ホテルのカジノにしては賭け金が少なかった。ギャンブルは好みじゃないが、どうせなら一攫千金もやってみたいものだ。

 すると、黒川さんの元へ黒服の男性がやってきた。


『失礼、ミスター・クロカワ。首領が今から酒でも飲んで取引をしないか、と』

『...分かった』


 今まで静かだったレオの表情が一気に明るくなった。これは呼び出されたな、黒川さん。


「サリン、すみません...どうやら今から行かなければならないようです。この男に何かされたら、すぐさま叫ぶんですよ。バラバラにして各国の海に葬ってやりますから。後藤もいますんで...」

「大丈夫ですよ、黒川さん。安心して行ってきてください」

「えぇ...」


 黒川さんはそう言うと、名残惜しそうな表情のまま黒服に連れられて会場の奥へと消えていった。


『やっと邪魔者がいなくなった...』


 レオは朗らかに私の肩を抱いてくる。黒川さんが見たら、確実に発狂する光景だ。


『ポーカーが終わったら...僕と二人きりで、何処か行きませんか?』

『丁重にお断りさせてきただきます』


 イケメンには碌な奴がいないからね。

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