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ヤクザの組長に身売り的な事をしたが、どうやら立場は妹らしい【連載版】  作者: カドナ・リリィ
Bad Ending 〜暗闇から逃れる術を、もう彼女は知らない〜
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漆拾参

 



 日本とイタリアの時差は、九時間。

 普通に旅客機で行くかと思いきや、黒川さんはどうやらプライベートジェットを持っているようです。聞いた話、普通の旅客機が時速900kmの所、黒川さんのジェットは時速1,900kmとの事。倍のスピードとか半端ないです。日本からイタリアまでの距離は約9,900km辺り。つまり、黒川さんのジェットでは五時間程度で着くという事になる。はい...速いです。

「東京国際空港」に向かっていたから、初めて旅客機に乗れるうぇーい、とはしゃいでいたのに、まさかの初・飛行機がプライベードジェット。ある意味怖い。


 あの後、聡からメールで、


『サリンへ 死ぬな。絶対に帰ってこい。もし死んで帰って来たら、俺はランスと共謀して、お前の死体と一緒に海外にフライアウェイするからな。突然いなくなった事については、ある程度の目安はついてた。無事で何よりだ。怒ってないから気にするな。

 とりあえず、死んだら殺すからな。絶対に帰ってこいよ、今度一緒に何処か遊びに行こうな』


 という返事が来た。

 聡、死んだら殺せないよ...みたいなベタなツッコミはいたしません。でも、心配かけてしまって申し訳ないな。怒ってないのなら良かったけど...。


「サリン、イタリア、楽しみですか?」

「はい!」

「出来る限りサリンと一緒にいますからね。今回は休養目的ですから」


 そういうと黒川さんは私の頭を優しく撫でた。相手が聡とかなら少しムッとして振り払うかもしれないが、黒川さんにならば子供扱いされても良い気がする。兄だからかな、撫でられて微笑まれると安心するんだよ。甘えたくなる...って、何考えてるんだだろう。

 空港に設置されているVIP専用のルートを通り、私と黒川さん、後藤さんはプライベートジェットのある場所まで向かった。荷物は既に積まれているようで、皆手軽だ。「休養目的」とか言う割には、黒川さんも後藤さんもスーツ。

 黒川さんの服装なんて、スーツか寝巻きかの二択だけしか見た事がない。


「黒川さんって、私服着ないんですか?」

「スーツが私の私服ですよ。おや、サリンは私のラフな服装も見たいですか?」

「いえ、黒川さんはスーツが一番かっこいいと思いますよ」

「なら、もう一生スーツを脱がない事にします」

「いえ、脱いでください」


 これは本音だ。見慣れているからかもしれないが、黒川さんは絶対にスーツの方が似合う。大人の男性の雰囲気が醸し出されていてかっこいい。

 後藤さんは...アロハシャツとか似合いそうだな。


「サリンは色が白いし可愛いので、何でも似合いますよ。

「そ、そうですかね...?」


 大きな窓から見る事が出来るのは、空港の広大な景色。カラフルな飛行機が乗客を乗せて離陸している姿が丁度見えた。男の子ではないが、少し興奮している自分がいる。

 しばらく進むと、プライベートジェットエリアに入った。まさか空港にこんな所があるとは思ってもみなかったが、日本にも金持ちなんてゴロゴロいるし、案外普通なのかもしれない。世界は広いな。


 *


 本日は晴天なり。

 外に出て空を見上げても、雲一つ見えない。そろそろ夏真っ盛りに差し掛かるが、聡やランスは元気でいるだろうか。

 歩いて行くと、何十メートルかある子型の白いジェットが見えた。これがリアル飛行機...かっこいい。


「最新型プライベートジェット『CleAr』です。サリンと旅行に行くために買いました」

「く、黒川さん...」


 お金はもっと有効的に使いましょうよ...と言いたかったが、この人が腐る程稼いでいる事を思い出す。自分のために買ってくれたんだ、文句も言うまい。それにしても、立派な飛行機だなぁ...。


 後藤さんがハッチを開けてくれたので、黒川さんのエスコートの下私はジェットに乗り込んだ。飛行場の係員の人達は、離陸のための準備を始める。

 機内の奥へと進むと、そこには客席ではなく広い空間があった。白いソファにテーブル、ベッドなんかも置いてあり、普通の個室のようだった。普通の部屋と違う事に言えば、左右にある窓だろう。ガラス張りではなかったというのに、外の景色が鮮明に見える。触れてみると、ガラスではなく液晶のようだった。


「あぁ、その窓は、外の景色を映し出しているんですよ。中々乙なもんでしょう? 二人でトランプでもしながら、外の景色を楽しめます」

「凄いですね、現代技術...」

「んじゃ、俺は機長室に」

「後藤さんが運転するんですか?」


 踵を返した後藤さんを、私の言葉が引き止めてしまった。


「あたぼうよサリンちゃん、俺、パイロットの免許も持ってるから」

「完全に信用出来るのは後藤くらいですから」


 後藤さん、便利すぎる。

 確かに、この飛行機には裏社会を牛耳る魔王が乗るんだ。わざと墜落させられちゃ溜まったもんじゃないだろう。黒川さんは後藤さんに全幅の信頼を置いているようで。


「さて、離陸までまだ時間があります。ポーカーでもしましょうか」


海外行きたい(切実)


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