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睦拾睦

 



 拝啓、天国のお母さんへ。

 何だか今日は、親友達の様子がおかしいです。今の私の義兄、黒川さんのような変態になってしまいました。クラスメイトは「こりゃ関わったら死ぬぞ」的な顔をして助け舟も出してくれないので、私は変態と窓際席という名の二人孤島に取り残されてしまいました。

 親友達がおかしいのか、私がおかしいのか。いや、もうどう考えても親友がおかしいんだけど何故こうなったのか。

 それでも私は元気です。


 P.S 色鉛筆ってすぐに折れるよね。


 佐凜より


「みたいな内容が頭に思い浮かんでしまったんですよ二人共。だから好い加減黙りなさい」

「何故そこで色鉛筆が出てくるんだよ」

「うるさい、『僕はもう疲れたよパトラッ◯ュ』状態になるぞ。犬と共にどっか遠い世界に旅立っちゃうぞ」

『ごめんなさい』


 私の意図を汲み取ってでもしてくれたのか、二人は頭を下げて謝罪する。謝るくらいなら最初からやらなきゃ良いのに。

 何故変態化してみたのか訳を聞いてみれば、


「いやぁ、退院したから笑って欲しくてさ」

「何処に笑う要素があるんだよ、軽く...っていうか結構引いたわ」

「後、組長の気持ちが知りたかった。悪くないな」

「何を言ってるんですか西園寺君?!」


 あれですか、新たな世界を開拓しちゃった系ですか。私じゃなく、聡が遠い世界に旅立ってしまいそうだ。黒川ワールドに足を踏み入れかけている。

 止めてくれ、変態なんて要らない。ただありのままの君でいてくれ。もし聡がパト◯ッシュになったら黒川さんの責任になってしまうぞ。


 個人的には誰が変態になろうが旅立とうが自由だ。しかしそれを私に向けるのは止めて欲しい。仮に聡が変態になったならば、私は即刻別のもっと可愛い女の子を犠牲にしてやる。これ以上蝕まれるつもりは毛頭ない。そもそも変態化を私が喜ぶとでも思っているのだろうかこの二人は。完全に私の事を舐めくさっている。


「後半はサリンちゃんのお兄さんっぽくしてみたけど、前半は本心だよ。本当に綺麗だし」

「あぁ。髪フェチの俺が言うんだ間違いない」


 ランスはセーフだけど聡は危ないよ! 私の髪はダメです、黒川さんがこれで何か作る予定らしいので。

 知りたくなかった聡の性癖。いやまぁ...否定はしないけどさぁ...暴露する必要ないと思うんだぁ...。髪フェチとか私どうでも良いし。妹の触れ。


 *


「はぁ...」


 ようやく一日が終わった。

 今日は髪フェチという事を自ら暴露した聡が、授業中にチラチラと私を見てくるのがとても気になりました。そんなに髪が欲しいならくれてやる。だがまずその前に黒川さんの許可を取れ。

 私だってそろそろ髪を切りたい。もう腰にまで届くだろうと思う程長いのに、黒川さんはまだハサミをもたせてくれない。正直剣道する時にバッサバッサ揺れて変な感じなんだよ。試合中素早く動いた時とか髪の毛の方が躍動感出てるからね。


 今日はあまり部活に足を運ぶ気分ではない。あの殺し屋メイド(笑)が安易にも依頼主の名をドヤ顔でぶち撒けたため、部長が訳アリだと知ってしまった。私とて今まで一緒に現代版「武士の道」を歩んできた神楽坂先輩を疑いたくはないが、あの殺し屋に嘘をつく理由もない。

 真実は神のみぞ知る...という事にしておきたいが、個人的な判断は今日の神楽坂先輩の反応次第という事で。


 そりゃあ大きなため息も出るさ。今日は剣道をする気分じゃない。

 薬を貰って、病院の先生にもあんまり激しく動かない分は良いと言われつつも、体が怠いし。夏休み明けの小学生みたいな気分だ。正月にずっとコタツに入ってミカンを貪っていた独り身のオッさんみたいな気分だ。あっ、ごめんなさい悪気はないんです。


「入るか」


 それでも、こんな所でモタモタしていたって始まらない。もし神楽坂先輩が本当に殺しを依頼していたとしても、大人数のいる武道館で私に手が出せるはずがない。

 退院明けという事で今日は見学という形にしてもらおうかな。


「こんにちは〜」


 ガラス戸を明け、中に入る。思ったよりも人気ヒトケがない。皆さん部室だろうか。

 それにしても、まだ一学期だというのに何年か経ったかのような感覚だ。そろそろ夏休み。海とかプールとか、昔は時々お父さんと遊びに行ってたなぁ...。今は遊びに行く所か、プールの授業さえ受けられないけど。

 運動と夏の醍醐味と涼むっていう三拍子が揃った最高の授業を、黒川さんのおかげで見学ですからね。腕に傷があるのは隠せるが、黒川さんが学校側に「サリンの肌をあんなに露出させるなんて言語道断。あの子の水着を見るのは私だけで十分です」的な変態発言をかましていたらしい。体育科の藤森フジモリ先生がゲラゲラ笑いながらそう言っていた。


 私は男子剣道部の部室のドアをノックする。中で着替えている場合もあるため、気安く開ける事が出来ない。ちなみに私は、男子の中で着替えるわけにもいかないので、女子弓道部&柔道部&空手部の部室で着替えている。防具とか竹刀は置くスペースがないので、あくまでも着替え場所として、だ。


「黒川でーす、誰かいますか?」

『えッ...サリンちゃん?! 何で...』


 ドアが開く途端に見えた人物は、驚愕と恐怖の表情をした、神楽坂先輩その人だった。

この頃タイトル詐欺っぽくなってるので、次回から何となくヤクザっぽくしていきます。

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