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伍拾伍

日間ランキングで何と5位!

皆さんありがとうございます。これをキープしたいので、今日も投稿をいたします。

正直何故こんなにも伸びたのかが分からない...( ^ω^ )

「玲海堂学園」の広い敷地の中には、小、中、高、大と全ての校舎が揃っている。東京ドームが何個分だとかいうよく分からない敷地面積は知らないが、今思い返してみると相当巨大な学園だ。

 巴ちゃんが中等の子だとしたら、校舎が違うだけで会いに行く事も出来るのか。てっきり校舎は違う場所にあるものだと頭が勝手に思っていた。何か特別な用でもない限り別校舎には行けないし、学校行事でも関わり合う事の少ない仲なのだから、知らなくても無理はないだろう。

 あの学園を設立した人は、一体どれだけの時間とお金を費やしてきた事だろう。貧乏人だった私には、到底想像も出来ないような額なんだろうな。


「何を惚けてるんだ? サリン」

「いや、お金って凄いな...って思って」

「あんなのただの薄っぺらい紙切れだろうに。昔の金貨だったり銀貨だったりなら、値打ちはあっただろうが」

「お金なんて毎日何千枚も印刷されていますものね」


 流石、金持ちだから言える台詞。

 確かに考えてみれば、お札なんて量産されているし、若干技術的な面で工夫があったとしてもただの一枚の紙切れ。そんな物で世界の経済が動き、人が動き、時には心さえも魅了するだなんて馬鹿げている気がする。

「何故紙切れ如きで、こんなにも辛い思いをしなければならないのだろう」と前は幾度なく考えてきた。まぁ実際、世の中そんな甘くはないのだけれど。


「そうだわお姉さま、折角ですから、屋敷をご案内いたします」

「本当? ありがとう巴ちゃん」

「おい待て。仲を案内するのか?」


 途端に聡は嫌そうな顔をする。


「何かご不満でも?」

「ご不満も何も...色々と話したい事があるんだが」

「パーティでお話すれば良いではありませんか。それに、今日は私の誕生日ですわ。少しくらいのワガママ、聞いてくれたって」

「...」


 聡、私にそんな目を向けないでくれ。聡ともお話したいけど、それは学校でも出来る事。今日で十三歳の誕生日の巴ちゃんについて行ってあげよう。


「ごめんね聡、後でいっぱい話そう?」

「ほーらみた! 愚兄は部屋で、”妄想のジェラート気の毒な頭脳がけの夢”でも食べてるがいいですわ」

「サリン...」

「た、食べてるがいいですわ」

「流石お姉さま!」


 この流れに乗ってみたが、聡はより肩を落とすだけ。残念な気がしてならないが、妹に翻弄される姿は何だか微笑ましい。これは異例なのだろうけど、こういう仲の良い(?)普通の兄妹に、私と黒川さんもなれれば良いのに。

 妹というよりペットだし。ペットというよりぬいぐるみだし。人権のへったくれもあったもんじゃないですね分かってください。


「この兄妹は仲が良くて微笑ましい」

「お前の方は...仲が良いっちゃあ仲が良いんだろうな」

「あぁ、お姉さまのご家族の事は聞いておりますわ。一度写真も見せていただきましたが、かなりの『イケメン』でした」

「今日来るよ」

「えぇ?! きょ、今日あのイケメンな方いらすのですか?! 早くおめかししなくちゃ...」


 いや待て巴ちゃんよ、何処へ行く。


「何処へって...化粧とドレス直しですわ! 勿論、このお姉さまからのネックレスはつけます!」


 先ほどまでは屋敷の中を案内してもらうという流れだったのに、いつの間にかお化粧直しにまで発展してしまった。巴ちゃんは一礼すると、慣れないハイヒールのまま談話室を飛び出して駆け出す。

 ドレスで走ってあのお母さんに怒られやしないだろうかと心配に思うが、聡は「してやった」という顔をしてソファに寝転んだ。


「ねぇ、巴ちゃんって結構...『面食い』?」

「あぁ、面食いだ。イケメン好きだ。可愛い子好きだ」

「本当? 聡イケメンの癖に邪険に扱われているように見えたけど」

「それは見慣れてるからだろうな」


 彼は自分の容姿が良い事は理解しているらしい。逆にあそこまで女子にキャーキャーされて自覚していないわけがないが。


「イケメンは碌な奴がいないけどね」

「おい、その台詞は聞き捨てなr」

「人間そんなもんよ。神様に顔を恵んでもらったから、何処か欠けてる部分があるのイケメンは」

「ほぉ、じゃあ言ってみろ。俺の何処がかけてる」

「そんなもの、」


 私は聡の向かいに腰掛ける。


「素直じゃなかったりぼっちだったり負けず嫌いだったり異性に対しての対応が悪かったり性格が捻れてたり時々意地悪だったり頭が良い癖に教えるの下手だったりランスの事親友とか言っておきながらすぐに突き放すし妹が好きな癖にいじめられていたり案外反応が可愛かったり尻に敷かれていたり冗談が下手くそだったり意外と不器用だったりスポーツ万能の癖にバランス力が0だったり無駄に気障だったり等々」

「分かった。お前のいう『碌な奴』ってのは『完璧人間』の事を言うんだな。本当によーく分かった」

「別にそんな事はないよ。黒川さんは変態だし」

「全てのイケメンに偏見の目を向けないでくれ」


 無理。私の中では「イケメン=碌な奴じゃない=変態=黒川さん」という何とも不思議な不等式ができている。この式を揺らがすなんて事不可能だろうし、もう私の目には「碌な奴じゃないフィルター」がかかっている。今更取るなんてリームー。


「うん、聡は普通でも他の人達は違うから。絶対に違うから。というかイケメンって何? 美味しいの?」

「多分美味しくないと思う。何で皆顔立ちの良い奴が好きなんだろうな」

「中身が重要とか言いながら、最終的には容姿を重視する人もいっぱいいるからね。今の世界は、イケメンが有利になる魔法がかかってるんだよ。アブラカダブラ」

「何その最後の付け足し。名前みたいじゃねえか」

「サトシ・アブラカダブラ」

「サウジアラビア辺りにいそうで怖い」



 結論:アブラカタブラ


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